男の子と女の子、それぞれの育て方のコツを知りたい!
Q. 現在、6歳と4歳の姉弟を育てています。姉の方は割と聞き分けよく育ってきたのですが、弟は何度注意しても笑ってばかりで響かず……。同じ時期を比べても行動に違いが多く、男の子育児のコツを掴めずにいます。男の子と女の子の特徴やそれぞれの育て方のコツを知りたいです!
蓮村誠:男女の育て方のコツを説明する前に、今回は性別を問わず前提として「子どもの心と脳の発達」について、脳科学の観点からお話したいと思います。心というのは、常に何かを捉える働きをしています。例えば人は頭の中で「飴玉」のイメージを思い浮かべることができますが、それはまず心が飴玉のイメージを捉えることで、思い浮かべることができます。しかし生まれてすぐ〜生後数ヶ月の間の子どもは、五感の機能しか働いていません。彼らは目や耳など五感を通して目の前のモノを捉えますが、心の中でそれを思い浮かべることはできないのです。
心でイメージができるようになると「欲求」がはじまる
生後数ヶ月〜4才頃になると、ようやくモノを心の中でイメージとして思い浮かべられるようになります。すると「欲求」がスタートします。欲求というのは、心の中でイメージを持たないと出てきません。例えば「お饅頭が食べたい」とか「誰々に会いたい」とかは、心の中でそれをイメージできるから、欲求に繋がるんですね。
脳科学における精神発達の考えでは、人は生後数ヶ月から脳細胞の神経シナプスが繋がるようになり、それによって心でイメージを作れるようになると考えられています。この「イメージする」という力は、成長と共にどんどん強くなり、3〜4歳になると欲求はMAXになります。人生でもっとも自己中心的な時代の突入です。
「我慢」ができるようになるのは何歳から?
その後、5〜9歳頃になると、今度は心の中で「言葉」を捉えられるようになります。この言葉の習得により、「思考」という機能を身につけることができます。人間は言葉がないと思考することはできません。そして人が言葉を使って思考するようになると、「我慢」ができるようになります。なので、5〜9歳の間に子どもたちは我慢を覚えるんですね。
さらに10歳を過ぎると、今度は「抽象的な概念」を理解できるようになります。すると、今度は思考に、「知能」の機能が加わります。ちなみに思考と知能というのは、全く別のもの。これを例え話で説明しましょう。ある日、5歳の弟と10才の兄が一緒に山登りをしました。すると突然雨が降ってきて、びしょ濡れになってしまいました。また別の日に山登りをしようとすると、兄は前回を踏まえて「今は晴れているけど、山の天気は急変しやすいから雨具を持って行こう」と考えますが、弟は「(目の前が)晴れてるから雨具はいらないよ」と思うのです。つまり、思考とは目の前の状況を見て考えることであり、知能とは状況を判断した上で、さらに未来の予測ができる(抽象的な概念をイメージできる)、ということなんですね。
10歳以降に、この「知能」を身に付けた子どもは、「我慢」だけでなく「忍耐」ができるようになります。「忍耐」と「我慢」もまた別のものです。我慢はただ苦しいものですが、忍耐は未来の結果を想像して耐えられるもの。「いま○○をしたら結果こうなるぞ、頑張ろう」と前向きに耐えられるものです。ですがこの忍耐の習得に辿り着くためには、年齢に応じて脳が正常に発達し、「知能」を身につけなければなりません。
人間にとって、未来を予測しながら行動する事はとても大切なことです。知能がなければ、人間は進化できませんから。でも、もし幼少期に心が傷つけられたり、感情を押し込められて育つと、脳が正常に発達せず「知能」が育たなくなってしまいます。大人になっても「知能」が身についておらず、「欲求」に任せてやってはいけないことをしてしまう自己中心的な人や、本来は忍耐できることが、知能が育たなかった故に我慢にしかならない人は大勢います。
心がリラックスすると脳は正常に発達する
そうならないためにも、成長過程で心がリラックスして、脳がきちんと発達することが何より大切です。「欲求期(生後数ヶ月〜4才)」のお子さんに「我慢しなさい!」「○○しちゃダメでしょ!」と注意したところで、彼らは「欲求」しかできない訳ですから伝わらなくて当前です。むしろその欲求を抑え込もうとせずに、危ないこと以外はぜひ受け止めてあげてください。
そして「思考期(5〜9歳)」の子どもは、やっと我慢ができるようになったとは言え、まだまだ未来を予測する力は備わっていません。なので何か間違いや失敗を犯した時に、「どうして○○になるって思わなかったの?」といったように責めて、心を傷つけたりしないよう気をつけてあげてくださいね。
もう一つ大事なことは、5歳以降に「我慢」ができるようになったら、その子の欲求をなんでも叶えるのではなく、「我慢する」という行為をたくさん練習させてください。欲しいと駄々をこねても絶対に買わない、など我慢の経験を繰り返すことで、最終的に「忍耐」ができる子どもに成長しますよ。
「子どもの心と脳の成長」についてお話いたところで、次回からは本題の「男女の育て方の違い」について説明していきましょう。