親子がクラスメートのように暮らす家
食、デザイン&アートをテーマに活動している「holiday」のアートディレクターの堀出隼さんと料理家の美沙さんご夫妻。7歳の謡くん、5歳の鈴ちゃんそしてダルメシアンのガーゼにシーズーとマルチーズのミックスのブンで構成された堀出ファミリーが暮らすのは、葉山の高台に建つ家だ。数年前から葉山に移住し、そこでの暮らしが気に入ったことから現在の家を建て、今年で3年目を迎える。
「葉山の暮らしはオンとオフをきっちりわけるんじゃなくて、ゆるくバランスよく過ごせる感じがいい。サーフィンはしないけど、海を見ると落ち着くし。砂浜に子どもと絵を描いているのは最高に楽しいですよ」と隼さん。
現在の家をつくるに当たって設計士と相談してコンセプトを決めたという。
「“クラス”というテーマにしました。親と子、子と子が“クラス”メートみたいに“暮らす”家。さらに、“クラス感”つまり上質であること。単に贅沢というわけではなく、質のいいものに囲まれて“暮らす”といういくつかの意味を込めてみました」
「クラス」がテーマという堀出さん宅では例えば、隼さんのアトリエは “図工室”という位置づけに。自身作品や画材などと並んでお子さん達の絵が所狭しと飾られている。サーモンピンクの壁には、〈イエローコーナー〉で選んだ写真も立てかけられていて、「あえてこう言う写真を置くのもいいかなって。子どもがいるからといってなよなよとしたかわいさではなく、少し毒というか大人っぽいものでも意外と子どもは楽しい」
一方、ケータリングサービスやレシピ開発の仕事をしている美沙さんの仕事場でもあるキッチンは家庭科室。グレーの壁に、キッチンツールがかけられ、機能的で使い勝手のいいスペースで、多いときはここで数百人もの料理を作ることもあるという。
このふたつのスペースは、隼さんの仕事場と、美沙さんのキッチンのスペースは扉を閉じるとフレームのようになる。
「“毎日の日常を切り取る”という意味でこんな仕掛けを作りました」
なるほど、確かにそうして見ると、フレームの中でふたりが仕事をする様が、意味が出てくるような気がしてくるから不思議だ。
「ド派手なクリエーションに囲まれるより、毎日少し楽しい暮らしというのを目指したいな、と。近々ロフト部分に本を置くことにして、そこはウチの“図書室”になる予定です」と隼さん。
堀出ファミリーの“クラス”はこれからももっともっと楽しくなっていきそうだ。
子どもはクリエイターのひとり
子どもの描いた絵や工作は、かわいいし取っておきたいけれど置き場所に困る……」という悩みを抱えているママやパパは少なくないはず。
堀出さん宅は、そんな悩みが吹き飛んでしまう程、色んな場所に謡くんと鈴ちゃんが描いた絵や手紙、工作が飾られている。
「子どもの文字っていいな、と思って。たとえばこれ
は、パリがテーマのケータリングメニューを考えている時に、謡に「書いて」って言ったらこんなふうに書いてくれて。おすし、とかピザとかパリに関係ないものもありますけど。笑」(美沙さん)
段ボールや空き箱で作ったロボットも、思わずにっこりしてしまう素敵なオブジェに。
「飾る場所や数はバランスを考えています。多くなってきたら貼り替えたりという感じで調整してますね」(隼さん)
堀出さんが撮った写真作品と同じスペースに謡くんの絵が飾られていたり、親と子の区別ないところが、クラスメートのような親子関係を表しているようでもある。自分の作品が家に飾られることは、お子さんたちにとってはきっと誇らしいはず。堀出さんのように、カラフルなマスキングテープを使えば、子どもの作品がたちまち家を彩るデコレーションとなる。
holiday式、写真を楽しむ生活
アートディレクターという隼さんの仕事もあり、写真が身近にある堀出さん一家。堀出さんご自身が撮った写真をプリントした作品「Art on Table」を、ランチョンマットにして食事をしたり、お気に入りの写真を飾ったりと様々な角度から写真を取り入れいている。
そこで今回は、隼さんに写真の取り入れ方を指南してもらうことに。堀出さんの家に合うような写真を〈イエローコーナー〉からチョイスし、生活空間にどんな風に取り入れるかを提案してもらった。
ソファの後ろのスペースにはMR. MEN LITTLE MISSとのコラボ作品をチョイス。
「写真とイラストがコラボレーションした遊び心のある写真なので、周りのガレージっぽい雰囲気と合うかなと思って。写真だけを見るんじゃなくて、周りとの関係性を考えてみました」
音楽好きな堀出さんは、アトリエの前の黒い壁にはジミー・ヘンドリックスの写真をセレクト。「この年代の音楽をいっぱい聞いていた時期がありましたね。子どものグラフィティの横にこういうのがあるのがいいかな、と。当たり前のところに置かないのがいい」
寝室のドアの横の壁には美沙さんとふたりとも気に入ったスキーの写真を飾った。
「まさにホリデーって感じで。何気ない写真だけど、雪山といっても自然だけじゃなくて人も含んでいて。寝室の横の壁が合うなと思って」(隼さん)
「ぱっと見た感じがかわいい。色使いとか雰囲気が好きです」(美沙さん)
ポップな色使いが目を引く建築写真2点。
「二人で仕事をしている感じをだしたいな、と思って」と隼さん。
シリーズとなっている写真を並べてというのも、取り入れやすいアイデア。
本物に自然に触れられる環境に
堀出さん宅ではいつも心地よい音楽が流れている。
「フランスのFIPっていうラジオ局をずっと流してるんです。この局、音楽のセレクトがすごくいいんですよ。謡も最近では音楽を聴きながらビートを打ってます(笑)」
ダイニングテーブルの隣りには、絵本と共にアート写真集や作品集もが並ぶ。
中でも鈴ちゃんの最近の一番のお気に入りはなんと、デヴィッド・ラシャペルの写真集だとか。大胆かつエッジの効いたラシャペルの作品が好きとは、恐るべき5歳である。
「何気なく置いておいたらじっと見るようになってたんですよね。色がキレイだし、何か惹かれるんでしょう。子どもなりに面白がってみてますよ」(隼さん)
「なんでこういうかっこしてるの?」「この写真かわいい」など、自分の意見を言いながらページ毎に丁寧にめくっていく。
また、玄関から入ってすぐの壁に飾られているのはベルギーの作家サラ・イレンベルガ—の作品。数年前、堀出さんがディーゼルギャラリーで見つけた。
「ビーツをジュエリーのようにカットした作品で、奥さんが料理でビーツをよく使っていたのと、子どもが二人いるので宝物のようだと思って。これは欲しいと思って、奥さんに電話して許可を得てその場で買いました」
自分たちが好きだからという理由でアートや音楽を取り入れている堀出さん。そんな気負わない姿勢が、子どもたちを感性豊かにしているようだ。
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