DATE 2019.06.21

第31回:tupera tupera 中川敦子より
「理想の育児」は、時々気が向いて作る「料理本」のレシピと同じでいい。

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。人気絵本作家であるtupera tuperaの中川敦子さんとサルビアを主宰するデザイナーのセキユリヲさんによる往復書簡をお届けします。

中川敦子さんからセキユリヲさんへ。

 

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セキユリヲさま

 

こんにちは。京都もだいぶ暑くなってきたけれど、新緑がキラキラ光って爽やかです。アトリエから鴨川の景色を眺めていると、仕事をやめてスイ〜っと自転車で出かけたくなります。私達はまだ見たことはないのですが、川沿いなど街中でも蛍が飛び交う季節のようです。

 

セキさんの思春期の話、おもしろかったです。赤裸々に(?)綴ってくださり、ありがとう。その時代、時代のセキさんを勝手に想像しながら読みました。特に幼稚園のエピソードがかわいすぎる! 小さなセキさんがお母さんの後をみつからないように、こっそり歩いている姿を想像したら胸がキュンとしました。

 

私も、小学校から中学校あたりは、たくさんコンプレックスを抱えていたことを思い出します。くるくる天然パーマのショートヘアで(小さい頃の写真を見たらエディ・マーフィーみたい!)リボンが似合うサラサラ長髪の女の子に憧れていました。ちょっとしたイジメもあったし、クラスに恵まれず、学校がつまらない時期もありました。でも、割と性格は真面目で優等生タイプなので、「学校に行きたくない」と思ったことはなかったな。高校は自由な校風の共学だったので、恥ずかしいくらい青春を謳歌! 男女7、8人の仲良しのグループがあって(大人になった今でも時々集まっています)、授業をさぼって屋上で語らったり、体育祭や文化祭では張り切っていろいろ企画したり。懐かしい〜。

 

「学校・教育」問題は、いろいろと思うこともあるけれど、今、子どもたちが通っている学校の先生たちも、お話をすると、それぞれの先生なりの工夫で子供達と向き合ってくれているなあと感じます。今の娘の担任の先生は、海外旅行が大好きな(家庭訪問に来ても、だいたい先生が行った旅の面白話を聞いて終わるくらい)若い女性の先生なんですが、英語が話せるとどんなに楽しいかをキラキラした目で熱弁し、ノリノリで英会話を教えてくれています。高学年女子特有の微妙な関係も「よ〜し、今日は女子会やるよ〜!!」と何人かずつ集めて、先生と和気藹々話す場を作ってくれているようです。

 

でも、親も子も、学校にすべてを求めてしまうとつらいよね、と感じます。何かあったら学校の責任、先生の責任、と言われてしまうから、何もおこらないようにすることが優先されて窮屈になっているような気がします。「選択肢や視野を広げてあげたい」というセキさんの想いにも共感しました。

 

まあ、学校も親も「理想の教育」なんて追い求めても、所詮、無理があるんじゃないかと思います。雑誌とかで育児論や教育法を読んで、「子どもの先回りはせず、急かさずに待つことが大事」なんて書いてあると、そうだよな〜反省して明日から実践してみよう! と思うんだけど、結局は毎日のように「もう、早く早く!」って怒鳴ってる。
それって、自分が料理本を買う時と同じだなあと思います。本屋さんで立ち読みしていると「簡単で美味しそう。これならできる!」って買って帰るんだけど、いざ作るとなると、メニューはいつもと同じ…。でも、たま〜に心と時間に余裕があるときには、本を開いて新しい料理に挑戦してみることもあるし、子ども達ともじっくり向き合ってみる時間をつくってみることもある。そうすると、確かに新しい発見があったりするんですよね。「理想」は「理想」として掲げておいて、時々、気が向いたら実践してみる、くらいがちょうどいいのかもと思います。

 

 

セキさんは、子どもを叱るとき「いやまてよ、これは本当に悪いことなのか?」と判断にまようことありませんか?
今日も夕飯のとき、息子がちくわを持って望遠鏡にしたり、メガホンみたいに口につけて「ヤッホーヤッホー」と私に向かって叫んだりしていたんです。そんなとき「お行儀が悪いからやめなさい!」とか「遊んでないで早く食べなさい!」とか、母親としてのセリフはいろいろある。でも、ちくわの穴ってやっぱり面白いよね、いろいろやってみたくなるよねえと共感したら、自分も「ヤッホーヤッホー」と返していました(笑)。なんでもガミガミしちゃう時は、自分に余裕がない時。子どもの素直な感性に、ふと立ち止まる心の余裕を持っていたいなあと思います。

 

セキさんが前回のお手紙で、気になると言っていた、我が家の収納ですが、正直、見せられたもんではありません。キレイに整理して写真を撮ろうかなと思ったけれど、やめました(笑)。でも、しまっておく場所は決めていて、リビングにある4段くらいの階段が引き出しになっているので、子どもの画材や材料は、そこにぐちゃっと入っていますよ。
「代々木深町マルシェ」のお話も、すごく興味があります! 実はFacebookでちらりと情報は知っていたのですが、往復書簡をしている間は、なるべくこのアナログなやりとりを楽しみたいと思って、なるべく見ないようにしています(笑)。次回のお手紙を楽しみに待っていますね。

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次回更新は7/5(金)の予定です。salvia デザイナー セキユリヲさんからのお返事です。

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