そんなふう 34
昨年千葉に引っ越してから普段の生活の平均週2日くらい都内滞在という割合になったことで、東京の良さを再確認することができたのは引っ越してよかったことのひとつだ。
長年東京に暮らしていたことで、いつのまにか当たり前になっていたことが、有り難く思える。例えばいま住んでいる場所には車で10分くらいのところにスーパーがあるので、そこである程度のものは手に入るのだが、自分の好きなメーカーの調味料や食材は売っていないし、おいしいコーヒー豆が買える店も、パン屋さんも離れた場所にしかない。ドラッグストアもないので、まとめて必要なものを買って帰ったりもする。そして美術館やギャラリーもないし、図書館さえないので、文化に触れる機会も都内でまとめてつくる。少ない時間のなかで、まとめて仕事の撮影や打ち合わせを済ませ、友人に会う時間を調整しながら、合間に都内でしかできない雑用、(銀行で振込をしたり、買い物やギャラリー巡りなど)もすませる。すべて予定通りにでき、帰途の車のなかで家族が待つ家に帰る時間はいままでに感じたことのない種類の幸福感だ。短い時間内でパズルみたいにスケジュールを組んで、それを成し終えたときの小さな達成感と、1日とはいえ離れた家族に会える喜び。都会から遠ざかって車窓の景色が徐々に緑が多くなってくると家が近づいてきたことを実感する。忙しない頭の中が緑を見ることでクールダウンされ、ほっとしながらそんな思いを毎回噛みしめるのだ。