DATE 2018.07.02

グラフィックデザイナー山口アツシさんの“カテゴライズしない”家

素敵で憧れはあるけれど、アートがある暮らしってなんだかハードルが高い…。そう思っている方に向けて暮らしに馴染みやすい“写真”をテーマにインテリアを考える短期連載。第五回目はアートディレクター山口アツシさんのお宅に伺いしました。

海と山をこよなく愛するアートディレクターの山口アツシさんは、参鶏湯研究家の奥様と14歳のお嬢さん、愛犬FONDの3人+1匹家族。海へのアクセスも良く、東京にいながら緑が多い環境に惹かれ、9年前に1Fに事務所、2Fと3Fが居住スペースの2LDKの一軒家を新築した。

 

「真新しいザ・新築というのが嫌で。元から住んでましたという雰囲気にしたくてもともと好きでお付き合いのあった家具屋、パシフィックファニチャーサービスにうちを設計してみない?と相談して出来上がった家なんです。」(山口さん)

夫婦それぞれの聖域

家具屋さんが設計しているだけあり、ところどころの設えに家具の風合いを感じ取ることができ、家全体の統一感も増しオシャレな雰囲気にまとまっている。リビング、キッチン、ダイニング、テラスで構成された2Fはキッチンを中心にぐるりと一周が繋がっているデザインに。愛犬FONDが駆け回れる自由な動線が魅力だ。家の中心とも言えるキッチンとダイニングは奥様の聖域。逆にリビングは山口さんの好きなもので彩られた空間に。そこで目につくのが壁にかけられたアートの数々。ご夫婦それぞれ好みは違うものの、壁を有効活用し、そこにアートやアートフォトを飾ることはごく自然なことのようだ。

「家の中で一番広い食卓の壁には、季節によって写真を飾ったり絵を飾ったりと気分で変えて楽しんでいます。友人が来た時などは出す料理の雰囲気に合わせて変えたりもしますね。これは夫が好きな写真家アンドレアス・グルスキーの作品ポスター。清涼感があって夏っぽくて私も好きです。やっぱり壁に何にもないのは寂しいです。写真や絵を飾ることで暮らしに奥行きが出る気がします。」(奥様)

 

大きなキッチンの奥には、広いテラスへと続く開放的なリビングが。一つ一つのテイストは異なるものの、絶妙なバランスで家具やアートがMIXされ、オシャレな空間を作っている。

カテゴライズするのは好きじゃない!

「僕はデザイナーをしていますが、いわゆる〇〇だよねとか、〇〇系などとカテゴライズするのが好きじゃなくって。イメージでひとくくりにしたくないんですよね。このリビングは強いて言えばアウトドアを感じられるというのがテーマかな。でも、家具もアートもいろいろなテイストがミックスしているのでまとまっているような、まとまっていないような…(笑)。」(山口さん)

 

 

カテゴライズしたくない!という山口さんプレゼンツのリビングは和洋折衷で面白いものがたくさん。例えば100年以上前のインドの木の棚。

 

「家の色を塗り替える風習のあるインドでは家具も合わせて塗り替えるようで。これもラベンダー、水色、コバルトブルーなどが塗り重ねられていて面白いなと思いまして。この棚にはカトラリーなど細々したものをしまっています。なんとなく海を感じられるカラーリングなのも気に入っています。」(山口さん)

その他昭和初期のガラス棚やイサムノグチのガラステーブル、パシフィックファニチャーサービスのキャビネットなど様々なテイストの家具がMIXされている。同じように自然と空間に馴染んでいるのがテイストの異なるアートフォトの存在。

「僕趣味で写真も撮るんですね。デザインはプロとしてやっているけど、写真はプロじゃない。自分で作れないものこそ飾りたいんですよね。それを眺めて刺激を受けるというか。例えば、イエローコーナーで手に入れたこの海の写真。おそらくドローンか何かで空撮してるんでしょうけど、露出いくつで撮影してるんだろう?とかって考えるのが好きなんです。そうやって自分じゃ出来ないことから刺激を受けているんでしょうね。」(山口さん)

子どもは親の背中を見て育つ!

そんなアートが当たり前にある山口家。9年前に家を建てた頃お嬢さんはまだ未就学児童。小さい子どもがいるとアートを飾るのは躊躇しがちだが、生まれる前からそれが当たり前の環境であればそんな心配は不要だ。

「床置きで飾るのは部屋も狭くなりますし、危ないかもしれませんが、写真や絵を壁に飾るのは幼い子どもがいてもできることだと思います。何もない殺風景な壁よりも何かを感じられるアートや写真が生活の中にあるのはいいと思います。娘の部屋にも一枚アートフォトを飾っています。この鹿の写真は優しい雰囲気と色合いが壁のピンクに合うなと思って。娘も気に入っているようです。」(山口さん)

家族を見守るアートフォト

そんなお嬢さんの趣味はデジカメで愛犬FONDを撮影することなんだとか。子どもは親の背中を見て育つといいますが、山口家のお嬢さんもしっかりお父さんの背中を見ているようです。そんなアートを自然に受け入れる山口家みんなのお気に入りの一枚が窓際に飾られたビーチの写真。

「やっぱり好きなものは変わらないですね(笑)。ビーチの写真なんですが、アクリル額装されているからか、窓からの光を受けてより明るくパワーのある一枚なんですよね。部屋から出て階段で下におりる度に目に入るんですけど、なんだか気持ちがいいんです。」(山口さん)

 

カテゴライズしない家は、家族それぞれの感覚がMIXされて気持ち良く過ごせる家。その気持ちよさを作るのは紛れもなく壁を彩るアートたちなのだ。

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