DATE 2020.02.25

そんなふう 62

自宅のリビングの窓は他の部屋のものと比べると随分大きい。見晴らしがいいけど鳥が窓に気づかずにぶつかってしまうことがある。先日も窓の下に倒れている小鳥を夫が見つけた。触るとまだほんのりと温かく、柔らかかった。夕方、保育所から帰ってきた娘に見せると、動かない鳥を見てどうしたの?と最初は状況がよくわからないようだった。しばらくして、死んじゃったんだね、とつぶやいてから突然大声で泣き出した。死に触れて号泣したのは初めてのことで驚いた。

半年前、義父が息をひきとった時にも一緒にいたのだが、その時はただ怖がっただけだったし、その翌日も死んじゃったんだね、と棺の中を覗き込んだりしたが哀しむ様子はなく、泣いたりもしなかった。まだ死の意味を理解していなかったようだった。

 

なかなか泣き止まなかったので、明日土に埋めてお墓をつくってあげようね、と言ったら少し落ち着いた。

翌日、引っ越してすぐに植えた沈丁花の木のたもとに穴を堀り、娘と一緒に鳥を蕗の葉にくるんで花を添えて埋めた。特に促したわけではないけれど、土をかけ終わったあとに手を合わせていた。墓参りの度に拝んでいたことを思い出したのだろう。ひととおり終え、納得したような表情になった娘はリビングに戻って何事もなかったようにテレビを見始めた。

娘にとっては見知らぬ小鳥だったので立ち直りも早かったが、長い間時間を共に過ごした家族や友人ではなかなか難しいことだ。

それでも弔いをすることで残された側は少しずつ日常に戻っていけるのだったなと、過去に参列した葬式のことなど思い出した。

BACKNUMBER 川内倫子 そんなふう
バックナンバー

LATEST POST 最新記事

第1回:多様な生き方、暮らし方
ARTICLES
第1回:多様な生き方、暮らし方

閃いたのは、新しいクリエイティブのヒント? それとも週末のパーティのアイデア?……ホームオフィスを舞台に、生き生きと働くこの女性。実は『Fasu』のファミリーを想定しながら最新のテクノロジーによって生み出されたデジタルヒューマンです。揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事に家事に家族とのクリエイティブな毎日を楽しむ『Fasu』的な暮らしを送る母親像をあらゆる面からキャラクタライズして生まれたこの女性は、私たちが生きる、ほんのちょっと先の未来を想定して生み出されました。 コロナ禍をはじめ、混乱する社会情勢、テクノロジーの急激な進化と未知の世界を歩む私たちですが、このデジタルヒューマンが暮らすちょっと先の未来では、果たして私たちは、どのような家族のかたちを求めて、どのように暮らしているのでしょうか。そんな未来の家族のあり方を、グローバルイノベーションデザインスタジオ「Takram」でデザイン、アート、サイエンスほか多岐の分野に亘ってデザインエンジニアを務める緒方壽人さんに3回にわたってお話を伺います。第1回目である今回は、家族での長野県・御代田への移住と、10年来続けてきたというオルタネティヴな暮らし方にいて訊ねました。 これからの人間とテクノロジーのあり方や共生を探る『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』(BNN刊)。その著者でもある緒方壽人さんは、この本の中で、「ちょうどいいバランス」を探すことの大切さについて触れています。 「暮らし方や家族のあり方は多様で、未来に何かひとつの理想形があるとは思いません。ですから今日お話しできることは、僕自身の家族のことや、これまでの経験から考えていることでしかないのですが……」 そう前置きしながら、控えめに、ゆっくりと話し始めた緒方さん。その穏やかな様子は、移住先である御代田の空気をそのまままとっているかのようでした。   〜〜 中略 〜〜 WHAT’S DIGITAL HUMAN? 揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事、家事、そして家族とクリエイティブな毎日を楽しむ女性。本記事トップビジュアルとして登場したこのモデルは、先述のように『Fasu』ファミリーの母親像を、顔立ち、ヘアスタイル、メイクアップ、スタイリング、さらにはライフスタイルに至るまであらゆる角度とディテールからキャラクタライズし、生み出されたデジタルヒューマンです。 最新鋭のテクノロジーを用いて生み出されたこのデジタルヒューマンは、東映デジタルセンター「ツークン研究所」、及び『Fasu』を擁する私たちアマナにより「企業広告や、ファッションカタログ、またメディアにおけるモデル使用における様々な課題解決」を目的として開発されました。 このバーチャルモデルを用いることで得られるメリットは1. 人種、人選、肖像権問題にまつわるリスク回避 2.使用期限や版権の制限フリー 3.リモートによる発注から納品 4.インナーブランドの統一化 5.CGによる表現可能領域の拡大……ほか多数。コミュニケーション及びコスト、クオリティなど、モデル使用のあらゆるフェーズで生じるデメリットをミニマムにし、モデル表現の可能性を大きく広げていきます。 デジタルヒューマンが描き出す、新しいモデルのあり方と可能性、そして未来にご期待ください。 問い合わせ先:

2022.11.17
エルゴベビーの抱っこひも「ADAPT」がリニューアル発売。アップデートした機能を解説
動物園、博物館、美術館…。9つの施設でシームレスにクリエイティブな体験ができる「Museum Start あいうえの」とは
圧倒的な高級感で魅了。黒川鞄工房の「シボ牛革」ランドセルシリーズに新色が登場【2023年ラン活NEWS】