DATE 2018.07.13

映画『ブリグズビー・ベア』“ライナスの毛布”を奪わずに、あたたかく見守り、育むことの大切さ

“ライナスの毛布”を知っていますか?“ブランケット症候群”とも呼ばれ、小さな子どもが何かに執着することで安心感を得ることを言い、スヌーピーで有名なアニメ『ピーナッツ』に出てくる少年ライナスがいつも毛布を握りしめていたことから、そう言われるようになったとか。

 

自分自身にも、わが子にも、“ライナスの毛布”のような物への執着がなく考えたことがなかったが、映画『ブリグズビー・ベア』を観て、改めてこの毛布の存在が大事だということに気付かされた。

6月末から公開されている映画『ブリグズビー・ベア』は、ちょっと普通じゃないストーリーと設定にびっくりする。主人公の25歳の青年ジェームスは、世間と遮断された小さなシェルターで両親と暮らしている。子どもの頃から、毎週ポストに届く教育ビデオ『ブリグズビー・ベア』を楽しみにしていた。そんなある日、警察がシェルターからジェームスを連れて行き、両親が逮捕されてしまった。

 

実は25年前、ジェームスは赤ちゃんの頃に誘拐されていた。両親だと思っていたテッドとエイプリルは他人で、ふたりに世間から隔離され、育てられていたのだった。突然外の世界に放り出され、実の両親、妹と暮らすことになったジェームスは困惑する。

 

そんな中、毎週楽しみにしていた『ブリグズビー・ベア』についてまわりに聞いてみるが、誰も知らなかった。『ブリグズビー・ベア』は、テッドとエイプリルがジェームスのためだけに作ったオリジナルのビデオだった。ジェームスは、初めての外の世界に戸惑いながらも唯一の支えだった『ブリグズビー・ベア』を自分自身の手で撮影し、物語を完結させようと考えるのだった。

一歩間違えると、悲しみに満ちたヘビーなサスペンスになりそうなストーリーだが、軽快なコメディタッチで、ユーモアたっぷりの人間ドラマに仕上がっているから驚く。それは、ジェームスの家族や友人、取り囲む人々の優しさとおおらかさのおかげだろう。

 

ジェームスの実の親は、最初は25年ぶりに会う息子を歓迎するが、『ブリグズビー・ベア』に執着しすぎる息子が手に負えず、一度は手を離そうとする。しかし、ぶっきらぼうだが愛情深い妹オーブリーや映画好きの友人スペンサー、ジェームスを保護した優しい警官ヴォーゲルらに促され、ジェームスが自由に映画製作できるようサポートする。

 

ジェームスの豊かな人間力も吸引力になっている。『ブリグズビー・ベア』への情熱を熱弁する素直で純粋な性格、自分が置かれている数奇な境遇をものともせずに、がむしゃらに映画作りにハマっていく姿は、趣味に没頭する25歳のごく普通の青年だ。映像製作が趣味のスペンサーは意気投合し、『ブリグズビー・ベア』のファンになり、製作の片腕になるのだった。

ジェームスにとっての“ライナスの毛布”が『ブリグズビー・ベア』。物語に向き合い完結させることで、誘拐されてしまった“自身の第一の人生”に幕を引き、新たな人生を歩もうとしていたのだ。“ライナスの毛布”は決して人には引きはがせない。自分自分で手放し、そこから卒業・自立することが大切なのだ。

 

子どもにも、ぬいぐるみやおもちゃ、ママのおっぱいなど、いろいろな物への執着があるかもしれない。しかし、それを無理やり親が引き離そうとするのは難しく、自分自身で手放せるまでの時間、自立心や成長が必要なのだ。

 

ちょっぴりシュールなクマのキャラクター『ブリグズビー』も、なんとも言えず味わい深い。レトロでクラシックなVHSテープの世界観、幼少期に見ていたテレビ人形劇を思い出させるような懐かしさも、親世代にはグッとくる人が多いはず。子どもと主人公のジェームスをなぞらえてみながら楽しんで欲しい映画『ブリグズビー・ベア』を、ぜひチェックして欲しい。

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