そんなふう 36
先月すごく久しぶりにひとり海外出張だった。フランスに現地3泊機内1泊だったのだが、子供と2泊以上離れたことがなかったのでどうなるか心配だった。しかし、とくに母の不在を嘆くわけでもなく、ぐずることもなく夫と二人で機嫌よく過ごしていたらしい、と帰る前日に電話で聞いた。少し拍子抜けしたけれど泣きわめく日々が続くよりはずっといいよな、と思いつつ自分が逆に寂しい気持ちだというのがなんだか情けないような気もした。帰りの機内でも早く子供に会いたい気持ちが募り、なんだか落ち着かないまま過ごした。着いてからもはやる気持ちを抑えながら、空港に迎えに来てくれているはずの二人を探す。タクシーが連なって停車している後方あたりに見慣れた車を見つけた。夫が手を振るのを遠目で確認し、その下にちょこんと座っている子供を見て安堵した。二人に向かって「おーい」、と手を振る。子供はしばらく視線を彷徨わせていたが、私の方を見て固まった。そしてこちらに向かって走り出した。子供の目線に合わせて自分もしゃがみ、両手を広げて待ち構える。保育所から帰ってきたときの、いつも玄関から廊下を走ってくるときの表情とはまったく違う、ものすごく真剣な眼差しでこちらを凝視しながら一目散に走って来る顔を見て、やっぱりあなたも寂しかったんじゃんか!と確信してふたりでがしっと抱き合った。そのあとしばらく背中をばんばん叩き合い、お互いの存在を何度も確認し、長いあいだ離れなかった。