DATE 2020.01.10

第44回:salvia デザイナー セキユリヲより
地域の新しいご縁を大切に。今年は北海道で新年を迎える。

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。2月からは、人気絵本作家であるtupera tuperaの中川敦子さんとサルビアを主宰するデザイナーのセキユリヲさんによる往復書簡をお届けします。

セキユリヲさんから中川敦子さんへ。

 

──────

 

中川敦子さま

 

いよいよ2020年がやってきましたね。近所の国立競技場がオープンして、本当にオリンピックがはじまるんだ、という実感がわいてきました。今までにない大混雑になるであろう東京で過ごすのはちょっと不安もあり、期間中はどこかにゆるりと旅にでも出たいところ……だけど起こることをこの目で見てみたいという気持ちもあります。

 

前回の写真の金屏風に描かれた葵祭の行列、斬新! 古くから続く歴史も、tupera tuperaが切り取るとこんな風に楽しく見えるんだなあ、面白いなあと思いました。重みのあるもの、とっつきにくいものも、お二人が表現すると途端に楽しくて目が離せない作品になっちゃうのがすごい!

 

お正月はのんびりできましたか? 我が家は例年、元旦になった早朝のうちに近所の八幡宮にお参りに行きます。行列している間、近所の小学生が書いた書き初めの作品がずらりと並んでいるのを見て「ああ、この子うまいねえ」「この子、上手じゃないけど一生懸命な感じが好き」なんて夫婦で話すのも毎年のこと。お参りしたらおみくじを引いて(去年長女は大吉だったな)、家に帰ります。元旦の午後からは、都内の夫の実家でおせちを食べたり、集まった子どもたちとゲームをしたり。うちの子たちが一番小さいのでみんなにすごく可愛がられて帰ってきます。2日か3日には私の実家に行ってまた飲んだり食べたり。4日は先輩のお家で新年会、とバタバタとしているうちに、すぐいつもの日常がはじまっちゃう。お正月くらいゆっくりしたいなあと思っても、3度のご飯と洗濯、掃除、いただいた年賀状の返信を書いたりしていると、あっという間に過ぎてしまいますね。

今年は初めて、北海道で年越しなんです(これを書いている今は年末です)。外は一面雪で真っ白、夜はマイナス10〜15度と凍るような寒さなので、関東のように深夜並んでのお参りなんてしないんだろうな。驚いたのは、家によって大晦日からおせち料理を食べる風習があるということ。12月31日の夕食からおせちやカニ、お寿司を豪勢に食べ、深夜に年越しそばをすすり、お腹がはちきれそうになりながら家族揃って新しい年を迎えるのだとか。ちなみにうちの実家は大晦日の夕食にお蕎麦を食べて、早々に「年越し」をしてしまう家でした。それも珍しいのかな。

 

去年は年末だけ北海道で過ごして「飯寿司(いずし)」と呼ばれる郷土料理をおすそ分けしていただき、すごく美味しかったです。北陸などにも伝わる「なれずし」のひとつで、ハタハタや鮭などの魚と、人参や白菜などの野菜に、米麹を重ね、重石を乗せて漬け込んで1〜2ヶ月乳酸発酵させたもの。まろやかな酸っぱさと甘さと独特なうまみがあって、お酒もご飯もすすんでしまう! 北国の冬の知恵が詰まった保存食です。ちょっと子どもにはまだ早いかなという大人の味ですけどね。今ではデパートなどで買う家庭が多いらしいのだけど、いつか近所のおばあちゃんに教えてもらって自分でも作ってみたいな。

 

北海道の家のお向かいに働き者のおじいちゃん・おばあちゃんがいてね、旦那さんが山に入って、食べられるキノコを見分けて採取して、奥さんがそのキノコをさっと醤油とみりんと生姜で和えて持ってきてくれたりするの。キノコが新鮮でトロトロと溶けるような美味しさで、ご夫婦二人のあたたかさがぎゅっとしみ込んでいる。こんなふうに地域に素敵なご縁ができつつあって、これから、この環境でしかできないことを周りの人にたくさん教えてもらえそうです。

 

息子さんはいよいよラグビーチームに入会したのね。習い事っていろいろあって迷ってしまうけど、本人が選んだ道が一番。きっと楽しみながらできるね!

娘さんは春に中学生、早いねー。心も体も大きく成長する時期。今までとは違う考えや悩みも出てきそうだけど、敦子さんは子どもの気持ちをいつも伸びやかに受け止めてくれそう。またお話聞かせてね。残り1回の往復書簡となり、さみしいですが。

ではまたね。

 

セキユリヲ

──────

 

次回更新は1/24(金)の予定です。絵本作家tupera tuperaの中川敦子さんからのお返事です。

LATEST POST 最新記事

第1回:多様な生き方、暮らし方
ARTICLES
第1回:多様な生き方、暮らし方

閃いたのは、新しいクリエイティブのヒント? それとも週末のパーティのアイデア?……ホームオフィスを舞台に、生き生きと働くこの女性。実は『Fasu』のファミリーを想定しながら最新のテクノロジーによって生み出されたデジタルヒューマンです。揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事に家事に家族とのクリエイティブな毎日を楽しむ『Fasu』的な暮らしを送る母親像をあらゆる面からキャラクタライズして生まれたこの女性は、私たちが生きる、ほんのちょっと先の未来を想定して生み出されました。 コロナ禍をはじめ、混乱する社会情勢、テクノロジーの急激な進化と未知の世界を歩む私たちですが、このデジタルヒューマンが暮らすちょっと先の未来では、果たして私たちは、どのような家族のかたちを求めて、どのように暮らしているのでしょうか。そんな未来の家族のあり方を、グローバルイノベーションデザインスタジオ「Takram」でデザイン、アート、サイエンスほか多岐の分野に亘ってデザインエンジニアを務める緒方壽人さんに3回にわたってお話を伺います。第1回目である今回は、家族での長野県・御代田への移住と、10年来続けてきたというオルタネティヴな暮らし方にいて訊ねました。 これからの人間とテクノロジーのあり方や共生を探る『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』(BNN刊)。その著者でもある緒方壽人さんは、この本の中で、「ちょうどいいバランス」を探すことの大切さについて触れています。 「暮らし方や家族のあり方は多様で、未来に何かひとつの理想形があるとは思いません。ですから今日お話しできることは、僕自身の家族のことや、これまでの経験から考えていることでしかないのですが……」 そう前置きしながら、控えめに、ゆっくりと話し始めた緒方さん。その穏やかな様子は、移住先である御代田の空気をそのまままとっているかのようでした。   〜〜 中略 〜〜 WHAT’S DIGITAL HUMAN? 揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事、家事、そして家族とクリエイティブな毎日を楽しむ女性。本記事トップビジュアルとして登場したこのモデルは、先述のように『Fasu』ファミリーの母親像を、顔立ち、ヘアスタイル、メイクアップ、スタイリング、さらにはライフスタイルに至るまであらゆる角度とディテールからキャラクタライズし、生み出されたデジタルヒューマンです。 最新鋭のテクノロジーを用いて生み出されたこのデジタルヒューマンは、東映デジタルセンター「ツークン研究所」、及び『Fasu』を擁する私たちアマナにより「企業広告や、ファッションカタログ、またメディアにおけるモデル使用における様々な課題解決」を目的として開発されました。 このバーチャルモデルを用いることで得られるメリットは1. 人種、人選、肖像権問題にまつわるリスク回避 2.使用期限や版権の制限フリー 3.リモートによる発注から納品 4.インナーブランドの統一化 5.CGによる表現可能領域の拡大……ほか多数。コミュニケーション及びコスト、クオリティなど、モデル使用のあらゆるフェーズで生じるデメリットをミニマムにし、モデル表現の可能性を大きく広げていきます。 デジタルヒューマンが描き出す、新しいモデルのあり方と可能性、そして未来にご期待ください。 問い合わせ先:

2022.11.17
エルゴベビーの抱っこひも「ADAPT」がリニューアル発売。アップデートした機能を解説
動物園、博物館、美術館…。9つの施設でシームレスにクリエイティブな体験ができる「Museum Start あいうえの」とは
圧倒的な高級感で魅了。黒川鞄工房の「シボ牛革」ランドセルシリーズに新色が登場【2023年ラン活NEWS】