DATE 2020.08.18

2020年7月

「コロナが終わったら〜」とやりたいことや行きたい場所を無邪気に語ることさえ、いつのまにかしなくなった。「生きて美しいものをいっぱい見よう」とSNSに書いたaggiiiiiii の2020年7月。

7月某日

出勤日。電車は普通に混雑していて、なるべく外気にふれる場所にいたいのか、どれだけ人が乗ってこようとけして扉の前を動かない人がいた。気持ちはわからないでもないが。夜はゆで鶏とそのスープを使ったフォーに、ライムとベランダのパクチーをどっさり。これまで毎回スーパーで購入していたのが惜しくなるくらい、パクチーは順調に育っている。

7月某日

晴れ。オンライン入稿した亡き祖母のアルバムを受け取るために某写真店へ。それらを親戚宅に発送した帰り、いつも行列している店にめずらしく空席があるのを見つけて気づいたらひとりでカツ丼を食べていた。午後は竹橋の「ピーター・ドイグ展」。彼がロンドンの美術大学に通っていたというだけで勝手に「先輩だ!」と親近感がわく(本人は迷惑だろうが)。移住先のトリニダード・トバゴにミニシアターがなかったため、自分のスタジオで映画の上映会を行なっていたそうで、手製のポスターたちがとてもよかった。

7月某日

朝、夫作のオムレツを挟んでサンドイッチ。その後、夫は休日出勤、わたしは子どもと公園へ。いつのまにかストライダーにもすいすい乗れるようになっている。帰りに図書館へ寄るも、子の気に入りの読書室は感染症対策で閉鎖中。おとなしく数冊だけ借りてさっと帰る。夜は涼しく気持ちよく、外にテーブルがある店で飲みたいという夫の希望で駅前の店をいくつかまわるが、どこも人気。さいわい、以前よく通っていた安くておいしい焼き鳥屋に空席を見つける。風が強く吹いて、メニューの紙が飛んでいく。

7月某日

朝、ハムトースト、マッシュルームのサラダ、コーヒー。今年も義実家から真っ赤なさくらんぼが届く。近所の小学校で都知事選の投票を済ませた後、「昭島アウトドアヴィレッジ」へ。本格的にキャンプ用品を揃えたいと考えているところなので、リサーチがてらの下見。なんか変だなーと思っていたら、展示されているテントにはどれもこれも床がない。どうやら近頃は大きなテント(屋根と側面のみ)の中にインナーテント(床あり)を設置して、リビングと寝室を分けて使うスタイルが主流のよう。夜、都知事選の結果を知って落胆する。

7月某日

東京都の感染者が連日3桁を記録している。またいつ何時ロックダウンになるかわからないので、今はつかの間の自由時間なのだという気分。もちろん色々、気はつけるわけだけど。ところで、目覚めた瞬間から口走ってあきれられる程度には、わたしの頭の中はテントでいっぱい。はやくこちらのテンションについてきてほしいものだ。夫の誕生日なので、夜は近所のビストロでお祝いをした。

7月某日

最近鼻の穴がよく動く。ニュースを見ていて政治に憤りを感じたり、怖い映画を観ているときに鼻がフガフガするのを感じる。夜は、もう何度つくったかわからないほど我が家の定番となっている西荻窪「のらぼう」さんレシピの豚肉と野菜の炒め物、栃尾の油揚げ、オクラと豆腐の味噌汁。七夕であることをうっかり失念していたが、子が星の形をしたオクラをよろこんでくれセーフ。

7月某日

長雨のせいで洗濯物がたまりにたまっており、今年初のコインランドリーへ。我が家は構造上、乾燥機付きの洗濯機を置くことができないそうで、これが引っ越しを検討する大きな理由のひとつになっている。そして軒並み完売でしばらく手に入らないと思っていたテントをフリマサイトで見つけるが、実物を見てからでないとといって譲らない夫を説得しきれないうちに売れてしまった。あああ。

7月某日

昔からどうしても取り組んでみたいと思っている題材があり、比較的時間の取れるこのタイミングでリサーチをはじめることに。夜はピーマンの肉詰め、茄子とクミンの蒸し焼き(寿木けいさんのレシピ)、ポテトサラダ、アボカド。奇しくもポテサラ爺さん(という名の老害)がTwitterで話題になっていた。今回は大量にあるじゃがいもを消費したくて作ったが、本当は自分もポテトサラダは買いたい派。

7月某日

休日。午前中に図書館へ行ったら、保育園のお友達とばったり会ってお子らはうれしそう。しばらくいっしょに遊び、うちの前で別れる。その後カンカン照りの中、自転車で30分ほどの場所にある交通公園に向かうも、途中で天気が急変してスコールのような大雨をくらう。夜は水キムチと野菜、ハム、ゆで卵を乗せた韓国冷麺をつるっつる。

7月某日

自分が出勤で、夫は休み。このパターンは滅多にないが、保育園のお迎えからも夕飯の準備からも解放される自分にとっては究極の安息日。用意してくれたのは納豆チャーハンと、人参とツナのしりしり。ありがたくいただく。子が寝てから、映画『はちどり』の監督、キム・ボラのデビュー短編『リコーダーの試験』と、アムステルダム在住のピアニスト、向井山朋子がゴッホ美術館で演奏するオンラインコンサートをつづけて鑑賞。

7月某日

ふたたびコインランドリーへ。空いた乾燥機を探して、二軒はしごする。午前中に歯医者と整体の用事を済ませ、午後は自宅で仕事。とつぜん井上陽水の『かえれない二人』を歌いたくなって、ひさしぶりにギターの練習をした。思ったよーりーも、夜霧は冷たく。夜はマルちゃんの冷やし中華に煮卵、ハム、千切りのきゅうり。

7月某日

出勤。肌寒いほどの気温で、長袖のシャツを着る。韓国ドラマに出てくる料理がどれもこれもおいしそうですっかり感化され、夜は豚肉の甘辛炒め、なめこと豆腐の味噌汁、ごはん。

7月某日

終わりの見えないコロナ禍と例年より長い梅雨でただでさえ気が滅入る中、三浦春馬さんの訃報。特別なファンというわけではなかったものの、かなりくらってしまう。人はそう簡単には死なないという思いと、人はあえなく死んでしまうのだという思いがいつも交錯する。「生きて美しいものをいっぱい見よう」とSNSに書いたのは、自分に言い聞かせたかったというのもあるし、やはり傷ついただれかの背中をさすりたいような気持ちで。

7月某日

朝起きられず、靴を履いて出かける寸前の夫と子の背中に「いってらっしゃい気をつけて」とかろうじて声をかけた。天気予報は雨だったが晴れている。すっかり冷めたコーヒーに豆乳を注いでいると、食卓の桃がぷんと甘く香った。映画『はちどり』にせよ平野紗希子さんのすてきな新刊にせよ、ごく個人的な内容が「自分のものだ」と多くの人に受け入れられている現象の、その奥にあるものをわたしは知りたい。

7月某日

寝る前に枕の上に置いたタオルの向きが逆だったことが原因で子に号泣され、さすがにしんどかった(裏面を上にしてほしかったらしい)。よけいな気を利かせずに、してほしいと言われたことだけを言われたとおりにするのがいいのだろうけど、そのことをいつも忘れてしまう。やりきれず夜中にラーメンでも食べようかと思ったが、なんとか思いとどまった。Netflix『椿の花咲く頃』完走。

7月某日

もう7月も下旬だということに驚く。今年は本当になんにもしていない。年内はもうずっとこんな感じが続くのだろうか。「コロナが終わったら〜」とやりたいことや行きたい場所を無邪気に語ることさえ、いつのまにかしなくなった。夜は肉屋で買ってきたとんかつとポテトサラダ、切っただけのアボカドとトマト。かろうじて豚汁だけ自作した。なんだか料理も億劫。

7月某日

ふと、もうみんな無償で手の内を明かしあう時代なのだなと思った。料理のレシピ、メイクの方法、絵の描きかた、買ってよかったもの、好きな店、着ている服がどこのものか、エトセトラ、エトセトラ。みんな、けして少なくない努力をして手に入れたであろう技術や情報を屈託なくシェアしてくれるのはなぜなのだろう(もちろん自分もありがたく恩恵を受けている)。わたしの知らないどこかでちゃんと、世界はバランスが取れているのだろうか。夜、鶏と野菜を煮込んだトマトソースのパスタ。

7月某日

友人に誘ってもらったセールでシャツと冬物のパンツなど買う。その後はおとなしく帰宅。韓国ドラマ『サイコだけど大丈夫』のヒロインがつけていたリップを調べて速攻ポチるなどする(「M・A・C」の「カインダセクシー」というもの)。夜は人参、玉ねぎ、ごぼう、ビーツなどの根菜とクミンを入れた肉団子を敷き詰めてオーブンで焼くだけのぎゅうぎゅう焼きをふたたび。

7月某日

立川にオープンしたばかりの「PLAY ! Museum」へ。本来であればかなりの人出が見込まれる場所だと思うけれど、連休最終日でしかも雨ということもあり、混雑を避けて快適に鑑賞できた。エリック・カール爺があおむしを描く短い映像がよくて二回観た。企画展は細部まで世界観が丁寧に作り込まれており、体験型の展示も充実していて子もかなり楽しかった様子。帰り道、気になっていた国立の「スターバックス・サイニングストア」に寄る。手話ができなくても、てきぱきとした店員さんによる指差しメニューを使った流れるような接客でスムーズにドリンクを買えた。夜は牛肉とごぼうのしぐれ煮、ズッキーニのカルパッチョ、まぐろ納豆。

7月某日

ぼってりとした大きめの深い器を購入したので、さっそく煮物など作って載せたくなる。まずはピーマンの煮浸しをたっぷりと(タモリのレシピ)。夜はその他カオマンガイ、タコときゅうりのサラダなど。とつぜんファミコンブームがやってきて、子の寝たあとで音を最小にして『ゼルダの冒険1』をはじめる。クリアするまで韓流ドラマはしばらくおやすみ。

7月某日

アーティストのイ・ランさんと翻訳家のすんみさんが韓国と日本とフェミニズムについて語る「she is」主催のオンラインイベントを視聴する。この頃、遅ればせながら自分も韓国の文化に対する興味がぐんと増しているところなのでとても興味深い。

7月某日

保育園の担任の先生との面談。夫も仕事を切り上げて途中から参加する。子はトイレも昼寝もばっちり、好き嫌いもなくいつも昼ごはんをおかわりしていますというのを聞いて笑ってしまった。他にもいろいろと褒めてくださり安心する。めずらしくふたりそろってお迎えに現れたので、子も大よろこび。なんとも平和な気持ちで帰路につき、夜はかぼちゃの煮物、豚肉と花ニラとエリンギのオイスターソース炒め、ごはん。

BACKNUMBER aggiiiiiii 明るけりゃ月夜だと思う
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第1回:多様な生き方、暮らし方
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閃いたのは、新しいクリエイティブのヒント? それとも週末のパーティのアイデア?……ホームオフィスを舞台に、生き生きと働くこの女性。実は『Fasu』のファミリーを想定しながら最新のテクノロジーによって生み出されたデジタルヒューマンです。揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事に家事に家族とのクリエイティブな毎日を楽しむ『Fasu』的な暮らしを送る母親像をあらゆる面からキャラクタライズして生まれたこの女性は、私たちが生きる、ほんのちょっと先の未来を想定して生み出されました。 コロナ禍をはじめ、混乱する社会情勢、テクノロジーの急激な進化と未知の世界を歩む私たちですが、このデジタルヒューマンが暮らすちょっと先の未来では、果たして私たちは、どのような家族のかたちを求めて、どのように暮らしているのでしょうか。そんな未来の家族のあり方を、グローバルイノベーションデザインスタジオ「Takram」でデザイン、アート、サイエンスほか多岐の分野に亘ってデザインエンジニアを務める緒方壽人さんに3回にわたってお話を伺います。第1回目である今回は、家族での長野県・御代田への移住と、10年来続けてきたというオルタネティヴな暮らし方にいて訊ねました。 これからの人間とテクノロジーのあり方や共生を探る『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』(BNN刊)。その著者でもある緒方壽人さんは、この本の中で、「ちょうどいいバランス」を探すことの大切さについて触れています。 「暮らし方や家族のあり方は多様で、未来に何かひとつの理想形があるとは思いません。ですから今日お話しできることは、僕自身の家族のことや、これまでの経験から考えていることでしかないのですが……」 そう前置きしながら、控えめに、ゆっくりと話し始めた緒方さん。その穏やかな様子は、移住先である御代田の空気をそのまままとっているかのようでした。   〜〜 中略 〜〜 WHAT’S DIGITAL HUMAN? 揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事、家事、そして家族とクリエイティブな毎日を楽しむ女性。本記事トップビジュアルとして登場したこのモデルは、先述のように『Fasu』ファミリーの母親像を、顔立ち、ヘアスタイル、メイクアップ、スタイリング、さらにはライフスタイルに至るまであらゆる角度とディテールからキャラクタライズし、生み出されたデジタルヒューマンです。 最新鋭のテクノロジーを用いて生み出されたこのデジタルヒューマンは、東映デジタルセンター「ツークン研究所」、及び『Fasu』を擁する私たちアマナにより「企業広告や、ファッションカタログ、またメディアにおけるモデル使用における様々な課題解決」を目的として開発されました。 このバーチャルモデルを用いることで得られるメリットは1. 人種、人選、肖像権問題にまつわるリスク回避 2.使用期限や版権の制限フリー 3.リモートによる発注から納品 4.インナーブランドの統一化 5.CGによる表現可能領域の拡大……ほか多数。コミュニケーション及びコスト、クオリティなど、モデル使用のあらゆるフェーズで生じるデメリットをミニマムにし、モデル表現の可能性を大きく広げていきます。 デジタルヒューマンが描き出す、新しいモデルのあり方と可能性、そして未来にご期待ください。 問い合わせ先:

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