【前編】withコロナ時代、心も身体も前向きに健やかでいるコツとは?
Q. 緊急事態宣言の解除で経済活動が再開され、以前のような日常が戻りつつあると思います。不安にばかりなっていても仕方ないですし、コロナ渦でも前向きに生きたいと思うのですが、どうしても社会の暗いムードに飲み込まれて気持ちを切り替えられません。収束の兆しが見えず、経済的にも不安定な世の中で、どうすれば心身ともに前向きに健やかに生きられるでしょうか?
蓮村誠:コロナ時代の中で、どうすれば心も体も前向きに健やかに生きられるのか。まずはプロローグとして、「そもそもなぜ、前向きな気持ちになれないのか?」その理由をお伝えします。
いま社会に広がる、淀んだ空気の正体
大人も子どもも、いま多くの人が「この先の社会はどうなるのだろう?」と不安になっていると思います。そして同時に、「コロナ以前の、元の生活に戻りたい」と思っている人も多いでしょう。ですが、時間とは“過ぎていくもの”です。なので一つ心に留めて頂きたいのは、「これからの社会がコロナ以前の世界に戻ることは決してない」ということです。
もし皆さんが「以前の生活に戻りたい」と思っているのなら、それは時代に退行する考えです。ですがそういった退行した考え方が多くの人の間で広がり、いま社会全体の空気を重く淀ませています。相談者様のように前向きになろうとしている人も、もちろんたくさんいます。ですがそういう人たちも、退行した社会の空気感に押しつぶされて、前向きになれなくなっている。結果やる気が出ず、人によっては体が重い、頭が痛い、胸が苦しい、やたらと眠いなど、さまざまな症状を引き起こしていると思います。
受け身の生き方から脱却する
この世界には、現実と呼ばれる客観的な世界があります。その中で多くの人は、目の前の現実を受け止めて、自分ができることを選択しながら生きています。しかし置かれた環境の中で仕事をして、そこで稼いだお金で好きなものを買ったり食事を楽しむ生活というのは、「受け身」の生き方です。それは別の言い方をすると「消費」の生き方とも言えます。
コロナ以前から、受け身・消費の生活をしている人はたくさんいました。そしてその生き方に慣れていた中で新型コロナが流行し、今まで目の前にあったはずの現実が急に壊れ、不安に陥っている。そのため多くの人が、「元の世界に戻りたい」と強く願っているのです。その退行する想いは、非常に鈍く重い質を持っています。アーユルヴェーダの世界では、人は心に3つの質を持っていると考えられています。成長を促す知識の質である「サットヴァ(純粋性)」、活動の質である「ラジャス(激性・活発性)」、同じ状態に留まろうとする停滞の質の「タマス(不活発性)」です。人それぞれ心の中でこの3つのバランスは異なりますが、「元の世界に戻りたい」と願うのは「タマス」の質が強くなっている証拠です。
本当に幸福を拡大させるために必要なこと
これまで多くの人が、受け身の人生の中で頑張って生きてきたと思います。ですがどんなに頑張っていても、受け身であり続ければ、その人は同じ場所に止まろうとする「タマス」の人生しか歩めません。受け身・消費の生き方というのは、創造的な生き方ではないのです。人が本当に幸福を拡大させて生きるならば、「創造して生きる」ことが何よりも大切です。「元の生活に戻りたい」「今ある状況を変えたくない」と退行した想いを持って生きていくと、普通に生活はできますが、本当の意味での幸福は持続しません。その幸せはいつかどこかで壊れてしまいます。
いま社会に広がる多くの人の退行した想いが、本当に創造的で幸福な人生を送りたいと願っている人の背中にも重くのしかかり、虚しくやるせない気持ちにさせています。何かを一生懸命やってうまくいかなくて悔しい思いをしたり、大切なものを失って悲しくなる、誰かに攻撃されて怒る、というのは心の正常な反応です。ですが心が虚しい、やるせない、自分は無力だと感じる、という感覚はとても危険でその人をダメにしてしまいます。
貴方の心が虚しさを感じているのなら、「自分の努力が足りないんじゃない」「自分だけが変なんじゃない」「集合的な虚無感に心が押しつぶされそうなだけ」だと理解してください。決して「自分はやる気のないダメな人間だ」なんて感じる必要はありません。重くて鈍い社会の雰囲気がそうさせているだけです。心の状態がなぜそうなっているのか、客観的に把握することが前向きに生きるための第一歩です。
その上で、創造的に生きるための実践的な方法を、次回お伝えしていきたいと思います。