関東地方に春一番が吹いたと伝えられた日、友人たちが遊びに来た。今年一番の暖かさで、春の日差しが心地よく、テラスにテーブルをセットした。ランチはうまく作れて好評で、買い置きしていたワインがたまたま自分の好みの味だった。みんなにこにこしながら、おいしいね、あたたかいね、と言い合って、テラスの床に寝っ転がったりした。日が傾いてきて、近所を散歩した。畦道に咲いている野花を眺めながら、なんでもない話をして、ただ歩いた。それだけのことだったけど、なんだか忘れがたい日になった。季節の変わり目はいつも過去に起こった出来事をいろいろと思い返させる。それは憂鬱な気持ちにさせることもあるし、ただ懐かしく思うだけのときもある。でもこの日は新しい春の始まりを素直に喜べる、完璧なバランスだったのだ。