未来を切り拓く、子どもの自力を描く。ルーマニア発ドキュメンタリー『トトとふたりの姉』
「子どもってすごいな」と思うことがよくある。親がまったく憶えていないことをディテールまでを憶えていたり、使い方を知らない道具をすらすらと感覚で使うことができたり。子どもの“自力”は計り知れない、そんなことを改めて感じた映画が『トトのふたりの姉』だ。 舞台はルーマニアのブカレスト郊外。主人公は10歳の少年トト、ふたりの姉17歳のアナと14歳のアンドレアと、スラム街にあるアパートに住んでいる。母親は麻薬売買の罪で投獄され、父親の顔は知らず、保護者は誰もいない。しかしアパートには、次々に男が集まってくる。ドラッグ中毒者たちのたまり場になっているトトのアパートには、水道もコンロもなく、ソファベッドひとつと棚があるだけというひどい環境だ。 男たちが、腕や首すじに注射器を当てる横で、小さくなって眠るトト。部屋の明かりはつけっぱなし、毛布もかけられず、ゴミだらけの部屋には、夜通し男が集まってくる。