DATE 2020.09.14

2020年8月

なんでも、いつまでもそこにあると安心していてはいけないのだ。いつか、いつかと思っているうちに、それはなくなってしまう。東京の一気に移り変わる景色を集めたaggiiiiiii の2020年8月。

8月某日

快晴! やっと梅雨が明けた。急に髪を切りたくなって美容室に電話をしたら、キャンセルが出たので15時なら空きがあるという。いつもならどんなに早くても翌週以降しか予約が取れないので運がいい。その帰り、表参道ですこし服を見て、ついでにそこからJR原宿駅まで歩いてみた。噂には聞いていたが、交差点の「コム・デ・ギャルソン」側にあったビルも、ラフォーレ原宿がある交差点の角にあったビルも姿を消し、原宿駅前の「GAP」もなくなって、見慣れた古い駅舎の後ろにはピカピカの新しい駅が登場している。東京で暮らしてもう長いが、これほど景色が一気に変わるのを見るのははじめてだ。

8月某日

混雑はもちろん避けたいし、それほど遠くに行くこともできないのだが、気分転換も必要で、車で三崎まで行くのはどうかということになった。それから夕方、葉山へ寄って少しだけ海に足をつける。たまたま車を止めることができた、地元の人しか来ないような小さなビーチ。以前この辺りに来たときは、子はまだ1歳かそこらで、波の音をこわがって絶対に海岸へ近づかなかったものだが、去年沖縄で泳いだのをきっかけにすっかり水が好きになったらしい。

8月某日

年上の友人とランチ。ひさしぶりに連絡をしたら元気がない様子だったので、ごはんでも行きましょうと誘ってみたらうちの近くまで来てくれることになったのだ。ほんの少し遅れてやってきて、さっきまでオードリー・タンが出ていたライブ配信を見ていたという。韓国ドラマの進んだジェンダー感や、日本の脚本家の野木亜紀子さんの話などする。夜は軽い気持ちで冷や汁に挑戦してみたら想像していたよりずっと工程が複雑で、途中から軽く後悔。アジを焼いて骨を取ってほぐす(これはなんとかやった)、出汁をとって冷やしておく(無理。早めに言って)、味噌を焼く(そんな元気はない)などなど。つかれきって、その他の記憶なし。

8月某日

出勤日。同僚に頼まれてポートレート写真を撮影したら、なんだか偶然とてもいいのができた。昼はもちぶたとろろ定食。保育園にお迎えに行って帰宅後、買っておいた太麺で焼きそば。風呂が沸くまで子と「おばけかるた」をして遊んでいたが、そのまま床で寝てしまっていたらしい(わたしが)。目覚めたら、子はもう夫と風呂をすませて寝る準備をしていた。

8月某日

最近、子が朝食にバナナを食べなくなった。毎日かかさず食べていたのに、ついに飽きたのだろうか。平日の朝は、基本的にいつもバナナとアンパンマンパンなのであるが、これでいいのだろうかとたまに不安になり、食パンにハムを挟んだものを出すこともある。午後は厄介な事務処理にほとんどの時間を取られてしまった。夜はガーリックステーキ、ローズマリーポテト、コールスロー。へとへとになってまた床で寝た。「ワインを飲んだからだよ」と子が言うのが聞こえた。

8月某日

休日。子を自転車に乗せて川が流れるのがウリの公園に来てみたら、感染防止のため水を止めているとのことだった。おう。夕方、思い立って「1時間だけそれぞれ好きなことをしよう!」と宣言。わたしはふたりがなにをしているか一切気にしないことにして、ワインを飲みながら本をむさぼり読んだ。はっきり言って最高だった。そのままなにもする気になれず、夜はUber Eatsを頼んでみることに。サンドイッチ3つとフライドポテトで4000円か、まあまあ高いなと思ったけれど、この真価はのちに発揮される。風呂に入り、子を寝かせ、だらだらして、いつもの感覚でそろそろ夜中の2時半くらいかと思って時計をみたら、まだ10時半なのだった。あの4000円で、わたしたちは大きな時間のゆとりを買ったのだ。

8月某日

夫はきょうからしばらく盆休み。10連休かなにか(!)。自分の職場には決まった夏休みはない。今年は帰省も旅行もできないので、有給も申請しなかった。つまりわたしは夫が夏休みの間も平常運転なので、家のことは全部やってもらおうと思っている。

8月某日

なにか、わかりそうでわからない感覚がずっと続いている。もう少しでわかりそうな気がするのだが、それでなにがわかるのかはわからない。

8月某日

朝、ついにテントが届いた! 狙っていたものを無事にオフィシャルで買うことができたのだ。うれしいー。昼、歯列矯正の診療でひさしぶりに新宿へ。ここ数年あちこちの駅で見られる殺風景な工事中の景観には正直うんざりしているのだが、改札機の場所を移動させてまでして、JR新宿駅の東西を繋げる通路ができていたのには感動した。古いものが好きで、なにかを変えるとなるとすぐに改悪だと思ってしまう自分の狭い視野を反省した。

8月某日

出勤日。毎度のことながら「行きたくないよう」と嘆いていたら子が頭をなでてくれ、しかも「どの靴はくの?」と玄関にサンダルを用意してくれた。ときどき、だれに似たのかと思うほどしっかりしている。帰り、同僚と少しだけ飲む。

8月某日

有給を取り、夫とテントのためし張りに行くことに。慣れないうちはふたりとも余裕がないだろうことを考えて、子が保育園に行っている時間に一度ためすことにしたのだ。最初に考えていた近所の区立公園はペグ(杭)打ちが不可だったため、ネットで探し、家から車で30分ほどのところにバーベキューもできるという好条件の公園を見つけた。予約不要なのもありがたい。朝、子を園に送ったあと、さっそく出かける。到着すると、もうすでに何組かテントを立てている先客がいたが、思ったよりも空いている。自分たちもできるだけ平らな場所を探して取り掛かることに。心配はよそに、意外と1時間くらいでなんとか形になった。慣れれば20分ほどでできるらしい。ほぼ手ぶらで来たので、昼はコンビニで買ったおにぎりとカップ麺を食べる。次回はバーベキューセットを持って、ぜひまた来たい。ところがその夜、二日酔いのようなひどい頭痛が治らない。もしかしたらこれが熱中症というやつだろうか。しばらく頭を押さえて伏せっていたが、夫のあたためてくれたカルビスープを食べたらすっかり元気になった。

8月某日

夫の親戚は代々木上原で美容室を営んでおり、今日は彼のついでに子も一緒にカットをしてもらえることになった。いつもとてもやさしく迎えてもらえるので、わたしも気楽でありがたい。出かけるふたりを見送って、自分は仕事に集中する。夜はきくらげと卵の炒め物、エビと野菜のオイスターソース炒め、山形だしを乗せた冷奴。

8月某日

午前中、話題のミン・ジンリーの小説『パチンコ』を買いに駅前の本屋に行くと、数冊平置きで積まれているのがすべて上下巻の下のほうだった。まずは上巻だけ購入する人が多いということか。翻訳本は高価だから、わからなくはない。迷ったけれど取り寄せをお願いするほどの気力はなく、また近々のぞいてみようと決めて別の本を2冊買った。スーパーに寄った後は、帰り道の南インドカレー屋で、このところずっと脳内を占領されていた念願のチキンビリヤニにありつく。オプションで魚のカレーもつけてもらった。ひとりなので、さくっと食べて帰宅。

8月某日

今日も快晴。起きたら、友人からソフィア・コッポラの新作の予告編が送られてきていた。フェニックスの主題歌をさっそくSpotifyで何度も聴いた。よい〜。昼、用事があって東高円寺へ。ついでに「とんき」でロースカツ定食。有名な目黒店のほうにはまだ行ったことがない。食べ終えて、東高円寺から高円寺まで灼熱の下、またぞろ歩く。夜はまぐろの漬け丼、棒棒鶏、鶏出汁のスープ。

8月某日

品川で、よくみがいた石のようにつるっとしてヌメヌメのイルカのショーを見る。つねに口元に微笑をたたえていて、神に祝福された生きものとはこんな感じなのではないかと思う。その後、メキシコ料理店で好物のタコスとワカモレ、ファヒータなど。メキシコ料理を前にすればいつだってテンションが最高値まであがるので、さみしいときにはぜひわたしを呼んでほしい(食べ、飲む係でよかったら)。

8月某日

ひさしぶりに雨が降った。古い器や道具を扱う西荻窪の「魯山」が閉店するという話を聞き、いてもたってもいられず早足で向かった。きのうからセールが始まったという店内は、すでにほぼがらんどうで、それまで古いものに囲まれて重厚な時間が流れていたであろう静かな場所が急激なスピードできれいさっぱり片づいてゆくさまに、顧客でもなかったくせに切ない気持ちになった。なんでも、いつまでもそこにあると安心していてはいけないのだ。いつか、いつかと思っているうちに、それはなくなってしまう。最後に大きなお皿を一枚買うことができたのは幸運だった。大切にするつもり。

8月某日

帰宅すると、ポストにニューヨークから郵便物が届いていた。数ヶ月前、コロナ禍の募金プロジェクトで写真を購入したものがようやく届いたらしい。一点はペトラ・コリンズのプリントで、もう一点は、こちらも自分が選んでおきながら、うっかり誰の作品なのか忘れてしまった。作品が気に入って選んだもので、はじめて見る名前だった。今は購入したウェブサイトも閲覧できなくなっていて、調べる手立てがない。まあ、そういうのもかえって自分らしい気がする。

8月某日

出張で不在の夫に代わり、朝のタスクをひとりで全部こなさねばならない。起きて、子が服を着替えるのを見守り、朝食の準備。子がそれを食べている間に、一回目の洗濯。熱を測り、ノートに記入し、びん・缶・プラごみを出す。自転車で子を保育園まで送り届け、帰宅し、二回目の洗濯。自分なりに精一杯やっていると思うけれど、これらをやっているのはべつに「お母さん」ではなく、小中高から地続きでつながっているただのわたしなのだよな、と思う。午後はノルウェーのオスロから郵便が届いた。海外が遠い今、外国の切手や消印がとても新鮮でうれしい。子どもの頃はエアメールが届くたびにこんな気持ちだった。夜、焼き魚、茄子のそぼろ煮、もずくきゅうり、ごはん。

8月某日

東京駅のステーションギャラリーでバウハウス展。こんなふうに好きなことを尊敬できる先生の元でひたすら学べる時間がうらやましい。また学生に戻りたくなる。KITTEビルで寿司を食べてから銀座に移動して、メゾン・エルメスのシャルロット・デュマ展。いつか浜松町のギャラリーでも観た、馬に魅せられたオランダの写真家の展示だ。馬のやさしい姿に穏やかな気持ちになるが、展示のテーマである「ベゾアール(結石)」の実物を見て、その大きさに息を呑む。

8月某日

いつの間にか8月も最終日。でも、夏が終わるなんて認めないぜ。

BACKNUMBER aggiiiiiii 明るけりゃ月夜だと思う
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第1回:多様な生き方、暮らし方
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第1回:多様な生き方、暮らし方

閃いたのは、新しいクリエイティブのヒント? それとも週末のパーティのアイデア?……ホームオフィスを舞台に、生き生きと働くこの女性。実は『Fasu』のファミリーを想定しながら最新のテクノロジーによって生み出されたデジタルヒューマンです。揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事に家事に家族とのクリエイティブな毎日を楽しむ『Fasu』的な暮らしを送る母親像をあらゆる面からキャラクタライズして生まれたこの女性は、私たちが生きる、ほんのちょっと先の未来を想定して生み出されました。 コロナ禍をはじめ、混乱する社会情勢、テクノロジーの急激な進化と未知の世界を歩む私たちですが、このデジタルヒューマンが暮らすちょっと先の未来では、果たして私たちは、どのような家族のかたちを求めて、どのように暮らしているのでしょうか。そんな未来の家族のあり方を、グローバルイノベーションデザインスタジオ「Takram」でデザイン、アート、サイエンスほか多岐の分野に亘ってデザインエンジニアを務める緒方壽人さんに3回にわたってお話を伺います。第1回目である今回は、家族での長野県・御代田への移住と、10年来続けてきたというオルタネティヴな暮らし方にいて訊ねました。 これからの人間とテクノロジーのあり方や共生を探る『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』(BNN刊)。その著者でもある緒方壽人さんは、この本の中で、「ちょうどいいバランス」を探すことの大切さについて触れています。 「暮らし方や家族のあり方は多様で、未来に何かひとつの理想形があるとは思いません。ですから今日お話しできることは、僕自身の家族のことや、これまでの経験から考えていることでしかないのですが……」 そう前置きしながら、控えめに、ゆっくりと話し始めた緒方さん。その穏やかな様子は、移住先である御代田の空気をそのまままとっているかのようでした。   〜〜 中略 〜〜 WHAT’S DIGITAL HUMAN? 揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事、家事、そして家族とクリエイティブな毎日を楽しむ女性。本記事トップビジュアルとして登場したこのモデルは、先述のように『Fasu』ファミリーの母親像を、顔立ち、ヘアスタイル、メイクアップ、スタイリング、さらにはライフスタイルに至るまであらゆる角度とディテールからキャラクタライズし、生み出されたデジタルヒューマンです。 最新鋭のテクノロジーを用いて生み出されたこのデジタルヒューマンは、東映デジタルセンター「ツークン研究所」、及び『Fasu』を擁する私たちアマナにより「企業広告や、ファッションカタログ、またメディアにおけるモデル使用における様々な課題解決」を目的として開発されました。 このバーチャルモデルを用いることで得られるメリットは1. 人種、人選、肖像権問題にまつわるリスク回避 2.使用期限や版権の制限フリー 3.リモートによる発注から納品 4.インナーブランドの統一化 5.CGによる表現可能領域の拡大……ほか多数。コミュニケーション及びコスト、クオリティなど、モデル使用のあらゆるフェーズで生じるデメリットをミニマムにし、モデル表現の可能性を大きく広げていきます。 デジタルヒューマンが描き出す、新しいモデルのあり方と可能性、そして未来にご期待ください。 問い合わせ先:

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