コドモ建築家が考える「新しい公園」のかたち。〈100本のスプーン〉「コドモたちとみんなでつくる公園プロジェクト」レポート。
〈スマイルズ〉が運営するファミリーレストラン「100本のスプーン あざみ野ガーデンズ」は、今秋から「コドモたちとみんなでつくる公園プロジェクト」を始めました。普段から〈100本のスプーン〉を利用する地元の子どもたちや、建築やものづくりに関心のある子どもたちが「コドモ建築家」として集まり、店舗の隣に新しくできる公園の設計を自ら考え、つくっていくプロジェクトです。
11月上旬、その第1回目のワークショップとして「建築家と考える はじめての公園設計ワークショップ」を開催。建築家で芝浦工業大学特任准教授の岡野道子さんがモデレーターを、ミュージアムエデュケーターの会田大也さんがプログラム監修を務め、小学校1〜6年生までの25人のコドモ建築家たちが「家族や友だちと行きたくなる公園」のアイデアを考えました。
「大きな木」のような公園をつくろう
ワークショップは、岡野さんのミニレクチャーからスタート。岡野さんは、ブランコやジャングルジムといった「大人が考えた遊具」でいつも同じ遊び方しかできない普通の公園ではなく、「大きな木のような公園」をつくりましょうと話します。
「登ったり、ぶらさがったり、木陰でお昼寝をしたり。大きな木があれば、いろいろな遊びをすることができます。大人も子どもも一緒に遊びをつくって、考えられる──そんな公園ができるといいなと思っています」
岡野さんのレクチャーのあとには、子どもたちに予め考えてきてもらった公園のアイデアを発表してもらいました。
「冒険がしたいから、アスレチックをつくりたい」
「大きな花飾りをつくりたいから、きれいなお花畑をつくりたい」
「空を見ながら休みたいから、ハンモックをつくりたい」
と、「何をしたいか」を起点にすでにたくさんの構想が浮かんでいる様子。ワークショップを経て、これらのアイデアはどう変わっていくのでしょうか?
見る・感じる・話し合う・つくる
次は、実際に公園がつくられる現場へフィールドワークに出かけます。木の高さや敷地の広さ、階段の段数に丘の上から見える景色まで。自分の目で見て、身体で感じることで、より具体的なイメージを膨らませます。
室内に戻ったあとは、5つのチームに分かれてアイデアをかたちにしていきます。今度は「何をしたいか」に加えて、「誰と一緒に行きたいか」を考えながら、チームのメンバーたちと話し合って考えをまとめていきます。さらには、芝浦工業大学で建築を学ぶ大学生のサポートスタッフにも手伝ってもらいながら、建築模型をつくってアイデアを具現化していきます。
実際に現場を見たこと、そして、友だちとの話し合いのなかから生まれるインスピレーションによって、最初につくりたいと思っていたアイデアがどんどんかたちを変えて発展していく──そんな化学反応がどのチームにも生まれていました。
5つのユニークなコンセプト
約1時間の作業を終えて、5つのチームの模型が完成! 最後はそれぞれのチームごとに、どんなコンセプトの公園をつくったかを発表してもらいました。
◉お花畑と筒状のすべり台が印象的な「お友達や家族と自然の中で楽しくなれる」公園
◉四季を感じながら遊べる「自然を楽しむすべり台」
◉迷路とトランポリンが特徴の「楽しくなぞめき公園」
◉大きな川が丘に流れる「水で遊べる公園」
◉インパクトのある海賊船が真ん中に置かれた「あざみの冒険の森」
と、各チームがユニークなアイデアを披露してくれました。
「模型をつくるのが楽しかった」
「(自分で公園をつくるのは)我ながら誇らしくなる」
「自分たちのアイデアがかたちになるのが楽しみ」
ワークショップを終えた子どもたちからは、そんな感想の声を聞くことができました。
「オーナーシップ」が育むもの
今回のワークショップを振り返って、岡野さんは「子どもたちの観察力と柔軟性に驚きました」と話します。
「階段を木で囲うことで『木のトンネル』をつくるといった、すでにあるものを観察してそれをよくしようという発想は、むしろ大学生よりも自由ですよね。そうした感性には、大学生のほうが学んだところもあると思います。
また誰かが言った言葉に別の子がよく反応していたのも、チームで取り組んだ意味があったように思います。『迷路をつくりたい』と言った子がいたら、それを聞いて『その迷路の先にはこんな場所をつくったらいいんじゃないか』と、まるでしりとりのように次々とアイデアがつながっていったのがおもしろい瞬間でした」
また会田さんは、今回のワークショップのように自分の手と頭を使ってアイデアを考えること──すなわち「遊びながら考え、考えながら遊ぶ」ことを通して、子どもたちのなかに「自分たちがつくったぞ」という実感とオーナーシップが育まれることを期待すると話します。
さらに会田さんは、こうしたワークを「学校ではない場所」でやることが重要だとも付け加えます。「4年生の子は学校だと『4年生』として振る舞うわけだけど、ここに来るとその『4年生』という肩書きがなくなり、普段よりも背伸びしたことを言ってみることもできる。そのことが、より柔軟な発想につながったと思います」
今後は岡野さんが今回のワークショップで生まれた5つのコンセプトをまとめ、ひとつの公園のイメージをつくります。そのイメージについてさらに子どもたちとディスカッションを重ねながら、実際の設計案を作成。2019年3月に計画のお披露目会が実施される予定です。
実際の公園を自分でつくったという経験は、その土地やコミュニティを「自分ごと」として考えることにつながっていくはずです。そのオーナーシップの感覚さえあれば、子どもたちの創造性や自発性は、自然と育まれていくのかもしれません。