DATE 2019.09.05

そんなふう 55

20年ぶりにアイスランドへ行った。ずっともう一度行きたい、と思っていたのにその機会がなく、自分で計画もしなかった。でも着いてから、やっぱり来たかったんだと気がついた。普段自分が住む場所から遠く離れたこの土地で、地球に住んでいることを実感できたこと、他の場所では見えない光があることを思い出した。
出産後、海外には娘もすでに何カ国か連れていっているが、今回は毎日長距離を移動しなければならないため、子連れで順調にすべての行程を終えられるか心配だった。細かく撮影場所が分かれていて、短い日程の中に撮影ポイントがいくつも散らばっていた。慣れない土地をレンタカーで移動するのも不安要素だったこともあり、スムーズにすべての撮影場所を回るために、母にも来てもらうことにして、家族で撮影旅行となった。
雨の中、滝の裏側を歩いたり、氷河のトンネルを巡るツアーに行ったりしたが、視界が悪く、足場も不安定な場所が多かった。それでも家族の協力のもと、娘もほぼすべての行程についてきてくれた。一箇所だけ同行できず、母と滞在先のアパートで留守番してもらった日がある。撮影旅行の初日、火山口の内部を見学するツアーに参加したのだが、12歳以下は参加できないのであきらめたのだ。行ってから納得したけれど、とても3歳の子連れでは無理だった。1時間近くトレッキングしたのち、数名しか乗れないゴンドラで約200メートル下の火口の底に降りていく。自分は高所恐怖症なので最初は下が怖くて見られなかったが、撮影が始まると集中するせいか、恐怖心はなくなった。内部は薄暗くて岩だらけで歩きづらい。岩肌は、ヘルメットにつけたヘッドライトだけでは暗くてよく見えないが、シャッターを押してストロボの強い光を当てると、いくつもの層がはっきりと見え、それぞれの色が重なり合う様に、人間の持つ時間よりももっと長い時間がそこに見えたような気がして、世界の始まりに思いを馳せた。上を見上げると入り口が女性器の形に似ていることに気がついた。まるで地球の胎内にいるような気持ちになり、自分の身体も大自然の一部に溶け込んだように感じた。しばらくの間無心で撮影したが、すぐにゴンドラに乗る時間となった。もっと撮影したかったな、と後ろ髪引かれる思いで来た道を戻る。帰りのバスの中でデジカメの画面で撮影した写真を確認し終わると、いくつか撮れていると感じた画像があり、ほっとした。すると途端に娘は母と二人だけで大丈夫だったかな、と気になった。もしもなにかあったら、と思うとそわそわと落ち着かない気持ちになり、つい先ほどの後ろ髪引かれる思いが反転し、すぐにでも二人がいるはずのアパートに帰り着きたくなった。以前は撮影が終わってもそのモードからすぐには抜け出せず、高揚感と緊張感が抜けなかったのだが、娘のことを思い出した途端にそこからぱっと切り離され、自分が親になる感覚が不思議だった。そんな気づきがあったのは、本格的に作品撮影したのが出産後初めてだったからかもしれない。

BACKNUMBER 川内倫子 そんなふう
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第1回:多様な生き方、暮らし方
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第1回:多様な生き方、暮らし方

閃いたのは、新しいクリエイティブのヒント? それとも週末のパーティのアイデア?……ホームオフィスを舞台に、生き生きと働くこの女性。実は『Fasu』のファミリーを想定しながら最新のテクノロジーによって生み出されたデジタルヒューマンです。揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事に家事に家族とのクリエイティブな毎日を楽しむ『Fasu』的な暮らしを送る母親像をあらゆる面からキャラクタライズして生まれたこの女性は、私たちが生きる、ほんのちょっと先の未来を想定して生み出されました。 コロナ禍をはじめ、混乱する社会情勢、テクノロジーの急激な進化と未知の世界を歩む私たちですが、このデジタルヒューマンが暮らすちょっと先の未来では、果たして私たちは、どのような家族のかたちを求めて、どのように暮らしているのでしょうか。そんな未来の家族のあり方を、グローバルイノベーションデザインスタジオ「Takram」でデザイン、アート、サイエンスほか多岐の分野に亘ってデザインエンジニアを務める緒方壽人さんに3回にわたってお話を伺います。第1回目である今回は、家族での長野県・御代田への移住と、10年来続けてきたというオルタネティヴな暮らし方にいて訊ねました。 これからの人間とテクノロジーのあり方や共生を探る『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』(BNN刊)。その著者でもある緒方壽人さんは、この本の中で、「ちょうどいいバランス」を探すことの大切さについて触れています。 「暮らし方や家族のあり方は多様で、未来に何かひとつの理想形があるとは思いません。ですから今日お話しできることは、僕自身の家族のことや、これまでの経験から考えていることでしかないのですが……」 そう前置きしながら、控えめに、ゆっくりと話し始めた緒方さん。その穏やかな様子は、移住先である御代田の空気をそのまままとっているかのようでした。   〜〜 中略 〜〜 WHAT’S DIGITAL HUMAN? 揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事、家事、そして家族とクリエイティブな毎日を楽しむ女性。本記事トップビジュアルとして登場したこのモデルは、先述のように『Fasu』ファミリーの母親像を、顔立ち、ヘアスタイル、メイクアップ、スタイリング、さらにはライフスタイルに至るまであらゆる角度とディテールからキャラクタライズし、生み出されたデジタルヒューマンです。 最新鋭のテクノロジーを用いて生み出されたこのデジタルヒューマンは、東映デジタルセンター「ツークン研究所」、及び『Fasu』を擁する私たちアマナにより「企業広告や、ファッションカタログ、またメディアにおけるモデル使用における様々な課題解決」を目的として開発されました。 このバーチャルモデルを用いることで得られるメリットは1. 人種、人選、肖像権問題にまつわるリスク回避 2.使用期限や版権の制限フリー 3.リモートによる発注から納品 4.インナーブランドの統一化 5.CGによる表現可能領域の拡大……ほか多数。コミュニケーション及びコスト、クオリティなど、モデル使用のあらゆるフェーズで生じるデメリットをミニマムにし、モデル表現の可能性を大きく広げていきます。 デジタルヒューマンが描き出す、新しいモデルのあり方と可能性、そして未来にご期待ください。 問い合わせ先:

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