ロンドンからこんにちは。シホです。
英国のロックダウンもいよいよ次のステージへと移行、7月4日からレストランやカフェなども正式に開店に。いつもの日常が戻ってくる兆しが見え始めました。
そんなコロナ禍の波が落ち着きを見せ始めた矢先に、先日アメリカミネソタ州で痛ましい事件が起きました。“Black Lives Matter”(以下、BLM)については、非常にデリケートで難しい話題ですので、このジャーナルで取り上げるべきか大いに迷いましたが、今日はこの件をきっかけに私も改めて向き合うこととなった、“ダイバーシティ(多様性)”について考えてみたいと思います。
アメリカから始まったBLMの抗議活動は、ここイギリスでも多くの人が共感し、大きな抗議活動となりました。“Peaceful Protest(平和な抗議)”と呼ばれるデモンストレーションの行進や集会が行われた一方で、興奮をしてしまった一部の人々により、イギリスの奴隷貿易で財を成した著名人の銅像が倒されたり、落書きされたりする事件も。(奴隷貿易の詳細などは、ぜひ検索してみてください)
参照:BBCニュース「イギリスで人種差別に抗議続く、奴隷商人の銅像を引きずり下ろし」
そのような中イギリスでは、そう言った史実から目をそらさぬために、学校で黒人の歴史を教える組織「ブラック・カリキュラム(黒人教育課程)」が立ち上がりました。(「ブラック・カリキュラム」は現在、黒人史をイギリスの学校の必修科目にするよう、ギャヴィン・ウイリアムソン教育相に働きかけられています)なんでも、歴史的にはイギリスにはローマ時代から黒人が存在したとか、ヴィクトリア女王の祖先を辿るとアフリカ系の祖先がいるかもしれない、などなど……大人でも興味深い史実です。
参照:BBCニュース、「あなたが、そしてイギリス人も知らないかもしれないイギリスの黒人の歴史」
さて、お話を私視点に変えまして。
今、私が暮らすイギリスでは、当然ながら私自身が「ガイコクジン」であり、マイノリティ(少数派)です。そして私の娘はこれまた当然ながら、半分日本人・半分イギリス人の、ミックス。日本で呼ばれるところの「ハーフ」、です。いわばマジョリティ(大多数)の中におけるマイノリティになります。そしてマイノリティは、必然的に弱い立場に陥りやすい。これは民族の違いだけに限らず、例えば教室やオフィス、社会において遭遇するあらゆるシチュエーションでも言える事だと思います。
ちなみに英語には「ハーフ」なんて言う言葉は存在しません。英語で説明をするならば 「mixed=混合の」となりますので、 英語では「ハーフ」という表現自体が人種差別的に響きます。マイノリティとなる日本人の血が混ざった「ハーフ」たちは、多かれ少なかれ、何かしら差別的なジェスチャーや言葉、視線を受けて育つ事となります。我が家はいまだ未体験ですが「いずれあることだから、びっくりしないようにね」と色んなママ友から警告をいただいています。実際にイギリスに暮らし始めてから自分が好奇の視線にさらされた経験も何度かあり、このような未来が待っているからこそ、私にとって今回のBLMの抗議は全く他人事ではなく、より身近な問題としてズシンと心に響きました。
かねてから気になっていたこと、どのように教育して行けば良いか迷っていたことでしたが、メディアやSNSが集中的にこの問題について語っている今こそが好機と考え、様々なキーワードやハッシュタグを追って、勉強中です。
そんな中、今後のダイバーシティ教育のヒントにできそうな素材や絵本、ビデオを見つけましたので、こちらに紹介させていただきます。
1)色鉛筆・クレヨン
日本でも、クレヨンから「肌色」と言う名前の色が無くなって約20年。「肌色」と呼ばれ続けていた色は今「うすだいだい」などと呼ばれています。世界には様々な色の「肌色」があると言う視点から生まれた「肌色だけ」を集めた色鉛筆やクレヨンのセットが様々な国やメーカーから展開されています。例えばこちら。南アフリカで生まれた12色のクレヨン。
2)ビデオ
・CNN『エルモとエルモのお父さんの会話』
CNNが「セサミストリート」とコラボし、
参照:CNN 、Best moments from CNN and Sesame Street’s town hall on racism for kids and parents
子どもに伝えるにはまずは自分も学ばなくては、ということで、大人が見ても分かりやすく、考えさせられるきっかけとなりそうな動画がこちらの二つ。
・Jane Ellilott “Blue eyes/Brown eyes” experiment『青い目、茶色い目』
アメリカの教育者で反人種差別活動家のジェーン・エリオットが、1968年、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺された翌日に、当時受け持っていたクラスの子どもに課した有名なセッションです。
まだ幼い子ども達の関係性の中に社会の縮図がありありと構築されて行く様は、思わず息をのむほどリアルで胸の痛む、そして考えさせられる光景です。
・Jane Elliott “Being Black”『黒人であるということ』
おなじくジェーン・エリオットのスピーチ。瞬時に人種差別のシステムを理解する事のできる、強烈な30秒のスピーチです。これをみてドキリとしない人はいないはず。(少なくとも私はドキリ、と感じました)「“自分と違うから”と言う理由で酷い事をしてしまう社会を許してしまっていることが問題なのだ」という、根本的な問題点を指摘し続けているエリオット氏。この考え方は上下関係や友人関係……、人種差別だけではない様々な“人間関係”にも当てはまる考え方ではないでしょうか。ドキリと感じたら、改めよう、そして学びましょう。
3)絵本
『One Day So Many Ways』
Laula Hall/Loris Lora(Frances Lincoln Childrens Books)
翻訳すると「ある1日、たくさんの形(の過ごし方)」という感じでしょうか。これは娘の将来を想定して1年ほど前に買っておいた本なのですが、いまとても人気で書店で売り切れ続出。40カ国の異なる国の子ども達の1日、朝の目覚めから就寝までをページ毎に追って行くストーリーです。例えば朝目覚めるページでは、「日本、東京…6:30。弟のイシ君がベッドにいるハナコを起こしています。毎朝目覚まし時計を2つもセットし、お母さんの朝ご飯の支度を手伝います」「ブラジル、サンパウロ…アラミは、夏の間は外のポーチにあるコットンでできたハンモックの中で、兄弟と一緒に眠ります。アラミのベッドルームと言えば、商売道具である作物、これから売りに出す物を保存するために使われています」など。このような形で1日のシーンごとに、10前後の異なる国の例が、可愛らしい絵とともに説明されています。住まいの様子や着ている洋服の違いなどから、世界の国々ではこんなに習慣や環境が異なるのだ、そしてそれで良いのだ、と言う事を自然に楽しく学べる絵本です。
『MY HAIR』
Danielle Murrell Cox (YU House Book Publishing)
アフロヘアーの女の子の様々な髪型について描かれた、赤ちゃんとも楽しめそうな絵本。でもなんと、ふわふわの可愛いアフロヘアーの人に「さわっても良い?」と聞くのはちょっぴりタブーって、ご存知でしたか? この質問、実はとってもデリケート。ふわふわ気持ち良さそうなアフロヘアーは、ついつい触りたくなってしまう。けれど 「あなたの髪に触ってみても良い?」とは、アフロヘアーの人々が毎日の様に言われることながら、同時に最も控えて欲しい質問らしいのです……。(私も過去に、親しい友人には尋ねてしまった事があります)確かに、見ず知らずの人から突然そんな事を言われて髪に触れられるのはいい気分ではないですよね。そんなこともナチュラルに教えてくれる可愛い絵本。
絵本の内容に沿った可愛らしい歌の動画もみることができます。
『I Am Enough』
Grace Byers/Keturah A. Bobo
「ニューヨークタイムズ」紙の“誰もが買うべきベストセラー”にも選ばれた絵本。 詩のようにリズミカルで美しい英語で展開されるストーリーの中では、主人公の黒人の女の子が様々な国籍や境遇の友人と過ごす様子が描かれており、人生とは 、自分を愛するとは、他人を大切に思いやるとは何なのか……ということが語られています。本を紹介する動画も。
以上、人種差別やダイバーシティについて学ぼう、な回でした。
ここロンドンは人口の約三分の一がイギリス国外で生まれ、約270 カ国の人々、約300もの言語が存在する都市です。
人種のるつぼとも言える都市で成長して行く娘には、“違いがあること”は悪い事ではないのだと理解して欲しい。今から彼女の未来がとても楽しみです。
ではでは、また来月に。
TTFN!
シホ xxx