DATE 2017.06.16

タイムレスなモダニティを追求し続けるCOS。チームで世界観を作り上げていく〈COS(コス)〉のクリエイティブ・ディレクター、カリンにインタビュー。

オープンしたばかりのCOS銀座店では日本初のキッズウェアを展開している。ミニマルかつモダンなスタイルに遊び心を加えたキッズウェアにもCOSらしさが滲み出ている。親子でCOSスタイルを楽しめる銀座店を早速チェックして。

シルバーの外壁に遊び心のあるウィンドウ。〈COS(コス)〉の新店舗は遠くからでもすぐにわかる。先日銀座・マロニエ通りにオープンしたCOSの新店舗は青山店やマリン&ウォーク ヨコハマ店に続く3店舗目、国内最大となる規模だ。店内に入ってみると、ブランドのアイデンティティを体現すべく、白を基調とした壁に木のフロア、そして特徴的な無駄を削ぎ落とした無機質かつモダンな様相が広がっている。広い空間に最小限の服を並べた贅沢な空間はカスタマーが十分に服を見ることができるように作られているのだろう。そんな落ち着きのある雰囲気の2階で出迎えてくれたのがCOSクリエイティブ・ディレクターのカリン・グスタフソンだ。ブロンドのショートヘアにトップスとパンツはブラックで決めている。カジュアルかつシンプルだが、短め丈のトップスやさりげなくスリットの入ったパンツからは遊び心や洗練さも感じられる。思わず“COSっぽいな”と思う、おしゃれな女性だ。彼女はウィメンズ、メンズ、キッズ、アクセサリーと、ブランドのすべてのクリエーションを統括している。日本に初めて滞在したと話す彼女は「とても興味深い国ね。日本食を食べたり、21_21 DESIGN SIGHTに行ったわ。着物や昔の和服などを展示している美術館にも行きたいの」と笑顔で話す。

〈COS(コス)〉クリエイティブ・ディレクターを務めるカリン・グスタフソン。
Photograph: Hiroki Watanabe

COS銀座店にはキッズウェアセクションがある。ウィメンズやメンズを見ていると、落ち着いたカラーパレットの中に、カラフルなブルーやオレンジ、ネオンカラーなど、目の覚めるようなヴィヴィッドカラーが度々登場しているのが印象的。キッズウェアにはそういった色彩鮮やかなカラーを採用したアイテムが多く並んでいる。「これまでの店舗では、キッズウェアのための十分なスペースを確保できなかったの。他でもキッズを扱いたいんだけど」とカリンは話す。「キッズウェアも、フィロソフィーや心がけていることはウィメンズやメンズと変わらないの。もちろん、もっとプレイフルかつ子どもらしいデザインに仕上げているけれど」。確かに、どこか遊び心のある素材やプリントを採用しているが、形はいたってシンプルだ。「キッズウェアも基本的にはウィメンズやメンズと同じ形を採用しているの。大人用のズボンをバランスや長さを少しだけ変えたり。服のバランスや長さを少し変えるだけで、子供にとってとても動きやすい形になるのよ」。ウィメンズやメンズを手がけているからこその発想だ。年齢に合わせ、基本の形に手直しを加えるその手法やアイデアのシンプルさや斬新さに驚く。

COS銀座店のキッズウェアセクション。ブルーヤオレンジなど、カラフルなアイテムが並ぶ。
Photograph: COS

カリンはCOSのアシスタントとしてキャリアをスタートさせ、レディースウェアのデザイナーを経て、2016年にクリエイティブ・ディレクターに就任した。「幼い頃からデザインに興味を持っていた」と話す彼女は、幼少期の体験を話してくれた。「母もファッションが好きでいつも私の服を作ってくれていたの。母と一緒に生地屋さんにもよく行ったわ。私にも生地をくれて、人形の服を作ったわ。私の服作りはそこから始まったわね。ベーシックな服の作り方は母から学んだの。彼女から受ける影響もとても大きかった。そのうちに自分の服も作るようになっていったわ」。そんな彼女はストックホルムでドレスメイキングを学び、自身の名を冠したレーベルをスタートした。「ストックホルムでしばらくの間テーラリングをしていたの。ウィメンズの服を作ったりしていたんだけれど、もっとデザインの勉強をしたいと思い、ロンドンに留学したわ」。2000年にロンドンへ渡り、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション、ミドルセックス大学でデザインを学んだ。その後ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)でMAを取得し、卒業してすぐにCOSに加わった。「2006年、ブランド立ち上げ当初からチームにいて、これまでずっとチームの一員としてブランドの基盤を作ってきた。ブランドの成長を見てきたわ」。わずか10年間でワールドワイドと呼べる規模にまで成長したこのブランドの服にはどれも、1本筋の通った“COSらしさ”がある。「COSのアイデンティティであるミニマルでシンプルかつ実用的なデザインを作り上げ、どうやってCOSをスペシャルなブランドにするのか挑戦を続けてきた」と彼女は話す。「そのうち、ウィメンズデザインの統括を任されるようになり、1年半前にすべてのジャンルのクリエイティブビジョンを任されるようになったの。と言っても、デザインは今も変わらずチームみんなで手がけているんだけど」。

 

2007年にブランドが立ち上がり、自社のデザインチームにより品質にこだわった洗練されたデザインを数々打ち出してきたCOS。彼女は度々、デザインチームの素晴らしさを口にしていた。デザインプロセスについて尋ねてみると、「私はドレーピングから始めることが多いの」と話す。「RCAで学んでいる頃からなの。ドレーピングはとても自由で、心のままに手を動かしていく。何が起こるか予想できないところがいい。ドローイングは頭の中に思い描いて書いていくけど、ドレーピングは、まるで大きなブラックホールのような中から形を作っていく感覚」。COSのデザイン手法については「特にこれというフォーマットやルールがあるわけではない」と説明する。「デザインチームはみんな、様々な経歴やスキルを持っている熟練メンバー。ドローイングやドレーピング、コラージュ、実際にアトリエで手作りしてみたり、とても実験的。だからアプローチは様々かな」。拡大していくブランドのクリエイティブ・ディレクターとして、すべてのクリエーションを指揮することの大変さを尋ねてみたときも、「素晴らしいデザインチームを持っているから平気よ」と笑顔で答え、チームへの信頼の強さが受け取れる。

COS銀座店のキッズウェアセクション。ブルーヤオレンジなど、カラフルなアイテムが並ぶ。
Photograph: COS

ロンドンを拠点に活動しているCOSは、日常の中からデサインのヒントを得て、コレクションを完成させていく。ロンドンには音楽やアートが溢れており、古い建物とスーパーモダンな建物が絶妙なバランスで混在している。そして何より新しい文化やファッションが生まれる街でもある。そんな日々姿を変え、進化していくロンドンをベースにしているからこそ、あの斬新なデザインが生まれるのだろう。「ロンドンにはインスピレーション源がたくさんあるわ。刺激的な場所を拠点にしているからこそ、さまざまな面白いものも生まれるんだと思う」とカリンは話す。「コレクションの準備は、まずシーズナルダイレクションを決めることから始める。アートや建築、ミュージック、マーケットで見つけたものなどをチームで収集していくの。そしてムードボードを作成し、ストーリーを作っていくわ。たとえば、2017−18年秋冬コレクションは、テーラリングに着目することからスタートした。セットのアイテムや、テーラードから派生したアイデアを探していったの。グラフィックを加えたり、ラインを強調したり、フォールドしたり。クラシックなテーラードではなく、新鮮かつユニークな仕上がりになったわ」。シンプルだが細部まで計算し尽くされていて、見る人の意表をつくデザインが多い。そしてそこには常に明確なフィロソフィーがある。「常に高いクオリティー追求しているの。デザインはタイムレスであり、シンプルな美しさを表現している。そして何よりモダニティな思考を忘れないことが重要」。それはキッズウェアも同様だ。「キッズウェアにも“COSらしさ”は維持しつつ、たくさん遊んだり、日常の中で問題なく着用できるデザインにしているわ。これはキッズウェアだけでなくすべてのラインに言えることだけど、肌ざわりや着心地、素材へのこだわりもとても大切」。便利さや動きやすさのためにポケットやスリットを加えたり、ゆったりとした生地感やシルエットにひと工夫加えたり、素材といった細部までこだわり抜いているのはCOSの何よりもの魅力だ。

シルバーを基調としたCOS銀座店の外観。ウィンドウが特徴的。
Photograph: COS

1児の母でもあるカリン。「7歳の息子がいるの。彼は色が好きで、COSのコレクションも大好き。男の子なのでカラフルが好きと言ってもボーイッシュなスタイルなんだけど、よくボンバージャケットやデニムなど色々な服を着ているわ。ファッションを楽しんでもらいたいので、いろいろ服を買ったり着せたりするの。もちろんCOSの服もフィッティングしてもらうわ。子どもがいるから、カスタマー目線で子ども服を見ることもできる。どうすればもっと子どもたちが動きやすく着やすく、そして何より遊びやすくなるかっていつも考えてるわ」と楽しみながらも彼女の常にマインドはデザインに向いている。「もちろん着心地の良さは大切。だけど大人から子どもまで、みんなにファッションを楽しんでほしい。親も子どもと一緒にファッションを楽しんでもらいたいと思っているわ。服を通じて自分を表現して。カラーを使ったプレイフルなピースと、一見ミスマッチなクリーンなアイテムなんかを一緒に取り入れたりしても、着てみると意外に調和していて面白いの。とにかくファッションを正しい形で楽しんでほしい」。

ブランドのアイデンティティやインスピレーション、キッズファッションについて語るカリン。
Photograph: Hiroki Watanabe

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