DATE 2016.10.26

baby Dior Artistic Director:コーデリア・ドゥ・カステラーヌ

フランスの高級子ども服ブランド〈ベビー ディオール〉。デザインチームを率いるアーティスティック・ディレクターであるコーデリア・ドゥ・カステラーヌは、半世紀以上の歴史を持つ由緒あるブランドの意志を守りつつ、その価値に新しい息吹を吹き込んだ。過去のアイデアと新しいイメージをつなぐ、彼女の伝えたい思いとは?

次世代へ伝える過去と新しい価値

〈ベビー ディオール〉のアーティスティック・ディレクターを務めるコーデリア・ドゥ・カステラーヌは、フランスの一流メゾンでプレタポルテのデザイナーとして経験を積み、出産と子育てを機に子ども服の世界へと転向した経歴の持ち主。
「小さい頃から洋服の絵ばかり描いていて、デザイナーになりたいと強く思っていました。幸運なことに伯父がカール・ラガーフェルドの右腕で、ティーンエイジャーの頃から〈シャネル〉のスタジオに出入りをし、見習いとして働いていたの。16歳で〈エマニュエル・ウンガロ〉の研修生になりましたが、2年後に第1子を出産。自然と子ども服への興味が高まりました。ウンガロ氏の引退をきっかけに、子ども服への方向転換を決意したのよ」
2006年に設立したキッズブランド〈セードゥセー〉はセンスの良さと、高い技術力でたちまち評判になり、キッズデザイナーとしての地位を確立。2012年には〈ベビー ディオール〉のアーティスティック・ディレクターとなり、アートピースのように細部まで美しいコレクションを発表する。約70年の歴史を誇るメゾンのコレクションを作る上で、彼女が大切にするのは『古典を見直すこと』だという。
「アトリエには素晴らしいアーカイブがたくさんあり、ムッシュ・ディオール(クリスチャン・ディオール)が使った素材や刺繍、テクニックなどを紐解くことができるの。1967年創立の〈ベビー ディオール〉は、当時から革新的なコレクションを発表してきました。モードの先駆者であるブランドの姿勢や伝統は、私の重要なインスピレーションソース。ブランドのアーカイブを研究し、昔使っていたテクニックなどを今の時代に合うようにアレンジし、取り入れています」
今シーズン秋冬のテーマは「音楽」。今年亡くなったカリスマ的ミュージシャン、デヴィッド・ボウイからアイデアを得た。
「ボウイの独創性と、前衛的な楽曲や衣装にインスピレーションを受けました。ムッシュ・ディオールも時代を先取りする人だったから、2人の先駆的なアーティストの世界をミックスしたコレクションです。メゾンの伝統的なピースにボウイの風変わりな衣装の一部、星のモチーフや、鮮やかな色を取り入れたのよ。昨年のテロ以来、パリには沈んだムードが漂っています。こんな時代だからこそ、明るい色やユニークな柄、新素材を用いて、袖を通すだけで楽しく、踊りたくなるような服を作りたかったの」
〈ベビー ディオール〉の服の一部はフランスのアトリエで、長年培ってきた高い技術で作られている。どの服も細部まで完璧に、長持ちするよう仕上げられているのがポイント。
「子ども服でも、いいものは捨てずに次世代へ伝えるべきだと思います。私は元々ヴィンテージが好きなこともあり、自分が当時着ていた〈ベビー ディオール〉の服も、大切に保管しておいて子どもたちに着せました。それでもまだきれいな状態を保っているのよ。良質で、素材もシルエットも美しい。消費する服というより、長く生かしておきたい服。私が35年前に洗礼式で着た白いドレスも〈ベビー ディオール〉でした。孫やその子どものために大事に、ずっと取っておこうと思っています」
名門貴族の家に生まれた彼女は、ファッションやアートに囲まれ、恵まれた幼少期を過ごしたそうだ。優れた彼女のセンスや発想力は、その頃に培ったものだという。
「祖母は粋でおしゃれな人でした。美しいものが好きで、私を連れては世界中の展覧会を訪れ、一流のアート作品やさまざまな国の文化を見せてくれたの。芸術的な感覚や、審美眼を養えたのは祖母の教育のおかげね。小さい時からアート作品を見せることはとても大切です。例え子どもが嫌がっても、必ず展覧会に連れていって。そうすることで、豊かな感性がきっと育まれるはずだから」

Photograph(1-3.):Sophie Carre
1-3. 1967年から変わることなく、現在も同じノウハウで作られているという洗礼式用のドレス。次世代に引き継がれたこれまでの技術や経験が、現代まで受け継がれている。1着につき1週間以上の手間と時間をかけて、作りだされているそう。 4. 今でも大切に保管されている、コーデリア自身が幼少期に実際に着ていたというドレス。

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