DATE 2020.07.15

6月某日

緊急事態宣言が解除されたので、5億年ぶりの出勤。勤務先への行き方、まだ忘れていなかった。出社する人数が全体の2割に抑えられているため、オフィスは空いていてとても静か。作業環境はもちろん自宅よりはるかに整っているし、気分転換にもなる。たまに行くなら職場もよいところである。

6月某日

ヨガをして朝食をとり、子を2ヶ月ぶりに保育園へ連れて行く。園の方針で、しばらくは週一回・午前中のみの登園。本人はひさしぶりに先生に会えるのがとてもうれしそう。洗濯機を二回まわした後は整体でからだをほぐしてもらい、帰宅したらルンバが床を掃除してくれていて(子がいるときはこわがるので動かせない)、なくしていたピアスのキャッチも(ルンバが)発見。すべてがおそろしいほどスムーズで、ひょっとしたら自分はとんでもないリア充なのではないかという気がしてくる。ところが、この慢心がいけなかった。昼すぎに子を迎えに行った帰りに、家の鍵を落としてしまう。道を往復しても見つからない。なにはなくとも水分を、と子にお茶を買い、絶望的な気分で交番に向かうと、なんと卓上に見覚えのあるキーホルダーが。仲のよさそうなふたりの警官が、ちょうど今届けられたところだと笑いながら教えてくれた。ありがたすぎて気が抜けた。

6月某日

毎日のようになにかが届く。といっても自分が買ったものばかりだが。きのうは化粧品、今日は本、明日はガスコンロ。この状況がなにかに似ているなと思ったら、出産直後のあの時期だ。家から出られず、身体の自由もなく、欲望のすべてをオンラインショッピングで解決していた。わたしはあの時に、クレジットカードの16桁の数字をすっかり記憶してしまった。

6月某日

急遽、友人とジャームッシュ監督の新作『デッド・ドント・ダイ』を観に行くことに。映画館に行くのも、だれかと会うのもひさしぶりでどきどきする。映画館の入口には全身が映るモニターが設置されており、前に立つだけで体温がスキャンされるのには驚いた。過去からやって来た人は、なにかを見るにつけこのような気持ちになっているだろうか。

 

6月某日

昼すぎに北へ自転車を走らせて某人気店にサンドイッチを買いに行くも、二回連続で完売に出くわす憂き身。6時から開いているそうなので、朝から来ないとだめかもしれない。かわりに、気になっていた定食屋に入って生姜焼きとフライ。午後は梅シロップをはじめて仕込んでみた。氷砂糖ではなく、梅を買ったお店で勧められた黒砂糖で。どんな仕上がりになるのか楽しみ。横目で見ていただけのはずの子どもが「チャイルドポーズ」「ダウンドッグ」などと言いながらヨガの動きをちゃんと覚えているので感心する。

6月某日

暑い。朝、子を保育園に送り、ヨガをしたあと整体へ。昼ごはんはポテトチップスをひと袋。ひとりのときの食事は、残念ながらこんなものである。仕事でzoom会議。まだまだ暑いので、夕食はコングクスに。毎週水曜と土曜の夜はオンラインのストレッチ講座を取っているので、さっと風呂にはいって子を寝かせ、からだをほぐしながら備える。

6月某日

子を保育園に送ったのち出社。毎週の登園日をすこしずつ増やして慣らしながら、いずれ来るフルタイム登園に備える算段である。それにしても今となってはコロナ前の、仕事を切り上げダッシュでお迎えに行き、遊びにつきあわされながら這々の体で帰宅、夕食の準備、風呂を沸かし、風呂に入れて、寝かしつけ、運良くその後に起きることができれば食後の片付け、洗濯、翌日の保育園の準備、さらに仕事の続き……などという超人のような生活は、もう無理だと思う。わたしたちはずっと、がんばりすぎていたのではないだろうか。

6月某日

雨の休日。ヨガをしてから新宿の歯医者へ行き、その後グレタ・ガーウィグの『ストーリー・オブ・マイライフ』を観る。映画館はかなり空いており、感染対策的には安心だけれど経営が心配になる。街自体は、だれもがマスクをしていることをのぞいてはすっかりコロナ前の姿に戻ったように見える。でもデパートの化粧品フロアはテスターがふれられないようになっているなど、確実に変わったこともある。夜は岡本仁さんのインスタグラムで知った、パドラーズコーヒーの松島大介さんが紹介されていた短い映像『青い目 茶色い目』を観た。60年代の後半にアメリカのある小学校で行われた実験で、子どもたちは自分の生まれ持った属性(目の色)を理由にいきなり差別の対象となってしまう体験をする。子どもたちの戸惑いと、説明しがたい悲しい表情が忘れられない。

6月某日

3ヶ月ぶりに美容室へ。出かける直前、子に「行かないで」と泣かれてしまった。うわーん、早く帰ってくるからね。ブリーチをしたいと思っていたけれど今回は見送り、伸びたところを整えてもらうだけに。いずれは髪の毛を軽くくくれるぐらいに伸ばしたいと伝える。美容師さんに教えてもらったスターチャンネルのドラマ『ユーフォリア』がおもしろそう。夜は魚がおいしい地元のお店でひさしぶりに外食。生牡蠣や刺身をたらふく食べた。刺身のやさしみ、しみる。

6月某日

出勤。子は夫と交通公園に出かけたらしく、三輪車に乗っている動画が送られてくる。雑誌で連載しているコラムの次のテーマにする人物がようやく決まった。いつも題材が見つかるまでの時間がものすごく苦しい。書きたい人が見つからなければどうしようかと思うし、決まるまで本当に暗雲たる気持ち。でも決まってしまえば、調べたり書いたりする作業は最高にたのしい。

6月某日

やる気が起こらずひんやりした床でしばらく寝転んでいたが、いつのまにか締め切りが近づいているのに気がついて飛び起きた。最近の夜はNetflixばかり観ていて、あっという間に日々が過ぎるのだ。夜は自家製しゅうまい、マッシュルームのサラダ、とうもろこしごはん、ぬか漬け。思い立って子に『スターウォーズ』を観せてみる。これはなんとエピソード4から始まるんだよ、などと説明してわたしは得意だが、やっぱり子にはまだ早かったらしく、すぐに飽きてしまった。

6月某日

梅雨の間の貴重な晴天。〈cold picnic〉のバスマットは厚みがあるため洗うと乾かすのに時間がかかるのだが、かわいいので無問題。しっかりと乾いておくれ。昼は誕生日を迎えた友人のリクエストで、最近話題のシェフ、鳥羽さんのお店でランチ。友人とは出会ってそろそろ20年になるが、こうして変わらず誕生日を祝えてうれしい。そして唐揚げおいしい。Hey!バインミーとトーバーライスを持ち帰りにして子と夜ご飯にする。

6月某日

ついに朝、子が保育園に行きたくないと言いだした。さみしい、母ちゃんといたいと言って泣いている。どうしようと思いながら短時間にぐるぐると頭の中をかけめぐったのは、昨日ひとつ原稿は送ったし、ほかの締め切りまではまだ少し余裕がある。そしてこんなわがままを聞いてあげられるのも、働き方がイレギュラーになっている今だけだ。自分も学校に行きたくない日はあったし、そんなときに親が行かなくていいよと言ってくれたらどれだけうれしかっただろうということだった。それで今日だけだよと約束をして、希望のとおりに交通公園に行くことにした。この判断が正しいか正しくないかなんてわからないけど、少なくとも今日はこうするのがよいと思えたのだ。夜はカレードリア、根菜のオイル焼き、きのこのコンフィ。

6月某日

保育園がない日なので、交代で子を見ることに。朝、雨のため電車で整体へ行き、帰宅と同時に夫が打ち合わせに出かける。FasuのTシャツ特集のため自宅で撮影。ふだんはあまり使わないアイロンを引っ張り出して生地のしわを伸ばすなどする。夜は夫の帰宅を待ってふたたび外出し、渋谷で『ミッドサマー』を観た。自分にしてはめずらしく、いろいろ感想を語りたい映画。帰宅後、オンラインヨガがはじまっている頃だなあと思いながら、背徳のカップラーメン。

6月某日

子のリクエストで両手をにぎってメリーゴーランドのように回って遊んでいたら、なおりかけていた腰が死亡した。整体で見てもらったら筋肉を痛めているということで、しばらくのあいだ運動はおあずけに。最近は整体に通ってばかりだ。父の日なので、おいしい肉屋で焼き肉用の肉とホルモンなど買う。

6月某日

直前まで元気なのに、家を出る段階になって子がまた保育園に行きたくないと言う。嫌がる人をどうにかして引っ張っていくような体力も気力もないので、またまたお休みにしてしまった。ああー。園に休む旨の連絡を入れると、無理しないようにと園長先生がとてもやさしく応じてくださり、また明日もそんな感じであれば、直接電話でお話してみますよとのこと。ベテランの先生の言うこと、信じてみよう。

6月某日

やはり今日も保育園に行きたくない、母ちゃんといたいもんと子がしなしなになっているので、言われたとおりに先生と電話で話してもらってみる。するとどうでしょう。表情がみるみる明るくなり、朝ごはんの残りをモリモリとたいらげ、保育園に行くという。先生ってすごいなあと思っていたら、なんでも今日はだれかのお誕生日会でケーキがあるのだそうだ。夜はお好み焼き、栃尾の油揚げの肉みそネギ挟み、ゴーヤの梅和え、ぬか漬け。

6月某日

今朝も保育園に電話をかけたいと言うので、ためしに「電話しないで行って、先生をびっくりさせちゃおうよ」と言ったら素直に理解してくれ、スムーズに登園。やったー。洗濯、スーパーでの買い出し、仕事の調べものなどがゆっくりでき、ひさしぶりに充実した気分。夜は豚バラの梅煮、ネギだれ冷奴、ちくわときゅうりの和えもの、ごはん。ストリートビューに偶然写った電車を探す、タモリ倶楽部の「グー鉄」がおもしろい。

6月某日

雨の日曜日。きょうはどこにも行かず、なんにもしないと決めていたので、気負いはゼロ。たっぷりと昼寝をして、夜は買いおきの冷凍のカルビスープにネギと卵を足したものと、もやしと小松菜のナムル、厚揚げの焼いたの。その後も子を寝かしつけながら、いっしょに早々と寝た。なぜこんなによく眠れるのだろう。

6月某日

子、たくさん遊びたいからお迎えも遅めでいいよ、とうきうきしながら保育園へ行くようになり、母は心のガッツポーズ。洗濯をしてから『はちどり』を観るために渋谷へ。その前にあるギャラリーへ寄りたかったのだが、場所がわからずにしばらく迷う。調べてみたら別の場所に移転していることがわかったが、映画の時間に間に合いそうにないので泣く泣くあきらめた。渋谷はすっかり見知らぬ街になっている。

6月某日

朝、仕事に行きたくないなあと嘆いていたら、「わたしはきょう保育園だからがんばって」と子に逆にはげまされてしまう。電車はふつうに混んでいる。夜は豚バラ、きくらげ、玉ねぎ、金針菜を煮たなんちゃってラゲーライスと、(こっちは店で買った本物の)桉田(あんだ)餃子。アンダ・インダ・ハウスである。

BACKNUMBER aggiiiiiii 明るけりゃ月夜だと思う
バックナンバー

LATEST POST 最新記事

第1回:多様な生き方、暮らし方
ARTICLES
第1回:多様な生き方、暮らし方

閃いたのは、新しいクリエイティブのヒント? それとも週末のパーティのアイデア?……ホームオフィスを舞台に、生き生きと働くこの女性。実は『Fasu』のファミリーを想定しながら最新のテクノロジーによって生み出されたデジタルヒューマンです。揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事に家事に家族とのクリエイティブな毎日を楽しむ『Fasu』的な暮らしを送る母親像をあらゆる面からキャラクタライズして生まれたこの女性は、私たちが生きる、ほんのちょっと先の未来を想定して生み出されました。 コロナ禍をはじめ、混乱する社会情勢、テクノロジーの急激な進化と未知の世界を歩む私たちですが、このデジタルヒューマンが暮らすちょっと先の未来では、果たして私たちは、どのような家族のかたちを求めて、どのように暮らしているのでしょうか。そんな未来の家族のあり方を、グローバルイノベーションデザインスタジオ「Takram」でデザイン、アート、サイエンスほか多岐の分野に亘ってデザインエンジニアを務める緒方壽人さんに3回にわたってお話を伺います。第1回目である今回は、家族での長野県・御代田への移住と、10年来続けてきたというオルタネティヴな暮らし方にいて訊ねました。 これからの人間とテクノロジーのあり方や共生を探る『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』(BNN刊)。その著者でもある緒方壽人さんは、この本の中で、「ちょうどいいバランス」を探すことの大切さについて触れています。 「暮らし方や家族のあり方は多様で、未来に何かひとつの理想形があるとは思いません。ですから今日お話しできることは、僕自身の家族のことや、これまでの経験から考えていることでしかないのですが……」 そう前置きしながら、控えめに、ゆっくりと話し始めた緒方さん。その穏やかな様子は、移住先である御代田の空気をそのまままとっているかのようでした。   〜〜 中略 〜〜 WHAT’S DIGITAL HUMAN? 揺るぎない自分らしいスタイルを持ち、仕事、家事、そして家族とクリエイティブな毎日を楽しむ女性。本記事トップビジュアルとして登場したこのモデルは、先述のように『Fasu』ファミリーの母親像を、顔立ち、ヘアスタイル、メイクアップ、スタイリング、さらにはライフスタイルに至るまであらゆる角度とディテールからキャラクタライズし、生み出されたデジタルヒューマンです。 最新鋭のテクノロジーを用いて生み出されたこのデジタルヒューマンは、東映デジタルセンター「ツークン研究所」、及び『Fasu』を擁する私たちアマナにより「企業広告や、ファッションカタログ、またメディアにおけるモデル使用における様々な課題解決」を目的として開発されました。 このバーチャルモデルを用いることで得られるメリットは1. 人種、人選、肖像権問題にまつわるリスク回避 2.使用期限や版権の制限フリー 3.リモートによる発注から納品 4.インナーブランドの統一化 5.CGによる表現可能領域の拡大……ほか多数。コミュニケーション及びコスト、クオリティなど、モデル使用のあらゆるフェーズで生じるデメリットをミニマムにし、モデル表現の可能性を大きく広げていきます。 デジタルヒューマンが描き出す、新しいモデルのあり方と可能性、そして未来にご期待ください。 問い合わせ先:

2022.11.17
エルゴベビーの抱っこひも「ADAPT」がリニューアル発売。アップデートした機能を解説
動物園、博物館、美術館…。9つの施設でシームレスにクリエイティブな体験ができる「Museum Start あいうえの」とは
圧倒的な高級感で魅了。黒川鞄工房の「シボ牛革」ランドセルシリーズに新色が登場【2023年ラン活NEWS】