DATE 2018.08.16

そんなふう 36

先月すごく久しぶりにひとり海外出張だった。フランスに現地3泊機内1泊だったのだが、子供と2泊以上離れたことがなかったのでどうなるか心配だった。しかし、とくに母の不在を嘆くわけでもなく、ぐずることもなく夫と二人で機嫌よく過ごしていたらしい、と帰る前日に電話で聞いた。少し拍子抜けしたけれど泣きわめく日々が続くよりはずっといいよな、と思いつつ自分が逆に寂しい気持ちだというのがなんだか情けないような気もした。帰りの機内でも早く子供に会いたい気持ちが募り、なんだか落ち着かないまま過ごした。着いてからもはやる気持ちを抑えながら、空港に迎えに来てくれているはずの二人を探す。タクシーが連なって停車している後方あたりに見慣れた車を見つけた。夫が手を振るのを遠目で確認し、その下にちょこんと座っている子供を見て安堵した。二人に向かって「おーい」、と手を振る。子供はしばらく視線を彷徨わせていたが、私の方を見て固まった。そしてこちらに向かって走り出した。子供の目線に合わせて自分もしゃがみ、両手を広げて待ち構える。保育所から帰ってきたときの、いつも玄関から廊下を走ってくるときの表情とはまったく違う、ものすごく真剣な眼差しでこちらを凝視しながら一目散に走って来る顔を見て、やっぱりあなたも寂しかったんじゃんか!と確信してふたりでがしっと抱き合った。そのあとしばらく背中をばんばん叩き合い、お互いの存在を何度も確認し、長いあいだ離れなかった。

BACKNUMBER 川内倫子 そんなふう
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第1回:多様な生き方、暮らし方
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第1回:多様な生き方、暮らし方

閃いたのは、新しいクリエイティブのヒント? それとも週末のパーティのアイデア?……ホームオフィスを舞台に、生き生きと働くこの女性。実は『Fasu』のファミリーを想定しながら最新のテクノロジーによって生み出されたデジタルヒューマンです。揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事に家事に家族とのクリエイティブな毎日を楽しむ『Fasu』的な暮らしを送る母親像をあらゆる面からキャラクタライズして生まれたこの女性は、私たちが生きる、ほんのちょっと先の未来を想定して生み出されました。 コロナ禍をはじめ、混乱する社会情勢、テクノロジーの急激な進化と未知の世界を歩む私たちですが、このデジタルヒューマンが暮らすちょっと先の未来では、果たして私たちは、どのような家族のかたちを求めて、どのように暮らしているのでしょうか。そんな未来の家族のあり方を、グローバルイノベーションデザインスタジオ「Takram」でデザイン、アート、サイエンスほか多岐の分野に亘ってデザインエンジニアを務める緒方壽人さんに3回にわたってお話を伺います。第1回目である今回は、家族での長野県・御代田への移住と、10年来続けてきたというオルタネティヴな暮らし方にいて訊ねました。 これからの人間とテクノロジーのあり方や共生を探る『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』(BNN刊)。その著者でもある緒方壽人さんは、この本の中で、「ちょうどいいバランス」を探すことの大切さについて触れています。 「暮らし方や家族のあり方は多様で、未来に何かひとつの理想形があるとは思いません。ですから今日お話しできることは、僕自身の家族のことや、これまでの経験から考えていることでしかないのですが……」 そう前置きしながら、控えめに、ゆっくりと話し始めた緒方さん。その穏やかな様子は、移住先である御代田の空気をそのまままとっているかのようでした。   〜〜 中略 〜〜 WHAT’S DIGITAL HUMAN? 揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事、家事、そして家族とクリエイティブな毎日を楽しむ女性。本記事トップビジュアルとして登場したこのモデルは、先述のように『Fasu』ファミリーの母親像を、顔立ち、ヘアスタイル、メイクアップ、スタイリング、さらにはライフスタイルに至るまであらゆる角度とディテールからキャラクタライズし、生み出されたデジタルヒューマンです。 最新鋭のテクノロジーを用いて生み出されたこのデジタルヒューマンは、東映デジタルセンター「ツークン研究所」、及び『Fasu』を擁する私たちアマナにより「企業広告や、ファッションカタログ、またメディアにおけるモデル使用における様々な課題解決」を目的として開発されました。 このバーチャルモデルを用いることで得られるメリットは1. 人種、人選、肖像権問題にまつわるリスク回避 2.使用期限や版権の制限フリー 3.リモートによる発注から納品 4.インナーブランドの統一化 5.CGによる表現可能領域の拡大……ほか多数。コミュニケーション及びコスト、クオリティなど、モデル使用のあらゆるフェーズで生じるデメリットをミニマムにし、モデル表現の可能性を大きく広げていきます。 デジタルヒューマンが描き出す、新しいモデルのあり方と可能性、そして未来にご期待ください。 問い合わせ先:

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