ARTICLES
映画『ジョジョ・ラビット』。今“戦争”について考える。失うもの、生まれるもの、つなぐもの
アメリカとイランの緊張が高まる中、SNSでは“第三次世界大戦”がキーワード上位に来るなど、“戦争”がそれほど遠くない出来事になるのではないかと日々胸を痛めている。 映画『ジョジョ・ラビット』では、第二次世界大戦下のドイツを舞台に、兵士を目指す少年の不遇な運命を生き生きと、ユーモアたっぷりに描いている。戦争がもたらすもの、そして少年が得たものとは。見終わった後、誰もが心から平和を望み、今ある幸せを手放したくないと思う、心に響く作品に仕上がっている。 主人公のジョジョは、兵士に憧れるドイツ人の10歳の少年。ナチスに心酔し、ヒトラーが心のヒーローだ。これから参加する青少年団ヒトラーユーゲントの合宿に向けて、不安を隠せない。彼を勇気づけるのは、空想上の友達“アドルフ”。ヒトラーにそっくりのアドルフに背中を押され、ジョジョは合宿へと向かう。 過酷な訓練の2日目、ジョジョは教官に「ウサギを殺せ」と命令されたができず、“ジョジョ・ラビット”という不名誉なあだ名をつけられてしまう。ジョジョの父親は戦争に行ったきり2年間音信不通で、教官たちが脱走兵だとバカにしていることも、そのあだ名がつけられた理由だった。 アドルフに勇気づけられ訓練に戻るが、手榴弾の訓練で失敗したジョジョは大ケガを負ってしまう。訓練から外され、ユーゲント事務局で奉仕活動をすることになった。ジョジョが家に戻ると、亡き姉の部屋から物音がし、部屋を探ってみると隠し扉を発見する。その扉の中には、ユダヤ人の少女がかくまわれていた。 少女の名前はエルサ。ジョジョの母に招かれたというエルサから、「通報したら、あんたもお母さんも全員死刑よ」と脅されてしまう。青少年団でもらった大事な短剣も奪われ、完全に立場が逆転したジョジョだが、考え直した結果、エルサからユダヤ人の秘密を教えてもらい、ユダヤ人を撲滅するための本を書くことを思いつく。