絵本で触れよう、STEAMの世界!【2歳〜向け絵本ガイド】
あの人の一冊。本から学ぶ10代のためのSTEAM教育 夏休み特別版、前編から続くこちらでは、2歳頃から楽しめるSTEAMの学びにつながる好奇心を刺激する絵本をセレクト。親子で一緒に楽しめるユニークな5冊をお届けします。生き物、形の不思議、物の見方、道具の使い方……さまざまな興味を誘う絵本をセレクトしました。親子の新しいコミュニケーションとして、学びのある絵本をぜひ取り入れてみてください。
『オセアノ号、海へ!』
パリ在住のアヌック・ボワロベール&ルイ・リゴーの2人による美しいしかけ絵本です。アヌックさんがイラストレーションを、ルイさんが紙のエンジニアとしてしかけを担当しているそう。世界の海へと旅立ったオセアノ号。見渡す限り続く青い海、氷山のある冷たい海、嵐の海、静かな海……船の上から眺めるだけでも、いろんな表情のある海ですが、その海の中はどうなっているのでしょう? ページを開くと、立ち上がるのは、海面に見立てたポップアップ。その紙の上下に、海の上と下の世界を表現しています。静かに見える海の下に、こんなに色鮮やかな魚たちがいたなんて! 冷たい氷の下に隠れているのはどんな生き物なんだろう。ページをめくるごとに、そこには特別な世界が広がり、読み手は思わず「おお!」と声をあげてしまいます。自然への賛歌と敬意を持ち、豊かな自然環境を守ることを伝えたいと願う2人だからこそ、描けた1冊です。重なり合う繊細で複雑ななしかけは、海の豊かな生態系をそのままに伝えてくれるよう(いろんな角度から見ると発見が!)。海の世界にある、さまざまなドラマをよーく観察しながら感じてみてください。
『まるのおうさま』
「かがくのとも」創刊50周年を記念して限定復刻された1冊です。もとは、1971年に月刊絵本として刊行されたものですが、今、読んでも斬新で、サイケデリックな色使いやグラフィックの大胆さに惹かれます。それもそのはず、手がけたのは、詩人の谷川俊太郎さんとグラフィックデザイナーの粟津潔さんという日本を代表するアーティストである2人。2人が追求するのは、「まる」という形です。お皿、シンバル、タイヤ。さらに、小さな真珠の粒や、枝に実ったオレンジまでも我こそが「まるのおうさまだ」と名乗りをあげます。さらに、まるいものと言えば……。子どもたちが、まず、最初に描けるようになるのが「まる」の形。まるって何だろう。どんなものが「まるのおうさま」なんだろう。それを考えて、「じぶんのまる」を描いてみる。そのきっかけになりそうです。
『こっぷ』
谷川俊太郎さんの名作絵本をもう1冊。こちらも「かがくのとも」から生まれた不朽のタイトル。透明なガラスのコップをさまざまな角度からみていく写真絵本です。コップは水をつかまえる。コップは煙もつかまえる。コップは蠅をつかまえるし、犯人もつかまえる。虹もつくれるし、歌も歌える。ときどきおしゃれもする。のこぎりで切ると……、急に熱くすると……、落とすと……。身近にあるコップについて、いろんなことを考えさせてくれます。小さいころは、写真を眺めるだけでも楽しく、少し大きくなってからは科学的にも読める1冊。コップに入った水に映る少年の顔を撮影した表紙も愛らしく、子どもたちの興味をそそります。
『いろいろ いっぱい ちきゅうの さまざまな いきもの』
ケンブリッジ大学で動物学を学び、野生動物の研究を行うニコラ・デイビスさんによる地球にいる数え切れないほどの生き物についての絵本。愛らしい生き物の絵を描いたのは『人形の家にすんでいたネズミ一家のおはなし』など繊細な動物画が人気のイラストレーター、エミリー・サットンさんによるもの。目に見えない微生物から、大きなゾウまで登場します。砂漠にも、海の中にも、ジャングルにも、生き物は、複雑にからみあいながら暮らしています。まずはその、多様な生き物の世界を楽しんで。数え切れない生き物たち、もちろん、その中には人間も数えられています。しかし、人間の行いによって、動物や植物がいなくなってしまうこともある……。この絵本には、絶滅種(地球からいなくなった生き物たち)も紹介します。同じ地球に暮らす生き物同士、どう向きあっていくべきかまで思いを馳せます。
『たのしい どうぐばこ』
さあ、のこぎりで板を切ってみて、ドライバーでねじをくるくるくる、スパナでボルトをギューっとしめてみよう! 子どもたちの憧れのいろんな道具、全部で7種類を絵本から取り出して遊べる楽しい、しかけ絵本。道具はすべて厚紙製なので、ケガをする心配もなし。自由に、好きなように、道具を持たせてあげられます。作者は、アメリカのアーティストで絵本作家のステファン・T・ジョンソンさん。さらに、道具についての記述は、スウェーデンで木工を学び、自身も工芸家として活動をする秋田大学教授の遠藤敏明さんが監修し、道具について正しい知識を得られます。道具の名前や使い方を知るだけでなく「3つのあな」「4ほんのねじ」「5ほんのボルト」などページを開くごとに使う道具の数が変わります。一緒に読みながら、何本あるかな? と、ねじをしめたり、かなづちを打てば、数を数える勉強にも。手先を動かすことで興味を持って絵本の世界に没頭できそうです。
物語や図鑑、インタラクティブな仕掛け絵本まで多様性に溢れた年中~小学生向けの5冊もチェック。