「ダメ!」を無くして子どもたちのクリエイティビティを最大限に引き出す。発見に満ちた遊び場「PLAY! PARK」
東京・立川の新街区、GREEN SPRINGS内にある「PLAY!」は、「絵とことば」をテーマに大人も子どもも楽しめる美術館「PLAY! MUSUEM(以下、MUSUEM)」と、子どものための屋内広場「PLAY! PARK(以下、PARK)」の2つを併設した、新しいタイプの複合文化施設。
片方だけを楽しんでも良いけれど、MUSUEMで絵本やマンガ、アートなどの本格的な展示を観たあとで、上階にあるPARKに移動して体を動かして遊んだり、展覧会と関連したワークショップに参加すれば、頭と心と体をさまざまな角度から刺激することができる。
2020年6月の開園以来、瞬く間に都内屈指の人気子連れスポットとなった「PLAY!」。特にPARKでは毎日ワークショップを開催しているので、「ここに来れば、いつでも子どもにクリエイティブな生の体験をさせてあげられる」と好評だ。
今回は、多くのファミリーを魅了するPARKの人気の秘密を探るべく、キュレーターを務める川合由美さんに話を伺った。
子どもたちの自主性を育むワークショップを目指して
「『PLAY!』を訪れる子どもたちや親御さんの目的はさまざま。ワークショップ体験や遊び場を求めて朝一番からPARKに来られる方もいれば、MUSUEMの展示を見てからフラっとPARKに立ち寄られる方もいます」と話す川合さん。
PARKは子どもたちがアスレチック感覚で身体を動かせる広場と、ワークショップ会場を併設している。ワークショップは毎日開催され、アートやサイエンスをテーマにした日替わりワークショップと、MUSUEMの展覧会に関連した期間限定ワークショップの2種を展開。
特にMUSUEMと連動したワークショップは好評で、「展覧会で刺激を受けた後に関連ワークショップに参加した子は、やっぱり作るものがちょっと違いますね」と川合さんは言う。
取材時には、MUSUEMで開催していた染色家・柚木沙弥郎氏の企画展示『柚木沙弥郎 life・LIFE』(2022年1月末終了)と連動したワークショップ「する・刷る」で、子どもたちが制作した作品を展示していた。PARK内にある「ギャラリー」スペースに飾られた子どもたちの作品を見てみると、「展覧会でさまざまな色や模様に触れたことが、大胆なタッチの作品づくりに繋がったのかな」と思わせる、楽しく伸びやかな作品が多いのが印象的だった。
川合さんによれば、「PARKのワークショップ運営にあたり気をつけているのは、その子の主体性を大切にすること。ワークショップって普通、先生がいて、やり方を教えてもらって……というスタイルが多いですよね。でも、子どもたちには指導通りに上手に作ることよりも自分らしいクリエイティビティを大事にしてもらいたい。なので基本的に子どもたちがすることに手出しはしないようにしています」とのこと。その姿勢は、展覧会との連動ワークショップでも、日替わりワークショップでも同じだという。
「学校が長期休みの期間には、特別プログラムを展開しているのですが、この冬休みには『冬の自由研究』と題して、『まっしろ!』というテーマで日替わりのワークショップを行いました。例えばソフトクリームを作るワークショップでは、白い粘土をこねて、その粘土を生クリーム絞りで紙で作ったコーンに絞り出すところまでをやるんですが、親子でやったり、お友達同士でやったり……みんなで協力しあって楽しんでいましたね。特にこちらが指導をせずとも、一人がコーンを持って、もう一人がクリームを絞り出したり、どうしたら上手く作れるかを自分で、親子で、お友達同士で考えている姿が見受けられました。
また『未知のまっしろモンスター』というワークショップでは、綿をみんなに配って自由にモンスターの形を作ってもらったのですが、本当に千差万別、色々なモンスターが生まれました。どのワークショップでも、キット化しているようなものを渡すことはないので、その子の個性が反映されて完成形はバラバラになるんです。最初は戸惑う子どももいますが、何をしたいかを聞いてみて、それが出てこない子にはアドバイスするという形で進めています」
ワークショップ以外にも、クリエイティビティを刺激するスペースが点在
ワークショップは毎日14時から開始され、訪れた当日に申し込みが可能。定員数を超えた場合は抽選となるが、日によっては全員参加できるものもあるので、そういった敷居の低さも魅力の一つだ。
「子どもってタイミングが難しいですよね。当日になったら具合が悪くなったり、行きたくなくなってしまったりすることもある。ふらっとやって来て、何かやっていたら参加する、という感じで楽しんでいただけたらと思っています」と川合さん。
また、PARKにはワークショップに参加しなくとも自由に作品作りができるスペースの、「ファクトリー」や「絵の具コーナー」も。段ボールや空き箱、画材など、さまざまな道具や素材が用意してあるので、手ぶらで訪れて、自由にものづくりができるのがいい。
もしお子さんが絵を描くよりも音楽が好きなら、「スタジオ」でグランドピアノを弾いたり、打楽器を演奏したり。静かに本を読みたいタイプであれば、絵本がたくさん置かれた「ライブラリー」へ、映像に興味があるなら「シアター」で多摩美術大学グラフィックデザイン学科の学生による「タマグラアニメーション」を観てもいい。
とにかく全身を使って遊びたい! 走り回ったり飛んだり跳ねたりしたい!という元気いっぱいの子どもたちは、PARKの中心にある、クッション性のある柔らかなスペース「大きなお皿」へ。3歳未満の子どもたちには、静かに安心して遊べる「小さなお皿」が用意してあるので各々が周りを気にせず目いっぱい遊ぶことができるのが嬉しい。
「ダメ!」は禁句。自由で大胆なことを歓迎できる場所を作ってあげたい
いま、室内でも屋外でも、騒音対策や怪我対策として、子どもたちが大きな声を出したり、裸足で走り回ったり、自由に遊ぶことを禁止するムードが広まっている。公園では大型遊具が撤去され、家庭内でも住環境によって周囲に気を使い子どもを思い切り遊ばせられないと悩むファミリーも多いはずだ。増え続ける「それはダメ」「危ない!」という声かけに、モヤモヤしてしまう人も多いだろう。
「現在、子どもが自由に遊べる場ってどのくらいあるのだろう?と、私たちも危惧しています。“遊び”は子どもにとって、クリエイティブな表現の場。そう考えるからこそ『これはできない』という縛りを無くして、自由で大胆なことを歓迎する遊び場を作ってあげたいんです。その想いの結晶が、『PLAY! PARK』。私たちはPARKを運営する上でも、『ダメ』という言葉をなるべく使わないようにしています。ダメとだけ言っても、子どもはなぜダメなのか分からないもの。もちろん危ないことをしていたら声をかけますが、闇雲にダメというのではなく、自分でなぜダメなのかを考えてもらうようにしています。それで大変なことが起きたことはこれまでありません。保育士の方などが見学にいらして、『ここまでやらせていいんだ!』と驚かれることもあります」
PARKでは作品作りも遊びも、大人も一緒に参加して楽しんでほしい、と川合さん。「親子のコミュニケーションの機会にもなりますし、単純に大人が遊んでもかなり楽しいはず。クタクタになるまで童心に戻って遊んで帰られる方も多いですよ」と話す。
自由な遊びの中で子どもたちの五感とクリエイティビティを刺激し、「これがやりたい!」という主体性を引き出す「PLAY! PARK」。「PLAY! MUSEUM」と併せて、気軽に立ち寄ってみてはいかがだろうか。
特徴
□ ワークショップは予約不要(定員を超える場合は抽選の可能性有り)
□ 子どもたちの自主的な遊びを重視
□ MUSEUMの展覧会と連動したユニークなワークショップも随時開催
□ 小学生以下は保護者(20歳以上)の同伴が必要
1日券(当日に限り入退場自由):[平日]3歳未満 ¥1,700、3〜12歳 ¥2,200、大人 ¥1,100 [休日]3歳未満 ¥2,000、3〜12歳 ¥2,500、大人 ¥1,100 ※平日夕方券、休日3時間券、立川割(立川市在住・在学者対象)あり