DATE 2021.11.26

入試なし、成績表なし、全寮制。北欧が産んだ教育機関「フォルケホイスコーレ」って知ってる?【北欧留学体験記】

今、デンマークを中心に北欧全土に広がる全寮制の教育機関「フォルケホイスコーレ」への留学が注目を集めている。今回その実態に迫るべく、日本で英語教師として働き、北欧の豊かな教育に魅せられフォルケ留学をしたというMAIKOさんの体験記を前後編で紹介。

海外留学=アメリカなの?

 

海外留学というと、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどの大学進学や語学留学をイメージする人は多いだろう。

有名大学の学位や英語習得を目的とした留学はいつの時代も人気だが、果たしてそれだけが、留学の正解なのだろうか?

 

今回新しい留学の形として紹介したいのは、デンマークを中心に、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーなどにも広まる、北欧独自の教育機関「フォルケホイスコーレ(以下、フォルケ)」への留学だ。

入学試験なし、成績もなし。デンマーク生まれの教育機関フォルケホイスコーレとは

 

フォルケとは、デンマーク人のN.F.S.グルントヴィ氏が「誰もが平等に教育を受ける権利を」という民主主義の理念を掲げ、その考えの元、同じくデンマーク人のクリステン・コル氏が、全寮制の寄宿学校として創始した教育システムのこと。

その特徴としては、

・18歳以上であれば年齢制限なしで誰もが入学できる(高校卒業後、17歳で入学できるケースも有り)

・入学試験がない

・定期試験や成績付けがない

・ディスカッション形式の授業を主とする

・先生と生徒、施設スタッフが全員で学校で共同生活を送る

といったことが挙げられる。

 

入学する生徒は国籍に問わず、誰もが国からの助成金を受けることができ、学費を払うだけで学校生活を送ることができるのも大きな特徴だろう。この学費には、生活にかかる家賃、光熱費、食費なども全てインクルードされている。

 

実は170年以上の古い歴史を持ち、デンマークだけでも約70校存在するフォルケだが、アート、政治、音楽、政治、スポーツ、食など、各校ごとに得意とする学問があり、生徒は自分の興味のある分野の学校へ行くことが可能だ。

 

ここまでの説明だけでも、従来の留学スタイルとは全く違うものであることが分かるフォルケ。

今回Fasuでは、その実態をもっと知るために、実際にデンマークへフォルケ留学をしたMAIKOさんに話を伺った。留学前には、私立の幼・小一貫校で英語教師として働いていた彼女。かねてより北欧の豊かな教育の価値観に興味を持ち、その憧れから留学を決意したという。

そんな現役の教育者でもある彼女を魅了した、北欧の教育のあり方とは?そして、実際に現地に行って感じた、フォルケの魅力、そして日本の教育との違いとは?

学生時代から憧れた、北欧の豊かな幼児教育

私がデンマークのフォルケへ留学したのは、2019年〜2020年の時。それまで働いていた私立の幼稚園・小学校を辞めて留学をしました。なぜデンマークへ?とよく聞かれますが、もともと大学時代に保育の授業で北欧の教育について学び、その豊かな価値観に憧れを抱いていたから。北欧では幼児期から、アウトドア教育、つまり自然のなかで子供の感性を磨く教育を行うのが大きな特徴。さらに、日本の幼児教育はみんなが100を目指せるように、みんなで同じことをして頑張るという教育スタイルですが、北欧では対話型を軸に、その子が何が得意で、何を考えているのか。“子どもが自分自身と対話すること”を大切に、その子に合わせた教育を行います。

 

日本では、良い大学に進学することが教育のゴールとされ、残念ながら幼児教育は「子守」といったお粗末な捉え方をされることも……。だからこそ、その子の個性を重んじながら一人ひとりに手厚く向き合い、豊かな幼児教育に力を注ぐ北欧に、漠然とした憧れを抱いていました。社会保障制度が充実しており、幸福度が高いということも聞いていたので、「なぜそういった価値観が国の中で生まれるのか?」「北欧の人たちは一体どんな暮らしをしているのか?」と次第に興味が高まり、そんな折、教職現場の先輩から偶然教えてもらった「フォルケホイスコーレ」に運命を感じ留学を決意しました。

海や森があり自然が豊かなだけでなく、市街地にも突然巨大な遊具が現れるデンマーク。社会全体で子供を育てるというムードが伝わります
海や森があり自然が豊かなだけでなく、市街地にも突然巨大な遊具が現れるデンマーク。社会全体で子供を育てるというムードが伝わります

フォルケ留学のために日本でしなくてはならないこと

北欧留学を考えた時、過去に北欧へ旅行に行ったことがあったものの、デンマークには行ったことがなかったこと。そしてデンマークは第二言語として英語が発達しており、今では日本でも広まっている「森の幼稚園」の発祥の地でもあるということから興味を持ち、行き先をデンマークに決定。アメリカやイギリス、オーストラリア、カナダなどへの留学とは違い、フォルケ留学の情報は日本ではそこまで広まっていないので、まずは情報収拾からスタートしました。

 

留学前にやらなければいけないのは、たくさんあるフォルケの中から自分が行きたい学校を選ぶこと入学書類の準備、そしてVISA申請の大きく3つです。

 

まず学校選びですが、フォルケ留学を希望する日本人の多くが、日本で一番大きなフォルケの情報サイト「IFAS」で学校リサーチをします。IFASには各国のフォルケ情報が載っているので、自分は何を学びたいのかを念頭に、各校にどんなコースがあるのか調べます。ちなみに私は、海外の教育システムについては将来現地の大学でより専門的に学んでみたいという想いがあったので、フォルケでは教育を専攻せず、元々個人的に関心の高かった「SDGs」を学べるコースのある学校に狙いを定めました。
次に入学書類の準備ですが、フォルケは入学試験がありません。学校にもよりますが、ほとんどがプロフィール書類や志望動機書だけで入学の審査を実施。ちなみに留学生はこの書類を英語で作成するのが基本です。
最後のVISAの申請も同様に、英語で行います。

 

デンマークは第二言語として英語が発達しており、多くの国民が英語を話せるので、フォルケの授業も英語で進めるコースが多数あります。特に留学生の多いフォルケだと英語メインのコースは多く授業もディスカッション形式なので、求められる英語レベルは必然的に高くなります。
入学書類の作成やVISA申請に関しても、業者に代行することもできますが、むしろこの書類を自分の英語力で作れるくらいの人でないと、実際に通い出した時に苦労することに……。本人が「この悔しさをバネに上達しよう!」と思えるタイプなら良いですが、英語が壁となり挫折してしまう留学生も中にはいるので、ある程度英語レベルを上げて留学した方が安心だと思います。

 

ちなみにフォルケのVISAの種類は、学生ビザかワーホリビザ。学生ビザの場合はフォルケだけがメイン。ワーホリビザの場合は、フォルケのコースが終わった後に現地で働くことができます。私はフォルケだけがメインではなく、現地で働きたいと思っていたのでワーホリビザで行きました。

デンマークは、街中どこへ行っても、若者にも高齢者にも英語が伝わる国
デンマークは、街中どこへ行っても、若者にも高齢者にも英語が伝わる国

 

>>次回、いよいよフォルケ留学へ!その実態と魅力とは?【留学体験記:後編】も近日公開予定

LATEST POST 最新記事

第1回:多様な生き方、暮らし方
ARTICLES
第1回:多様な生き方、暮らし方

閃いたのは、新しいクリエイティブのヒント? それとも週末のパーティのアイデア?……ホームオフィスを舞台に、生き生きと働くこの女性。実は『Fasu』のファミリーを想定しながら最新のテクノロジーによって生み出されたデジタルヒューマンです。揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事に家事に家族とのクリエイティブな毎日を楽しむ『Fasu』的な暮らしを送る母親像をあらゆる面からキャラクタライズして生まれたこの女性は、私たちが生きる、ほんのちょっと先の未来を想定して生み出されました。 コロナ禍をはじめ、混乱する社会情勢、テクノロジーの急激な進化と未知の世界を歩む私たちですが、このデジタルヒューマンが暮らすちょっと先の未来では、果たして私たちは、どのような家族のかたちを求めて、どのように暮らしているのでしょうか。そんな未来の家族のあり方を、グローバルイノベーションデザインスタジオ「Takram」でデザイン、アート、サイエンスほか多岐の分野に亘ってデザインエンジニアを務める緒方壽人さんに3回にわたってお話を伺います。第1回目である今回は、家族での長野県・御代田への移住と、10年来続けてきたというオルタネティヴな暮らし方にいて訊ねました。 これからの人間とテクノロジーのあり方や共生を探る『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』(BNN刊)。その著者でもある緒方壽人さんは、この本の中で、「ちょうどいいバランス」を探すことの大切さについて触れています。 「暮らし方や家族のあり方は多様で、未来に何かひとつの理想形があるとは思いません。ですから今日お話しできることは、僕自身の家族のことや、これまでの経験から考えていることでしかないのですが……」 そう前置きしながら、控えめに、ゆっくりと話し始めた緒方さん。その穏やかな様子は、移住先である御代田の空気をそのまままとっているかのようでした。   〜〜 中略 〜〜 WHAT’S DIGITAL HUMAN? 揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事、家事、そして家族とクリエイティブな毎日を楽しむ女性。本記事トップビジュアルとして登場したこのモデルは、先述のように『Fasu』ファミリーの母親像を、顔立ち、ヘアスタイル、メイクアップ、スタイリング、さらにはライフスタイルに至るまであらゆる角度とディテールからキャラクタライズし、生み出されたデジタルヒューマンです。 最新鋭のテクノロジーを用いて生み出されたこのデジタルヒューマンは、東映デジタルセンター「ツークン研究所」、及び『Fasu』を擁する私たちアマナにより「企業広告や、ファッションカタログ、またメディアにおけるモデル使用における様々な課題解決」を目的として開発されました。 このバーチャルモデルを用いることで得られるメリットは1. 人種、人選、肖像権問題にまつわるリスク回避 2.使用期限や版権の制限フリー 3.リモートによる発注から納品 4.インナーブランドの統一化 5.CGによる表現可能領域の拡大……ほか多数。コミュニケーション及びコスト、クオリティなど、モデル使用のあらゆるフェーズで生じるデメリットをミニマムにし、モデル表現の可能性を大きく広げていきます。 デジタルヒューマンが描き出す、新しいモデルのあり方と可能性、そして未来にご期待ください。 問い合わせ先:

2022.11.17
エルゴベビーの抱っこひも「ADAPT」がリニューアル発売。アップデートした機能を解説
動物園、博物館、美術館…。9つの施設でシームレスにクリエイティブな体験ができる「Museum Start あいうえの」とは
圧倒的な高級感で魅了。黒川鞄工房の「シボ牛革」ランドセルシリーズに新色が登場【2023年ラン活NEWS】