DATE 2018.09.04

そんなふう 37

2歳の誕生日を過ぎると、本格的にやってきたイヤイヤ期。なにをするにもいや〜と大絶叫してずっと泣き止まず、どんな言葉をかけても、なだめても抱っこしても海老反りになっていや〜!と、止まらない。聞いてはいたけど、これか〜、ほんとにイヤイヤ言ってるなあ!と一歩引いて見てみるとおもしろくもあるけど、やはり長引くと疲れる。集合住宅に住んでいたら虐待を疑われて通報されるんじゃないかと思うぐらいで、引越してよかったな、、とそんなところでよかったと思うのもなんだが、そんなことを考えるくらいにすごい絶叫。きっかけは小さなこと、服を着るのがいやだ、おやつを食べ過ぎてるけど、もっと食べたい、とかでぐずぐずしていたのが、絶叫が続くといつのまにか本人もなにがいやなのかわからなくなっている。最終的には気分転換になるようなこと、お気に入りのおもちゃを見せる、絵本を読む、などがあれば急にけろっとして機嫌がよくなるのだが、先日実家に帰ったときにもそんな状況になり、なにをしても泣き止まなかった。きっかけは寝かしつけている途中で、眠いのに寝られない上に、昼間蚊に刺されたところがむずむずしてきたのが気持ち悪かったようで、機嫌の悪さが頂点に達し、大絶叫。先に寝ていた父が起き出し、なにしとんねん!と、こちらも機嫌が悪くなり、板挟みで自分もイライラ。そういうときは外に連れてったらええねん!と父に言われて、近所迷惑じゃ、、と、思ったけど、まあ、たしかに外に連れてったら落ち着くかもなあ、あんたも小さいときそうやったんよ、と母に言われて思い出した。小さいときに喘息の発作でしんどいときは、とにかく外の空気が吸いたかったこと、両親や祖父母が交代でおんぶして連れ出してくれたこと。そうだったなあ、と思い、おんぶして外に出た。庭に育った花や野菜が月に照らされていた。それらを眺めながらうろうろすると、ほどなくして泣き止み、落ち着いた。背中の重みを感じながら、自分がかつて祖父や父、祖母、母の背中越しに見た夜の景色と気配を思い出した。おんぶしてもらうと身体がななめになるから、少し気道が通って息がしやすくなったこと、大人の背中にいる安心感と外の空気で少しの開放感を得られたこと、普段見る家の近所が夜になると違った風景に見えたこと、などを鮮明に思い出した。いま、自分の背中にもたれているこの子も、同じように思っているのだろうか、同じじゃなくても似たことを感じているのではないだろうか。こんなふうに守られていた、と逆の立場になってしみじみと感じることは子育ての途中でままあることだけど、この夜は実家にいたこともあったせいか、自分の子ども時代と濃密に重なった夜だった。繰り返される輪のなかの一部に自分がいることを、あと数日で満月になるだろう、完全な円ではない月を眺めながら実感した。

BACKNUMBER 川内倫子 そんなふう
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第1回:多様な生き方、暮らし方
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第1回:多様な生き方、暮らし方

閃いたのは、新しいクリエイティブのヒント? それとも週末のパーティのアイデア?……ホームオフィスを舞台に、生き生きと働くこの女性。実は『Fasu』のファミリーを想定しながら最新のテクノロジーによって生み出されたデジタルヒューマンです。揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事に家事に家族とのクリエイティブな毎日を楽しむ『Fasu』的な暮らしを送る母親像をあらゆる面からキャラクタライズして生まれたこの女性は、私たちが生きる、ほんのちょっと先の未来を想定して生み出されました。 コロナ禍をはじめ、混乱する社会情勢、テクノロジーの急激な進化と未知の世界を歩む私たちですが、このデジタルヒューマンが暮らすちょっと先の未来では、果たして私たちは、どのような家族のかたちを求めて、どのように暮らしているのでしょうか。そんな未来の家族のあり方を、グローバルイノベーションデザインスタジオ「Takram」でデザイン、アート、サイエンスほか多岐の分野に亘ってデザインエンジニアを務める緒方壽人さんに3回にわたってお話を伺います。第1回目である今回は、家族での長野県・御代田への移住と、10年来続けてきたというオルタネティヴな暮らし方にいて訊ねました。 これからの人間とテクノロジーのあり方や共生を探る『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』(BNN刊)。その著者でもある緒方壽人さんは、この本の中で、「ちょうどいいバランス」を探すことの大切さについて触れています。 「暮らし方や家族のあり方は多様で、未来に何かひとつの理想形があるとは思いません。ですから今日お話しできることは、僕自身の家族のことや、これまでの経験から考えていることでしかないのですが……」 そう前置きしながら、控えめに、ゆっくりと話し始めた緒方さん。その穏やかな様子は、移住先である御代田の空気をそのまままとっているかのようでした。   〜〜 中略 〜〜 WHAT’S DIGITAL HUMAN? 揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事、家事、そして家族とクリエイティブな毎日を楽しむ女性。本記事トップビジュアルとして登場したこのモデルは、先述のように『Fasu』ファミリーの母親像を、顔立ち、ヘアスタイル、メイクアップ、スタイリング、さらにはライフスタイルに至るまであらゆる角度とディテールからキャラクタライズし、生み出されたデジタルヒューマンです。 最新鋭のテクノロジーを用いて生み出されたこのデジタルヒューマンは、東映デジタルセンター「ツークン研究所」、及び『Fasu』を擁する私たちアマナにより「企業広告や、ファッションカタログ、またメディアにおけるモデル使用における様々な課題解決」を目的として開発されました。 このバーチャルモデルを用いることで得られるメリットは1. 人種、人選、肖像権問題にまつわるリスク回避 2.使用期限や版権の制限フリー 3.リモートによる発注から納品 4.インナーブランドの統一化 5.CGによる表現可能領域の拡大……ほか多数。コミュニケーション及びコスト、クオリティなど、モデル使用のあらゆるフェーズで生じるデメリットをミニマムにし、モデル表現の可能性を大きく広げていきます。 デジタルヒューマンが描き出す、新しいモデルのあり方と可能性、そして未来にご期待ください。 問い合わせ先:

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