一歳になって気がつけば一歳児らしくなっている 歩いている 言葉らしきものをしゃべっている 手づかみでものが食べられる。 いやなものはいやだと意思表示する 声をあげて笑う 甘えたいときはしがみつく 排泄物がしっかりと臭う そしてしっかりと固まっている 食事のあと手を合わせる ときどき手を合わせて拍手する 人と別れ際に手をふる 腕の根元から縦に手をまっすぐ腕をあげてふる おっぱいなしでも眠れる 夜中はあまり起きなくなった 音楽を聞くと横か縦に揺れる すべて一年前にはなかった、できなかったこと 身長は20cm伸び、体重は3倍になった 二時間おきの授乳はなくなり、一日何度も盛大な音を響かせていた放屁も少なくなってきた ベビーバスのなかで虫みたいにうねうね動いていたのに、いまはしっかりバスタブのなかで立っている プレッシャーに感じていたベビーベッドが運び出されたあとの部屋は、もともとなかったときの状態に戻っただけなのに、随分広く感じた ぽっかり空いた空間は心のなかにも同じように穴が空いたよう しっかり噛み締めて過ごしたはずの一年が終わってしまった もう赤ちゃんではないのだ 目の前には幼児がいる わかっていたはずなのにあっというまだった