DATE 2018.11.01

そんなふう 40

先日、昔10年くらい住んでいた街の花火大会を観に行った。毎年夏に開催されていたのだが、台風や大雨などの天候不順が続くことが予想され、今年から秋に開催されることになったらしい。昔住んでいた自分のマンションの目の前は特等席で良く見える場所だったので、毎年早朝からひとりで場所取りをして、山盛りの料理をつくって、友人たちと花火を見ることが恒例だった。終わった頃にはへろへろで、床に転がって眠るのがいつものことだった。引越してからは同じ街に住む友人宅の家から花火を見るようになり、出張などがない限りはいつも参加していた。通算すると15年くらいは続けて観ていたのだけど、今年は娘と観るのは初めてのことになった。どんな顔をするのか期待していたけど、驚いた様子でポカンとしばらく眺めてから、怖がって自分の後ろに隠れてしまった。時々足のあいだから覗いては、こわい、こわいと言う。きれいでしょ?と言ってもおびえてしまい、家のなかに入ってしまった。まだ一緒にきれいだね、と言うには早かったなあ、たしかに2歳児には怖いのかもしれない、、と思いながら、娘は夫にまかせて花火の撮影をすることにした。過去に数え切れないほどに撮影しているから、半分飽きている自分がいるのを感じつつ、それでもカメラを構える。1時間きっかりで終わることを知っているから、最後の10分くらいに集中しようと準備した。この花火大会のクライマックスがいつも連発で打ち上げるのが見応えがあるのだった。そして期待通りに今年もすごい迫力だった。2分近く打ち上げ花火が途切れずに連続して上がり、それを観ている途中に胸に迫ってくるものがあり、最後の打ち上げ花火が終わってからは涙がとまらなかった。いままでたくさんの花火を観ているのにそんなことは初めてで、自分でもなぜだかよくわからなかった。娘と見るのが初めての打ち上げ花火だったからなのかな、と思ったけど、そうではなかった。あの街で過ごした10年分の自分のいろいろが、花火と一緒に打ち上がって、昇華されたように感じたのだ、とあとになって気がついた。

 

 

 

BACKNUMBER 川内倫子 そんなふう
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第1回:多様な生き方、暮らし方
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第1回:多様な生き方、暮らし方

閃いたのは、新しいクリエイティブのヒント? それとも週末のパーティのアイデア?……ホームオフィスを舞台に、生き生きと働くこの女性。実は『Fasu』のファミリーを想定しながら最新のテクノロジーによって生み出されたデジタルヒューマンです。揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事に家事に家族とのクリエイティブな毎日を楽しむ『Fasu』的な暮らしを送る母親像をあらゆる面からキャラクタライズして生まれたこの女性は、私たちが生きる、ほんのちょっと先の未来を想定して生み出されました。 コロナ禍をはじめ、混乱する社会情勢、テクノロジーの急激な進化と未知の世界を歩む私たちですが、このデジタルヒューマンが暮らすちょっと先の未来では、果たして私たちは、どのような家族のかたちを求めて、どのように暮らしているのでしょうか。そんな未来の家族のあり方を、グローバルイノベーションデザインスタジオ「Takram」でデザイン、アート、サイエンスほか多岐の分野に亘ってデザインエンジニアを務める緒方壽人さんに3回にわたってお話を伺います。第1回目である今回は、家族での長野県・御代田への移住と、10年来続けてきたというオルタネティヴな暮らし方にいて訊ねました。 これからの人間とテクノロジーのあり方や共生を探る『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』(BNN刊)。その著者でもある緒方壽人さんは、この本の中で、「ちょうどいいバランス」を探すことの大切さについて触れています。 「暮らし方や家族のあり方は多様で、未来に何かひとつの理想形があるとは思いません。ですから今日お話しできることは、僕自身の家族のことや、これまでの経験から考えていることでしかないのですが……」 そう前置きしながら、控えめに、ゆっくりと話し始めた緒方さん。その穏やかな様子は、移住先である御代田の空気をそのまままとっているかのようでした。   〜〜 中略 〜〜 WHAT’S DIGITAL HUMAN? 揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事、家事、そして家族とクリエイティブな毎日を楽しむ女性。本記事トップビジュアルとして登場したこのモデルは、先述のように『Fasu』ファミリーの母親像を、顔立ち、ヘアスタイル、メイクアップ、スタイリング、さらにはライフスタイルに至るまであらゆる角度とディテールからキャラクタライズし、生み出されたデジタルヒューマンです。 最新鋭のテクノロジーを用いて生み出されたこのデジタルヒューマンは、東映デジタルセンター「ツークン研究所」、及び『Fasu』を擁する私たちアマナにより「企業広告や、ファッションカタログ、またメディアにおけるモデル使用における様々な課題解決」を目的として開発されました。 このバーチャルモデルを用いることで得られるメリットは1. 人種、人選、肖像権問題にまつわるリスク回避 2.使用期限や版権の制限フリー 3.リモートによる発注から納品 4.インナーブランドの統一化 5.CGによる表現可能領域の拡大……ほか多数。コミュニケーション及びコスト、クオリティなど、モデル使用のあらゆるフェーズで生じるデメリットをミニマムにし、モデル表現の可能性を大きく広げていきます。 デジタルヒューマンが描き出す、新しいモデルのあり方と可能性、そして未来にご期待ください。 問い合わせ先:

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