DATE 2019.12.10

映画『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』 ディーン・デュボア監督インタビュー「コミックスを真似て、絵が上達した」

人間とドラゴンが共存する世界を描き、全世界にドラゴン旋風を巻き起こした大ヒット映画『ヒックとドラゴン』シリーズ。待望の最新作で、3部作の最終章となる『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』が2019年12月20日より公開される。1作目から監督を務めるディーン・デュボア監督に、Fasu編集部がインタビュー。最終章となる本作への思いや幼少期のエピソード、アニメーション監督になったきっかけを聞いた。

『ヒックとドラゴン』シリーズは、世界的ベストセラーの同名児童文学が原作。かつては敵同士だった人間とドラゴンが共存する世界で、弱虫のバイキングの少年から若きリーダーに成長した主人公ヒックと、伝説のドラゴン・トゥースの冒険物語を描いている。

 

『ヒックとドラゴン』シリーズは、ファンタジーでありながら、圧倒的なリアリズムと地に足のついた現実味のあるストーリーが魅力だ。「ファンタジーは苦手」「ドラゴンはちょっと…」という、大人や女性の心をわしづかみにするその世界観は、なぜ生まれたのだろうか。

 

「この映画での人間とドラゴンの関係性は、人間と自然界、あるいは人間と地球、人間と惑星という関係性を象徴しています。ドラゴン=自然を表していて、自然のデリケートさや美しさの象徴でもある。人間とドラゴンが戦いをやめなければ、永遠に失われるかもしれない。自然、惑星として、私たちが守るべきものであり、共生するものであるという思いが軸にあります。

登場人物が直面する問題は、フィクションの世界で起きることですが、現代に生きる私たちがリアルに感じられる問題や関係性と同じ。だから自然とキャラクターに寄り添ってしまう。そのおかげで、多くの人に共感してもらえているんだと思います」

 

1作目でドラゴンのトゥースは羽を失い、ヒックはドラゴンとの戦いで左足を失ってしまう。原作にはないこの設定も、リアリティにこだわったからこそ生み出された部分だ。

 

「現実の世界の物理の法則が、そのまま生きているような世界観にしたかったんだ。マンガ風にすれば、ドラゴンの背中から人が落ちても、ポーンと跳ね返るような世界なんだけど、この映画は“ドラゴンが私たちの世界で、一緒に歩いていたかもしれない”というリアリティを持たせたかった。そのためには、映画の中の危険なものが私たちにとっても危険なものでないといけない。だから、主人公ヒックのヒロイズムの犠牲として、足を負傷するという選択をしたんだ」

原作の精神性を保ちつつ、新たなチャレンジが多くあった映画版。ドラゴンの描き方も原作とは異なり、犬ほどのサイズを大きなドラゴンに変えたと言う。

 

「原作通りに描くと、物語が少し幼くて、スケールが小さい。より大きなスケールで、ファンタジーやアドベンチャーの要素を持たせるには、敵対視しているドラゴンと人間が友情を築き、お互いの関係性を変えてしまう物語にしてはどうか、と考えました。ドラゴンの設定も、原作は犬のようなサイズだった。脅威を感じる悪名高いドラゴンにしなくてはいけなかったし、ヒックが乗れるサイズ感にする必要があったんだ。みんな、ドラゴンに乗ってみたいという憧れがあるだろう? 犬や猫みたいに抱きしめられる、人間に親しみ深いペット的な要素もつけ加えたんだ」

 

「監督もドラゴンに憧れていた?」と聞くと、嬉しそうに「イエス!」と答えてくれた。

 

「ファンタジーが大好きだったからね! 特に、映画『コナン・ザ・グレート』が好きで、魔法や剣、ドラゴンが出てくる世界観が大好きだった。小さい頃の僕が、大好きなファンタジー映画を作る仕事をしていると知ったら、なんて思うだろうね(笑)。

 

僕は、小さい頃から絵を描くのが好きだった。コミックスを真似て絵を描いたおかげで、僕のスキルはどんどん上達していったよ。でも僕の家はそれほどお金がなかったから、コミックスを買うことができなかった。だから町の小さなお店に1日中入りびたって、コミックスを全部記憶して帰ったんだ。家に戻ってから、その物語を自分で描いた。店主の人がとても優しくてありがたかったね」

家族や周りの人は監督を応援してくれたが、それがプレッシャーになり過ぎたこともあったと明かす。

 

「具体的な言葉はなかったけれど、親が僕を誇らしく思ってくれているのを感じられたのが一番大きかった。とりわけ絵を描くことは、すごく応援してくれたね。父が肉屋だったんだけど、肉を包む用の茶色い紙を、家にたくさん持って帰ってきてくれたから、紙に困ることはなかったよ(笑)。

 

父は、ランチを紙袋に入れて持って行くんだけど、その紙袋に僕が毎日絵を描いていたんだ。同僚に見せびらかして自慢していたらしい。ただ、みんなが『プロのアーティストになるね』と言ってくれたんだけど、僕としてはちょっと応援されすぎ?と思ってしまって、反発して『海洋物理学者になる!』と思っていた時期があった(笑)。たくさん勉強をしなくちゃ物理学者にはなれないと分かって、結局は絵を描く道を選んだよ」

監督がアニメーションの道を選んだのは、大学にアニメーションコースがあったのがきっかけだったと言う。

 

「得意な絵を描くことで、生計を立てられるキャリアはないかと探し始めました。高校を卒業した時、本当はコミックスのイラストを描く仕事がしたかったんだけど、どういう風になったらいいか分からなかった。

 

たまたま大学に、アニメーションが学べるコースがあって。そこで勉強してみたら、コミックスの好きな部分が全部アニメーションに詰まっていると分かった。さらには、それを動かして命を吹き込むことができる、世界中の人に届けられると知った時に、アニメーションの道へ進もうと目覚めました。ストーリーテリングに対する興味と絵を書く才能を組み合わせて、自分の物語を作りたい、と。それはつまり、監督になるってことだったんだよね」

 

最後に映画『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』、そして日本のファミリーにメッセージをくれた。

 

「この作品は、親と子の物語だと思います。心のすべて、愛情100%で守って育ててきた子どもが、ある日それぞれの人生、それぞれの運命に向かって歩き始める。その巣立ちの時に子を解き放ち、背中を押してあげなくてはいけない。それは、どの親も直面する挑戦です。そのために必要な知恵を喚起させられる物語なのではないかと思います。もちろん映画の中には、冒険やユーモア、驚きも込められていますから、そこもたっぷり楽しんでください」。

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