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映画『アマンダと僕』。ただ見守り、寄り添うことで乗り越えられるもの
以前にテレビで見た、過去に不登校だった人が言っていた言葉が印象的だった。「学校に行けない間、母親は一度も『学校に行け』と言わなかった」という言葉だ。 問題を抱えている人が必要としていること。それは、助言や過剰な心遣いではなく、ただ寄り添い、相手を認めてあげることなのではないか。映画『アマンダと僕』を観て、そんなことを思い出した。 映画『アマンダと僕』の舞台はパリ。学校が終わり、迎えを待つ少女アマンダの元にやってくるのは叔父ダヴィッド。英語教師をしている母サンドリーヌに代わって、その日はアマンダを迎えに行くはずだったが仕事が遅くなり、アマンダを待たせてしまった。 ダヴィッドの仕事は便利屋で、アパートの管理人をしたり植木を切ったり様々。アマンダの母サンドリーヌとダヴィッドは姉弟で、父子家庭育ちだ。実母とは20年前に分かれている。 ある日、サンドリーヌは「プレゼントがある」とダヴィッドに封筒を渡す。そこには、ウィンブルドン選手権のチケットが入っていた。「アマンダと私と3人で観に行こう」と誘いながら、ロンドンで暮らす実母に会いに行く計画が見え、ダヴィッドは表情を曇らせる。20年前に自分たちを置いていった母を、どこかで許せずにいたのだ。