そんなふう 30
10年くらいまえに見た夢で、ある景色を見て以来、熊本は特別な場所になった。
夢で見た場所が当初はどこかわからなかったのだが、同じ景色が熊本の阿蘇に実在していると知ったときは、なにかのお告げのように感じ、すぐに行ってみることにした。実際に行ってみると自分にとって必要な場所だとわかった。そこに行くと神社にお参りしたあとみたいに清々しい気持ちになり、リフレッシュできるのだった。以来数年間作品制作のために通い続けたのだが、その企画も終わって熊本に通う理由がなくなりそうになると、とても寂しい気持ちになった。友達もできたし、ずっとこの場所に通いたいと思ったのだ。すると思いが通じたのか、ほかの仕事ができたり、新しい企画が始まったりと、縁が続き、ついには数年前に天草出身の人と出会って結婚したので、いま定期的に里帰りを理由に熊本に行けるようになった。夢から始まった縁がつながっていくことの不思議は必然だったのかと、熊本に行くたびに思い、このままずっとこの縁が途切れないことを願うのだ。