女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。人気絵本作家であるtupera tuperaの中川敦子さんとサルビアを主宰するデザイナーのセキユリヲさんによる往復書簡をお届けします。
中川敦子さんからセキユリヲさんへ。
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セキユリヲさま
こんばんは。いつも子どもに絵本を読んで、そのまま一緒に寝てしまう私ですが、今日は起きて手紙を書いています。京都も朝晩は特にぐんと冷えてきました。今年もいよいよ後すこしですね。昨日は、家のクリスマスツリーをみんなで飾り付けましたよ。
美術館「えき」KYOTOでの巡回展も無事に開幕し、少しほっとしたところです。
初日から最終日までの間、時々ふらりと会場に行って公開制作をしています。
絵の具にまみれながら描くようなライブペインティングではないので派手さはないのですが、2人でチョキチョキペタペタ、金屏風に和紙や様々な紙を切り貼りして、思いつくままノープランで進める作業はとても楽しいです。じーっと飽きずに見てくれる女の子や、「ぼくもやりたい~!」と叫ぶ男の子、お母さんに抱っこされてる赤ちゃんも「あー!」と指をさして反応してくれます。
公開制作をしようと思いついた時、クリスマス前だからツリーをテーマにしようかという話も出たのですが、せっかくの京都、和の心を大事に、毎年家の前を通る葵祭をイメージしながら、tupera tuperaらしい(かなりキテレツなキャラクター達が登場しています)行列を作ることに決めました。
だから、クリスマスよりもお正月の良さを伝えていきたい! というセキさんのお手紙を読んで、そうそう! と思ったんです。クリスマスもハロウィンもバレンタインも……楽しいことは取り入れちゃうのが日本人の良さではありますが、やっぱり心がしっくり落ち着くのは日本の行事だよなあと思います。特にお正月はいいですよね。どんなにバタバタな年末を過ごしていても、お正月が来ると全てがリセットされて、身も心も空気もシャキッと! 気持ちがいいです。
ちょうど最近読んでいた本(ちゃぶ台vol15(ミシマ社))の中に、内田樹さんの興味深い話が載っていました。
「いったい日本人の宗教性ってどうなっているのか。(中略)いまも、クリスマスを祝ったあとに、お寺で除夜の鐘をつき、神社に初詣に行く。」
内田さんは、それを非難しているのではなく、日本人は神も仏も大元は一つ、キリスト教で結婚式を挙げるときに祈る神さまと、お寺の仏さま、神社の神さまは、「同じようなもの」として観念されている。これは欧米人には理解できないと。それを読んで確かにそうだなあと思いました。自然の中、心の中、空の上、いろんなところに神さまという存在がいる、そういう大らかさが日本人の良さなのかもしれないなあと思ったんです。
京都に来て、今年の11月で3年。子ども達とも和の文化や歴史に触れながら、ミックスを楽しんでいきたいです。
そうそう! 息子のラグビー熱は続き、体験教室に何度か通って、とうとうチームに入会してきました。背番号を決めてユニフォームも注文し、ワクワクしているところです。
長女のほうは、先日、中学の制服の採寸と注文をしてきました。ひゃ~、ついに中学生!
思春期、反抗期、そして毎日のお弁当作りが始まる春に、今からちょっと怯えています……。
セキさんのところのお姉ちゃんは、演劇に興味を持ち始めたとのこと、とってもいいですね! 私たちも10年くらい前に舞台の世界に関わらせてもらうようになり、その世界の魅力を再認識しました。音楽、美術、言葉、体、光……総合芸術の極みですよね。前に立って演じる役者さんだけじゃなく、関わっている皆の力が結集されてひとつの舞台が出来上がる。子どもの時に、そういうことを体験できたら素敵ですね!
ご家族で、素敵なクリスマスとよいお年をお迎え下さい!
ではでは!
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次回更新は2020年1/10(金)の予定です。salvia デザイナー セキユリヲさんからのお返事です。