DATE 2019.02.15

第23回:tupera tupera 中川敦子より
軽やかには動けないけれど、見える世界は楽しく変わってく。

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。2月からは、人気絵本作家である〈tupera tupera〉の中川敦子さんとサルビアを主宰するデザイナーのセキユリヲさんによる往復書簡をお届けします。

中川敦子さんからセキユリヲさんへ。

 

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セキユリヲ様

 

こんにちは!お久しぶりです。数年前に表参道でバッタリとお会いして以来でしょうか?セキさんとは、私達tupera tuperaがまだ活動をはじめたばかりの頃からなので、知り合ってもう15年くらい経ちますが、こんな風に文通をするというのは、新鮮な気分でちょっとドキドキしています。(でも、個人的にはもっと前。私が大学生の時、雑誌のインタビューで、セキさんのことを初めて知り、こんな風に自分の思いを自分の力で形にしていくような仕事ができたらステキだなあと、憧れていました。)

 

我が家の近況から。子どもたちは、お姉ちゃんが10歳、弟は6歳で、今年の4月に小学校の1年生と6年生になります。お姉ちゃんなんて足のサイズがもう24cmもあります!家は、2年前から京都に拠点を移し、忙しいけれど毎日の生活はマイペースにやっております。

 

母親としては、おチビちゃんが家にいる生活は終わってしまったなあ〜とちょっとさみしい気持ちです。子どもがいると、時(人生)は着実に前へ前へと進んでいるということを実感させられますね。自分自身もまた、産まれてから死ぬまでの一度きりのチャンスを、今生きているんだよなあ…なんて、子どもの寝顔を見ながらふと考えてしまうとゾッとしますが、どこかにちゃんとその意識をもっておくことは、大事なことだとも思います。

 

子育ての第1シーズンを終えたtupera家ですが、セキさんはいかがですか?セキさんが養子縁組で、赤ちゃんとの暮らしをはじめたニュースを聞いた時には私も驚きましたが、自分で「母になる」と決める前と後では、セキさん自身どんな変化がありましたか?

 

私は、一人目の出産の前と後では、自分をとりまく世界がぐるんぐるんと回って全てが変わってしまったようで、しばらくクラクラしていました。最終的にはぐるりと回って元の自分を取り戻しましたが…社会との関わり方、ものの見方は、ずいぶん変化したように思います。ぐっと広がって地に足がついたような…。こんな風に?

〈tupera tupera〉中川敦子「ぐっと地に足がついた」図

根っこが伸びていくと“よっこらしょ”と、軽やかに動くことは難しくなりますが、今、ここから見えている世界を楽しんで、小さな出来事にもよろこびを感じられるようになったかもしれません。

 

新年最初の連休に、久しぶりに東京に行き、子どもたちがイトコと遊んでいる間に、ずっと観に行きたかった、『いわさきちひろ生誕100年「Life展」作家で、母で つくる そだてる 長島有里枝』(現在は終了)に行くことができました。この連載の先輩でもある長島有里枝さんと、いわさきちひろさんの企画展で、お二人は作品もイメージも一見正反対のように感じていましたが、共通する女性としての強さ(展示されていた日記からは弱さの部分も…)、美しさ、あたたかさ、平和への想いが伝わってきて、とてもいい展覧会でした。自分もまた「作家であり母である」ということを誇らしくも思えたと同時に、背筋がシャキっと伸びました!

 

セキさんは、今子育てに専念されていると聞きましたが、仕事(制作)がしたい!とモヤモヤすることはありますか?私はやっぱり、仕事というか手を動かして作品をつくっていることで自分が満たされているし、反対に仕事でいっぱいいっぱいになり心が荒れた時には、月並みな言い方ですが、子どもの笑顔に癒されています。

 

書きたいこと、聞きたいことはどんどん出てくるのですが…このへんで。

 

次回は、京都での暮らしのことなんかも書こうかなあと思っています。

 

tupera tupera 中川敦子

〈tupera tupera〉中川敦子『子どもが描いたパパの絵』

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次回更新は3/1(金)の予定です。デザイナーのセキユリヲさんからのお返事です。

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