DATE 2019.07.02

自分たちのペースで自分たちの暮らしを作る、‟DIY”子育て|それぞれ違う家族のかたち Vol.1

人が多様ならその分だけ家族も多様です。これが正解という家族のかたちがあるわけではありません。ルールで縛ったり、社会に頼ったりするよりも、自分たちでいい環境を作ることが大事。フリーランスのグラフィックデザイナーとして働く、ジェリーさん一家の家族のかたち。

家族三人で3年間ずっと一緒に過ごすこと

働き方の多様化とは別に、そもそも自由に自分の働き方を決めるフリーランスという働き方がある。会社や組織に所属せず、内容もペースも場所も自分で決めて仕事をする。相手があっての仕事である以上すべてが自分の思うままではないとしても、その人と仕事をしたいと思わせる個性や特徴があることで仕事が成立する。

 

夫のジェリーさんはグラフィックデザインをはじめ、イラストレーションやアウトドアグッズのデザイン、本の執筆までを多彩に手がけている。妻の潤子さんはイラストレーターで、結婚する前はパリで暮らしていた。潤子さんは出産を機に仕事を一時的にお休みしているが、ジェリーさんは自宅を仕事場にして仕事をしている。娘の六花ちゃんは保育園に預けず、在宅仕事の両親がいる自宅で一緒に過ごしているという。

鵜飼家_ポートレート
ジェリー鵜飼(47) グラフィックデザイナー/イラストレーター
鵜飼潤子(40) イラストレーター
鵜飼六花(3)

「せっかく自宅が仕事場という環境なので、家族が揃っているなら幼稚園という社会に出るまでの3年間は、預けずに成長を見ていたかったんです。仕事に集中できないというつらさはありつつも恵まれたことだと思います。4月からは幼稚園ですが、日々の成長のすべてを見届けられたことはありがたい。お父さんが帰ると子どもはもう寝ていて、土日しか起きている時間を一緒に過ごせないというような話を聞くと、このやり方でよかったなと思います」

 

それぞれの両親に来てもらうこともほとんどなく、シッターさんなどもお願いしたことはないという。本当にずっと三人だけ。今年の1月に映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観に行ったのが、産後初めての二人だけで外出だったそうだ。「自分の時間があったらもちろん嬉しいけど、子どもをずっと見ていられる時間の方が短いし、貴重」だと、ジェリーさんはサラリと話してくれた。

自分たちのペースで自分たちの暮らしを作る

子どもが生まれても、お互いほとんど変わっていないとふたりは思っている。変えないようにしているわけでも、変わりたくないと頑なになっているわけでもなく、
「家族になったという感覚はすごくあるんですが、変えるのが苦手というか、父親らしく、母親らしくみたいなことを特別に意識しないままで来ました。子育ての生活指導で言われる、早寝早起きのサイクルを作ってくださいということも全然できていない(笑)。夜に仕事をするので寝るのが遅いんですが、娘も遅くまで起きていることがよくあります」
「ルールを作るのが好きじゃない」と潤子さんが言うように、鵜飼家の家事や育児はできる人ができることをやるスタイル。子どもが仕事の邪魔をしてくることもしょっちゅうだが、そういう時は諦めて一緒に遊ぶそうだ。
「もちろんイラッとすることもあります。そういう時はもうひとりがケアをする。それが家族揃って見 続けてきたメリットでもあります」。

お互いの様子を見ながら察して、補い合うこと。外に頼る前に内側を充実させていくやり方は、自分たちがその場その場で柔軟に対応してきた結果だろう。「社会に期待して頼るよりも、自分たちでいい環境を作ることが大事だと思った」 というジェリーさんの言葉に表れている。
「人のアドバイスはあまり参考にせず、笑いながらどうにかなるだろうという生き方をしてきました。毎日すごく楽しくて、あっという間の3年間でした」

 

自分たちで自分たちの居場所を作ることや自分の力で生きていくという考えは、ジェリーさんの自然やアウトドア好きともつながっており、鵜飼さんの家も自然に囲まれている。

 

「庭がジャングルみたいになっています。娘は虫も嫌がらずに入っていきますよ。自然に触れながら育ってほしいと思っていて、1歳の頃は週2で登山に連れていっていました。高尾の周辺など、クルマで行ってお昼すぎに帰ってこれるような山ばかりでしたが。最近でも月1くらいでは行っています」。

 

六花ちゃんを山で歩かせると、転びそうな場所や滑りそうなシチュエーションがたくさんある。でも彼女は自分の頭か本能か、上手に歩くらしい。
「危ないよと危険を先に排除し過ぎないことで、脳みそがフル回転しているみたいです。もちろん本当に危ないことはさせませんよ(笑)」

歯はないけれど入れ墨はある父親

ジェリーさんは昨年まで前歯が3本なかった。元々入れていた差し歯が取れてから、子どもが2歳なるまでの数年間、歯を入れずにいたそうだ。ただ、前歯のないおじさんが子どもを公園に連れていくと、周りが一気に引くらしい。しかもアヒルやシンプソンズのようなかわいい絵とはいえタトゥーが入っている。危機感を覚えたジェリーさんは歯を入れた。

 

「先ほど社会に頼らず、自分たちで場所を作ると言いましたけど、歯もなくて、入れ墨もたくさん入っているわけで、そもそも社会に助けてもらいたい気持ちのなさが見た目にも表れてましたね(笑)」。
本来はどんな外見であれ助けを求めて差し出された手には、誰かが手を差し伸べなくてはいけない。でも、鵜飼家はそれも必要ないほどに、自分たちの生き方を自分たちで作っている。

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