そんなふう 21
引っ越しの片付けも終わらないまま、海外、国内出張が続き、あっという間に日々が過ぎた今年の秋。ようやく落ち着いて新居の片付けにとりかかれるようになった。作業しながら窓の外に目を向けるといくつかの木々が紅葉していて、ふと見るたびに人心地がついた。
近所にも紅葉ロードという場所があると聞き、日曜に行って見た。晴天のなか、見物客で賑わっていて、あちこちに停車した車がある。自分たちもそれに倣ってひとしきり赤く染まった木々に反射する光を眺め、楽しんだ。この季節だけだよなあと思いながら見ていると、1歳半の子供と紅葉の組み合わせもいまだけだ、と気がつき、つい多めに写真を撮ってしまった。
数日後、東京に行くと事務所の近くの公園の紅葉も見事だった。そしてここでもまた、いまだけだ……という焦りのようなものに追い立てられ、写真を撮る自分。よく考えると写真を始めた当初も同じようにいまだけだ……と焦っていた。
というか、ずっといままでそうだったじゃないか、と、はたと気がついた。この感覚は産前の自分だ、自分に戻ったのだ。
妊娠から授乳終了までのあいだはやっぱりなにか見えないバリアのようなもので自分を守っていたのかもしれない。引っ越しのドタバタの最中にいつのまにか卒乳できていたというのもあって気がついていなかったのだが、いろいろなことが一区切りして、いつのまにか自分に戻っていたことに紅葉のタイミングで気がついたのだ。子供がお腹にいた時間が終わり、授乳で半分繋がっていた日々も過ぎてしまったことは少し寂しくもあるが、また自分だけに戻って働ける喜びも思い出し、気が引き締まるのだった。