注目の絵本作家〈はらぺこめがね〉にインタビュー! パーティシーズンにぴったりの斬新な新作絵本が登場!
みんなで作るやきそばの絵本『やきそばばんばん』(あかね書房)やいろんな具材の組み合わせが楽しい『へんなおでん』(グラフィック社)など、人と食べ物を題材にユニークな絵本を生み出している、はらぺこめがね。絵本作家デビューは2012年と最近ながらすでに10冊も絵本を手がけている今、注目の気鋭作家さんです。Fasuでは彼らに大注目。最新の絵本は12月16日に発売したばかりの『かんぱい よっぱらい』(岩崎書店)。なんと“お酒”をテーマにした絵本なのだとか! 今までにない、ユニークな絵本を次々発売するこのユニット。一体、どんな人たちが描いているのか話を伺ってきました。
──はらぺこめがねは、原田しんやさんと関かおりさんのご夫婦によるイラストユニット。食べ物の絵は旦那さんの原田さんが担当。人物や背景、描き文字は奥さんの関さんが担当と、作画はそれぞれの得意分野を活かした分業制なのだそうです。
原田:「出会ったのは、大学時代です。その後、それぞれ別のデザイン会社に就職が決まり、一緒に上京しました。しばらくは、お互いグラフィックデザイナーとして働いていたんですが、2人とも順々とうまくいかなくなってきて(笑)。さきに、関のほうが会社を辞めてアルバイトをしながら自分で絵を描くようになった。それをみていて、いいなあと僕も思うようになって(笑)」
関:「大学時代の友人にデザインフェスに一緒に参加しないかと誘われたんです。何ができるかなと思ったのですが、私は人を描くのがずっと好きだったので、お客さんの似顔絵を描いてみよう、と。ただ“似顔絵描きます”と言うと似てない!と怒られることもあるかもと思って“顔アート”って言葉を作って、自分なりの似顔絵でチャレンジ(笑)。でも、これがすごく楽しくて、お客さんにもたくさん並んでいただいて、やっぱり絵を描くのがいいなって改めて思えたんです」
──関さんを追いかけるように原田さんも会社を辞め、それぞれ独立しイラストを仕事にしていくことを志すように。この時はまだ2人はユニットを組まず、それぞれの絵を探求。
原田:「関は、人を描くっていうテーマがいち早くみつかっていたんですが、僕はけっこう試行錯誤していて。ある時、冷蔵庫の中にあったリンゴだとか、転がっていたバナナの皮を描いてみた。その時、あ、食べ物って面白いなと気付いたんです。もともと食べることが好きだし、自分でも料理をするしな、と」
──関さんが人物を描きはじめ、原田さんが食べ物を描くように。でも、「2人の絵をあわせるつもりはなかったんです」と関さん。あまりに、タッチも方向性も違うので最初は絵を一緒に描くことは難しいと思っていたそう。
原田:「でも、だんだんそれぞれの絵が固まってきた時に、一緒に描いてみるのも面白いんじゃないかって思えるようになった。それで、食べ物と女の子を組み合わせて絵を書いてみたんです。そうしたら、不思議な違和感があって面白い作品が出来上がった。段ボールにたくさん描いてイベントで売ったらとても好評で。あ、これでいけるのかもと思ったんです」
──そうして、2人はユニット「はらぺこめがね」を組むことに。そんな2人にイベントで声をかけたのが都立大で小さな絵本店「ニジノ絵本屋」を営む、いしいあやさん。
原田:「あやさんの絵本屋さんが僕たちのアトリエの近所だったんで、遊びにいったんです。そうしたら、会うやいなや “ 絵本作ろう! ” って(笑)」
関:「私は、幼いころから絵本を描くのが夢だったので、ぜひやりたい!と。幸いなことに私たちはデザイナー出身なので、本という形にする術はもっていた。だから、話はとんとんと進みましたね」
──ニジノ絵本屋からごちそうをテーマにした『フルーツポンチ』『すきやき』『ハンバーガー』の3冊の絵本を発売。当初は、手売りなどで販売していたが、徐々に注目が集まり、メディアでも紹介されるように。
原田:「この絵本がきっかけでいろいろ声をかけていただけるようになりました。絵本の仕事もいろいろな依頼が増えていきましたが、 “ 食べ物と人 ” というテーマはぶれないように守っていきたいと思っていますね。」
── “ 食べ物と人 ” をテーマにしている上で大事にしているのは、食べるもののリアリティ。おふたりは、食べ物を描くときには、実際にそのものの料理を自分たちで手作りしたり、よい食材を用意したり、お店に食べにでかけたりして、それを絵にするというこだわりよう。新しい絵本の『かんぱい よっぱらい』にも、たくさんの食べ物(と、今回はさらにお酒も!)が登場します。
原田:「僕たちも担当の編集者さんも飲むのが大好き。だから、今回の取材はとても楽しかったですね(笑)。こだわったのは、やっぱり“かんぱーい!”とした時のお酒のなめらかな動き。ビールの泡や波打つ感じが、読み聞かせをするパパやママののどを“ごくり”と動かすものにしたい!」
関:「子どものころって、酔っ払っている大人がすごく不思議で、興味があった。酔っ払っている大人の真似をおどけてしてみたりだとか(笑)。子どものころは、もちろん飲めないんだけど、お酒ってずっと身近にあるもの。おいしいごはんやおつまみを食べながらお酒を楽しむのは、子どもたちの憧れでもある。そんな日常を描いた絵本って今までにない。ないからこそ、ぜひ私たちが描きたい!と思ったんです」
原田:「お酒のアテも意外と子どもも食べるのが好きだったりするし(笑)」
──物語の舞台は「かんぱいむら」。村のあちこちで「かんぱいのおと」が鳴り響きます。お仕事帰りの枝豆さんと唐揚げさんはビールで乾杯! オリーブとチーズと生ハムのオードブル3姉妹は優雅にワインで乾杯! 絵本を読みながら、一緒になって「かんぱーい!」としたくなる、とても楽しい1冊です。パーティや宴会シーズンのこの季節に読むのもとてもぴったり。はらぺこめがねの、ユーモアがたっぷりのおいしい絵本の数々をぜひ、手にとってみてください。