おしゃれ間仕切り「DRAW A LINE」で写真が映える空間をクリエイトした家
アートが奏でるハーモニーを楽しむ
「とにかくリビングの広い家に住みたかった」というご夫婦が約6年かけてやっと巡り会えたのが、都内の閑静な住宅街に建つコーポラティブハウス。ここに海外のアート作品などを扱う企業にお勤めのご主人と出産前までテキスタイルデザイナーだった奥さま、そして元気いっぱいの娘さん(9歳)というSさんご一家が住む。
白い壁に玄昌石の黒い床とむき出しのエアコンパイプという個性的なリビング。中でも目を引くのが壁一面に置かれた3つの大きな飾り棚。フォルムといい質感といい存在感たっぷり。ここにはご主人が愛するモダンアートの数々がディスプレイされている。そして棚の上にはなんとイームズの椅子が鎮座!
「うち、3人しかいないのに椅子がいっぱいあるんです(笑)。お客様がいらしたときは棚から下ろして使っています」と笑う奥さま。Sさん宅では定位置にないのは椅子だけではなく、お皿もまたしかり。ダイニングの壁には、アスティエ・ド・ヴィラットのお皿が絵画のように飾られている。
“好きなものを、好きなように置く”。セオリーを軽やかに飛び超えて、自由に思うがままにインテリアを楽しむマインドが素敵だ。“こうでなければならない!”を取り払えば、毎日の生活はグンと楽しくなる。
「大きな飾り棚はマーク・ニューソンのもの。新婚旅行でアントワープに行ったときに、W<のお店でディスプレイに使われていたのを見て夫と『かわいいね』とひとめ惚れ。その後、同じものが青山の家具屋さんに売りに出ていたんですよ。この家が建築中のときに寸法を測って買いました。かなり大きいので観音開きのドアを全開にしてギリギリ入ったんです(笑)。この飾り棚ありきでうちのインテリアの方向性が決まったという感じですね」(奥さま)。
ここはご主人の好きなものがぎっしり詰まった宝の棚。アレッシィ、フィリップ・スタルク、バカラ……デザイナーごとにカテゴライズされ、置き方の細部までこだわる。一つ一つの作品が強烈な個性を放ちながらも、リビングというひとつの大きな空間の中で調和し、まるでオーケストラのようにハーモニーを奏でる。
そしてここにも“セオリー超え”を発見。まずは「蛇口」。以前使っていた水道が壊れて付け替えたものの、不要になったスタルクの蛇口は捨てられずご主人の宝の棚の住人となった。そして棚の上の用途不明の「木の板」。
「この木の板は、骨折したときに使う添え木なんですって。なぜ添え木? と思いましたね(笑)。夫いわくイームズがこの添え木で積層合板の技術を習得したんだそうです。イームズの原点みたいですね」(奥さま)。
イームズの添え木の横に飾られているのが、イエローコーナーで購入した一輪の花を大胆に切り取った写真。渋めの赤い花びらがリビングのメインカラー、白の効果的な差し色になっている。もう一つの写真はローチェアの上に。
「一見マリリン・モンローに見えないところが気に入っています。とはいえ高い位置に飾ると主張しすぎるので、低い位置に置き飾り棚のメンバーとなじませてみました」(奥さま)。
キッズスペースはまるでおとぎの国
廊下の先にある一室がキッズルーム。リビングとはまったく異なる、ナタリー・レテのアートをメインにデコレーションされたおとぎの国。フランスならではの美しい色のシャワーに包まれ、そこにいるだけでワクワク&ハッピー。でも、よく見ると、そこかしこにユーモラスで遊び心満点のものたちが……。
「一番好きなのはお肉のお人形たち! ハムちゃん、ティーボンステーキくん、レバーくん。クリスマスにサンタさんにリボンとエクレアシュークリームをお願いしたら、おまけでプレゼントしてくれたの」と娘さん。プレゼントのお願いがかわいすぎて微笑ましい。お肉のシュールな人形もナタリー・レテの作品だ。裸のお人形はプチコラン。ちょっとヘンテコなものが巻き起こす小さな笑い。少しの毒とひねりのあるユーモアは人生を楽しむスパイスだ。これがSさんファミリーが大切にしているもの。
個性的なアートに囲まれて育つ娘さんは、絵を描いたり、折り紙やアクセサリーづくりが大好き。クリエイトする喜びをすでに知る彼女の描く絵は、大胆な構図と独特の配色で展覧会で何度も入選している。
「見せるものとしまうものを分けています。散らかりがちなぬいぐるみは缶やボックスに入れたり、同じテイストのものをまとめたり、色や高さ、大きさのバランスを考えて並べています。わりと大きなものもフックで吊るせば場所を取らずに飾れますよ」。多種多様なモノを整理整頓して見せるテクニックはさすが。
最近、娘さんが自分で選んだのが「お花のように並んでいるところがキレイ」というバレリーナの写真。バレエを習い出し、やっとトウシューズで立てるようになった娘さんの憧れの世界。この写真をベッドから眺めながら寝られるような高さに配置したという。
DRAW A LINEで写真を飾り空間をクリエイト
リビングと寝室、キッズルームをつなぐ廊下の入口には「DRAW A LINE/ドロー ア ライン」を使い、2枚のファッション写真をディスプレイしたコーナーがある。
「ここはガラスになっているので、絵や写真は飾れないとあきらめていたんですが、DRAW A LINEというオシャレな突っ張り棒を活躍させてちょっとしたコーナーを作ることができました。小物を置けるトレイも付いているので写真だけでなく、空間全体をクリエイトできますし、どこにでも簡単に移動できるのがいいですね」。
壁に穴をあけずに固定できるDRAW A LINEは、工夫次第でお気に入りの空間をオシャレに演出できるアートのサポーターだ。額などがディスプレイしにくいパウダールームやキッチンにもフィットする。
時の流れとともに変化する家の風景
「数年前だったら夫はアスティエ・ド・ヴィラットのやさしいデザインのお皿は選ばなかったでしょうね」と奥さま。クールでトンがったアートが好きだったというご主人は、ここ数年、柔らかいものもや自然素材のものを好むようになったという。
子どもが生まれたり、年を重ねることで心に刺さるアートは変わっていく。時の流れとともにアートのある家の風景が変化していくのはごく自然なこと。変化を積み重ねながら毎日の暮らしを楽しめればハッピーだ。