DATE 2019.11.21

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永山 祐子|わたしと家族と、 家ものがたり。Vol.2

家族の時間を重ねて行く「家」だから、家族皆がどこにいても安心感に満たされているものでありたい。第2回は、建築家の永山祐子さん。大胆なリノベーションを施したヴィンテージマンションの最上階に、お邪魔しました。いまをときめく女性建築家の自邸。その工夫と魅力に迫ります。

家族の気配を感じられる、大きなワンルーム。

築44年のヴィンテージマンション。7階まではエレベーターで行き、そこから重い扉を開けると、光の差し込む階段が伸びている。このマンションの8階部分である最上階のすべてが、建築家、永山祐子さんの自宅だ。

 

むき出しのコンクリートとガラスで囲まれた階段部分には、巨大なアート作品が掲げられている。階段を上りきると、そこには潔い大空間が広がっている。モルタルを施した壁、天井は木毛セメント板、磨かれたようにクリーンなアッシュ材の床板。まるでホールのような、美術館のような静謐な空気に満ちている。空間の一部を大きな木の引き戸で仕切ることができる120平米のフロアには、リビングもダイニングもキッチンも、そして寝室も備わっている。可動式の大きなクローゼットが一か所にまとめられていて、ヴィジュアルの美しさが際立ったワンルームだ。東側一面の大きな窓ガラスの向こうには、室内の床板とおなじ高さで広がる90平米のテラスが広がり、室内空間をさらに広く見せている。

永山祐子さんの自宅

部屋の中央に、スペインのサンカル社の大きなソファが、同じくスペインのデザイナー、パトリシア・ウルキオラのテキスタイルに包まれて威風堂々と鎮座している。窓辺のダイニング部分には、ジェルバゾーニの大きなペンダントライトと、永山さんの夫であるアーティストの藤元明氏の大理石の作品が飾られ、その下には、永山さんがホール設計のプロジェクトためにデザインしたというテーブルが置かれている。

「8階のこの部屋まで、巨大なガラスを入れるのに一苦労しました。国道に横付けした特大のクレーンを見て、近所の人は何が始まるんだろうって思ったでしょうね。この最上階部分は元々ビルオーナーの自宅だったんですが、その後オフィスとして使われていたので、この場所に暮らすにはリノベーションは必須でした。リノベーションには1年ほどかけて、空間を一度スケルトンにし、平屋のようなワンルームをつくったんです」

 

作業をする誰もが目を丸くするような大胆なリノベーションを実現させたのは、ガラスの取り付けからサッシの工法まで、細かい手続きを自ら行うことのできる豊富な知識を備えた建築家ならでは。家族の暮らす場所だから、安全性にも気を使い、マンションの図面や構造チェックも行い、周囲の地盤までも徹底的に調べたという。

「小さいときからこのエリアは私のホームグラウンド。育った場所という愛着もあって、実は新築を建てるつもりで近くに土地を購入していました。でも、そこで建てることのできる家は、面積を考えると上に積み上げていくしかなかったんです。そのうち子どもが増えて、子どもたちが走り回れるような家へとアイデアがシフトしていきました。家族皆が一緒の空間にいられるような、平面として広がったところに暮らしたいと思ったんです。夜中にネットでたまたまこの物件を見つけて、都心でもマンションだったら、ひとつの広い空間を確保できるのではないかと思いました。それに偶然にも、このマンションのすぐ横の産婦人科で下の子どもを出産しているんです。そんなことも、運命かなって(笑)」

理想だった広さとともに、永山さんが惚れ込んだのは、その眺望の良さ。8階という高さがあり、窓の向こうには遮る景色がない。南側の開口部はすべてガラスでフィックスされ、窓の向こうには絶景のパノラマビューが広がっている。晴れた日には遠く富士山まで見渡すことができ、窓を飾る遠景がアート作品のようだ。その長い窓に沿うようにして、10メートルの長いカウンターが設置されている。そこは、ときに夫婦の仕事場になり、子どもたちの勉強机になり、いずれ本棚としても使用できるようにつくられている。

現在、小学校1年生の男の子、5歳の女の子、ふたりの子育て真っ最中という永山さん。近頃は、…

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