女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。一年にわたってお届けした、人気絵本作家であるtupera tuperaの中川敦子さんとサルビアを主宰するデザイナーのセキユリヲさんによる往復書簡、最終回をおとどけします。
中川敦子さんからセキユリヲさんへ。
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セキユリヲさま
こんにちは。春の訪れを少しずつ感じられるようになりましたね。
私たちは4月に立川にオープンする美術館の展覧会に向けての準備が、とうとう大詰めを迎え、毎日そのことで頭がいっぱいです!
夫婦で仕事をしているので、普段は、子どもたちが帰ってきてからは、一家団欒モードに切り替えるのですが、最近は夕食の席でも、夫の亀山とつい打ち合わせをしてしまうことが多くなりました。
しばらく話をした後で、子どもたちがつまらなそうにしていることに気がつきハッとして、「よ〜し!今日学校であった楽しかったことを発表してください〜!」なんて
わざとらしく(苦笑)切り替えます。
往復書簡を始めて1年、私も手紙を書いている時間は、自分や家族のことに向き合う時間になっていたなあと思います。
仕事のことを振り返ったり反省したりすることはあっても、母である自分のことを改めて考えてみるということは、これまであまりなかったように思います。
息子が小学校に入学し、お姉ちゃんはこの4月から中学生という節目。2人ともそれぞれに成長した姿をみせてくれた1年でした。
この間も、お風呂上がりに娘と鏡の前に並んでいてドキッとしました。自分の顔のシミやシワ、肌のたるみ、が気になってきたなあと、しょんぼり眺めていると、隣にピチピチお肌で、これから女性として花を咲かせていくんだろう娘の顔が。ああ、白雪姫の魔女はきっとこういう気持ちだったんだろうなあと(笑)。鏡に向かって問いかける魔女の気持ちに共感してしまいました。子どもが成長するという事は、自分たちが老いていくという事でもあります。その関係性を普段はあまり意識したくはないのですが、確実にその流れをとめることはできません。バタバタした毎日は、あっという間に流れていきますが、今しかない刻々と変化していく親子関係を楽しまないと! ですね。
セキさんの宝物を、家族! って間髪入れずに答えた娘さん。ほんとにほんとに大正解! ちゃんと愛が伝わっている、家族の時間が充実している、証拠ですね。家族の一番、幸せな瞬間って、そこにありますよね。具体的な思い出じゃない。たわいのないことで、目と目を合わせて楽しそうに笑いあっている時。それぞれが家族を大事に想っている気持ちが伝わってきて、無性に嬉しくなります。
正直、このお手紙のやりとりをする前は、養子縁組という形を選んだ方が身近にはいなかったので、特別な家族の形というイメージがありました。でも、セキさんの母としての目線や、お子さん達ののびのびとした毎日の様子をお手紙で拝見するたびに、その想いが全く変わっていき、「自分はいつでも背中を押せるような存在になりたい」というセキさんの言葉が深く、深く沁みました。日本でも、もっともっと養子縁組という形がひとつの選択肢として、自然に滲透していくといいなあと思います。
子どもを産み母になると、自分の子どもはもちろんですが、この世界に存在する全ての命が愛おしくなります。小さき子ども達の純粋さ、前に進んで行く強さ、輝くパワーをみていると、みんなが子どものままだったら、世界は平和であり続けるだろうなあ……なんてありえない幻想をいだいてしまう程です。
大人は、もっともっと謙虚に子どもから学ばなくてはいけません。人生を楽しむ術をよくわかっているのは子どものほう。まあ、それをわかっていても、イライラしながら自分の気持ちをぶつけて怒鳴ったり、忙しいからといって早く早く!と急かしたり、つまらない大人をやってしまいますが。
眉間のシワがこれ以上深くならないように、目尻をさげて、笑いジワを増やしていこう! と思います。
この往復書簡を続けている間は、他の方法でセキさんにダイレクトに連絡をすることを敢えて避けていたのですが、(変ですね・笑)これからお仕事で又ご一緒したりする機会もありそうなので、楽しみにしています。
家族で京都に遊びに来るようなことがあれば、ぜひお知らせくださいね。お待ちしています。
ありがとうございました!
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tupera tupera中川敦子さん、セキユリヲさんの往復書簡はこれで終了です。
今後の往復書簡にもご期待ください。