【CATALUNYA/From YAYOI】スペインの田舎暮らしから。YAYOIのカタルーニャ日記Vol.1
はじめまして。フォトグラファーの澤田弥生です。3年前からスペイン北東部にある、ここカタルーニャ地方に 3歳になる息子とイギリス人のパートナーと共に暮らしはじめました。
カタルーニャという地名ですが、独立問題で数年前から日本のニュースでも度々取り上げるので、耳にされた方もいらっしゃるかもしれませんね。私の住む村はそのカタルーニャにある総人口 800人くらいの小さな村。ピレネー山脈を挟んで、北に 40分 程、車を走らせればフランス、南に1時間ほどでバルセロナ、東にある地中海からは 10分ほどの場所にあります。海に近く自然がとても豊かな場所です。
こういった環境から、バルセロナはじめヨーロッパ圏の人たちが所有するサマーハウスも沢山あります。そのせいか、ここは田舎村でありながら、夏になれば、村は賑わい、人の出入りも多く、住んでいてあまり窮屈な感じはしません。最近は、都会の若い人たちが子育ての為に移住してくることも増えてきているようで、家のインテリアや人々の身なりもどことなくオシャレな感じがします。
村に一歩入るとそこからは 16世紀、17世紀に建てられた石作りで重厚感のある建物が建ち並び、まるで中世の村の中のよう。本当に映画のセットにいるような錯覚を覚えそうな景色が広がります。 おそらく一番古いものは村の中心にある教会でしょうか。1673年とドアの上あたりに刻まれています。
私の故郷が奈良という事もあり、歴史が刻まれた大きく古い建物に囲まれていると、なんだか大きなものに守られているような居心地の良さと安らぎを感じます。数百年の時と共に、手を加えたり修繕されてきた跡を発見するのが楽しみの一つでもあります。
私の住む家も含め、この辺りにある多くの家は「マシアハウス」という独特の特徴のある石造りの家で、外壁が形もサイズもバラバラの丸っこい石を積み上げられてできています。こちらの友人に聞いたのですが、形が整った大きな石を積み上げて作られている家はもともと裕福な人たちの家だったそうです。大きな整然とした石をまとまった数、集めてくるのは、容易ではなかったのでしょうね。この話を聞いて、自分の住む家の外壁を見てみましたが、うちはそうでもなかったようです(笑)。
村の中には、おばさんが一人で切り盛りする、小さな食料品店と、この辺りで一番古いお肉屋さんが一軒あります。どちらも午前中のみオープンというのが、とてもスペインらしいのですが、流石に、そこだけには頼れないので、ほぼ毎日車に一度は乗っている生活です。
村から一歩外に出ると、広大な農場が広がります。ここで作られる作物は主にコーン、小麦、オリーブ、ひまわりや菜種そしてリンゴなどのフルーツですね。今は小麦の収穫が終わった所で、刈り取られた後の干し草が丸く束ねられて、色んな所に積み重ねられていたり、転がっているのをよく見かけます。
日本の田舎暮らしもそうだと思うのですが、自然のど真ん中に住んでいると、四季折々の風景の違いを毎日目にすることになり、季節の移ろいや時間の流れ、食、花、生き物のことを自然と強く意識するようになりました。
子どもを出産し、こちらに移住してくる前、私は、東京に3年、ニューヨークに10年以上住んでいました。ここカタルーニャの田舎村で子育てをして暮らしていく事は、ニューヨークで出会ったイギリス人のパートナーの強い意向であり、彼の将来設計の一つでもあったようです。
長いアメリカ生活の後、日本に帰国しようやく慣れてきた後でのスペイン移住は、正直迷いました。言葉も職探しも全て一からまた始めるのかと思うと、スタートはワクワク感というよりは、後ろ髪を引かれる思いでの移住となりました。
実際に暮らし始めて、時々ホームシックになる事もありました。けれど、一歩外に出ると言葉がうまく通じないにも関わらず、誰かしら笑顔で挨拶してくれる、村の人たちの気さくでおおらかな優しさと心の余裕のようなものに救われることがたくさんありました。
こちらの人達は、子どもにはもっとフレンドリーなので、恥ずかしがり屋だった 3 歳の息子が、自分から話しかけに行けるようになったのも母親として、とても嬉しかったことです。息子は田舎暮らしを通して、すっかり自然児になり、父親や村の人達に教えてもらって、アニスの枝を折ってしゃぶってみたり、石でアーモンドの殻を割って中身を食べたり、たくさんの花やハーブの名前も覚えました。自然の中にいると子どもは飽きる事なくずっと遊んでいます。
ほぼ白紙の状態で移住しスタートしたここカタルーニャの生活ですが、紆余曲折ありながらも、3年経った今なお、毎日いろんな発見があり、同時に第2の故郷になりつつあります。
そんなくらしを写真とともに、こちらでお伝えしていければと思います。